マンションの顔ともいえる外壁は、新築から十数年経つと劣化が進んでいくため、定期的に塗装工事を実施する必要があります。一方ではじめて外壁塗装を経験する場合、「どうやってやるの?」「費用はだいたいどのぐらい?」といった疑問が湧いてくる方もいらっしゃるでしょう。そこでこの記事を通して、外壁塗装のそもそも必要性から相場、実施手順などを理解していきましょう。
塗装されたマンションの外壁は、塗膜によって紫外線や風雨から守られています。しかしこの塗装部分は、時間の経過とともにどうしても劣化してしまいます。劣化によって見た目が変化するだけでなく、雨漏りなど、生活に支障をきたす恐れも考えられます。
またさらに劣化が進行すると、躯体コンクリートにひび割れが起きたり、ひびから雨水が侵入して鉄筋が錆びたりします。その段階で修繕をしようとすると、工事が大掛かりになり、修繕費用がかさみます。
塗装部分の劣化が目に見えてあらわれてくるタイミングは、新築から10年を超えたあたり。そのため一般的には、新築から12年目に外壁の塗装工事を行う必要があるといわれており、この目安は国土交通省が定める修繕に関するガイドラインにも記載されています。
修繕として外壁塗装を実施するだいたいの時期については前述の通り、12年が1つの目安となりますが、見た目の変化の目安についてもあわせて確認しておきましょう。
基本的に表面の変色や汚れなどの症状であれば、様子を見る程度で問題ないでしょう。しかし表面が粉状になってしまっている場合(チョーキング)は、塗装の耐久度が著しく低下している合図なので、対処が必要。そのほか表面の塗装部分のひび割れはもちろん、剥がれている場合などは、早めに工事を検討しましょう。
外壁塗装工事を実施するタイミングについては、時期や見た目の目安以外にも、使用する塗料によって変わることもあわせて知っておきましょう。
塗装する際に使用される塗料は大まかに4種類に分かれますが、アクリル系やウレタン系は耐用年数が低いために現在使用される例は減っており、近年の主流はシリコン系の塗料です。もうひとつのふっ素系などは、マンションというよりも、商業施設やビルなどの比較的規模の大きい建物に使用されます。
なお外壁塗装工事で費用負担が大きくなるのは、足場の設置や人件費などが主です。つまり塗料の差が全体の費用を大きく左右することはそれほどないといわれているため、可能な限り耐用年数の高いものにするのが賢い選択といえるでしょう。
外壁塗装工事は、作業用の足場の設置や職人の人件費などによって、予想以上に費用がかさむ場合もあります。では一体、どのぐらいかかるのでしょうか。
国土交通省が2017年に行った調査によると、大規模修繕費用の1戸当たりの相場は75〜100万円が最も多い30.6%。次いで1戸当たり100~125万円が24.7%という割合になっており、だいたい75〜125万円が相場といえるでしょう。同調査によると、全工事金額の内訳のうち外壁塗装の割合は17.3%となっていることから、仮に1戸当たりで計算してみると、約13〜22万円が相場であると考えられます。あくまでも単純計算ですが、例えば40戸あるマンションであれば、全体で520〜880万円程度の工事費用がかかることになります。
もちろん作業用の足場や下地補修の内容、また築年数や戸数などによっても全体の金額は前後しますが、少なくとも数百万以上はかかるといえるでしょう。
そこで、費用負担を少しでも抑えるために利用したいのが「助成金」や「補助金」です。
マンションの外壁塗装で利用できる助成金や補助金は、もちろん返済不要で、工事終了後にお金を受け取ることができます。
なお「助成金」に関しては遮熱機能を持った塗料を使うなど、条件を満たしていれば基本的に誰でも受け取ることができます。一方で「補助金」の受給は、審査に合格した場合のみ。一般的に補助金の方が審査の条件が厳しいため、その分支給額は高めに設定されています。
外壁塗装に関する助成金や補助金のシステムは各自治体が定めており、受給できる金額はマンションが建っている地域によって異なります。また自治体によっては、「壁全面を塗装する場合に限り費用の一部を補助する」など、工事内容の条件を細かく定めているところもあるようです。
マンションの建っている地域に外壁塗装に関する助成金があるかどうかは、各市町村の公式ホームページ、もしくは一般社団法人住宅リフォーム推進協議会が運営している「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト(令和元年度版)」で調べることができます。
助成金や補助金を受け取るためには、断熱や遮熱など、省エネ対策を目的とする塗装工事であることが条件としてあげられる場合がほとんど。先ほど紹介した通り塗料の種類は大きく分けて4種類あるわけですが、さらにそこから断熱効果や遮熱効果など、性能をプラスした塗料を使用することが条件となります。
断熱を目的した工事(断熱改修)とは、室内の保温性能を高める効果を得るためにする工事のこと。冬に室内の温度を暖かく保ったり、夏に温度上昇を抑えたりする効果があります。一方で遮熱を目的とした工事(遮熱塗装)とは、室内の温度が上がるのを抑えて涼しく保つのに有効で、夏を快適に過ごすための工事といえるでしょう。
助成金や補助金を申請するにはこういった省エネ対策を目的とした工事であること以外にも、細かい条件が設定されている場合もあるため、詳しくは各自治体の公式ホームページを確認してみましょう。
ここまで外壁塗装の必要性や相場、助成金などについて紹介してきましたが、では実際にどうやって工事を行っていくのでしょうか。
ここでは大まかな流れについて、順を追って説明していきます。
まずは管理会社などと相談しながら、マンションの外壁塗装を実施する時期を検討しましょう。人気の塗装業者ほど先の予約まで埋まっていることがあるため、実施する時期を決めたうえで、そこから逆算して早めに業者選びをスタートさせたいところです。
なお工事を実施するベストシーズンとしては空気が乾燥しており、天候も安定している「春(4〜5月)」か「秋(9〜10月)」だといわれています。なぜなら、塗料はしっかりと乾燥させなければ機能が低下するためです。
外壁塗装工事を行ううえで、とくに重要なのが業者選びです。どんなに良い塗料を使ったとしても、しっかりとした塗装技術で施工されていなければ、塗料メーカーが保証する耐用年数より短くなってしまうようなこともあります。
選ぶ際のポイントとしては、ネットなどで調べて選んだ1社だけに依頼するのではなく、複数社に見積りをお願いしたうえで比較検討すること。比較するなかで、外壁塗装の適正な価格も見えてくるでしょう。
比較するためにはまず、建設業界紙で「公募」を実施するなどの方法が有効です。その際、複数の業者に見積もりだけでなく施工方法に関するプレゼンテーションもお願いできれば安心です。また、業者の比較検討を促してくれるウェブサービスなどを利用するのも1つの方法といえるでしょう。
同じ種類の塗料であっても、メーカーやグレードによって耐用年数に違いが出ることがあります。また例え同じメーカーのシリコン塗料でも、油性と水性に分かれることがあり、基本的には油性の方が耐用年数は長いといわれています。
なお、前述の通り外壁塗装は足場や人件費のほうが工事費用の多くを占めます。そのため頻繁に塗装工事を実施しなくても良いように、可能な限り耐用年数の高い塗料の使用を検討したいところ。あわせてメーカーが公表している耐用年数はあくまでも目安であって、確実にこの年数まで持つという数値ではないことも知っておきましょう。
塗装を行う業者に見積りを依頼して、実際に見積書が送付されるまではだいたい1~2ヵ月程度の時間がかかります。
なお提出された見積り金額が先ほど紹介した相場を大きく超えるようであれば、工事内容を業者によく確認し、お互いに納得できる金額かどうかの擦り合わせを行いましょう。
施工開始前から完了までの基本的な流れとしては、まず工事を行うことに関して管理組合主導でマンション住民への説明会を実施し、掲示板などでも告知をします。その後、必要に応じて作業員の休憩所や仮設トイレなどを設置。外部の足場の設立や塗料を付着してはいけない部分をシートで覆うなどの作業を経たうえで、実際の塗装工事をはじめる、という流れになります。
人間の肌のコンディションを保つためにスキンケアを行うように、マンションの顔ともいえる外壁を健全に保つためには、定期的な外壁診断と塗装工事が必要です。
マンションの機能を損なわないためにも、資産価値を維持するためにも、外壁塗装の必要性やある程度の基本的な知識を理解し、そのうえで信頼できる業者を選び、依頼をしましょう。
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