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マンションに自動販売機を設置できる?メリットと注意点を解説

作成者: カシワバラさんの暮らし。編集部|Apr 10, 2025 6:36:22 AM

エントランス内や出入り口付近に、自動販売機が設置されているマンションは少なくありません。

自動販売機で得た収益はマンションの管理組合の収入となり、金額によっては管理費や修繕積立金に充当できる場合もあります。

今回は、マンションに自動販売機を設置するメリットや方法、検討の際に確認するポイントを解説していきます。

マンションに自動販売機を設置する事業方法は2つ

【1】ベンダーに場所を提供する

自動販売機の設置や管理などを行うベンダー(販売業者)に設置場所を提供し、売上の一部を得る方式は「フルオペレーティングシステム」と呼ばれます。自動販売機の所有も管理もベンダーが行うため、管理組合での管理は不要です。人通りの多い場所など、土地に恵まれているマンションではベンダー側から設置を打診される場合があります。しかし、採算が取れないと判断されると、この方法での設置はできないでしょう。

管理組合の収益は売上全体の15〜20%程度が目安です。

【2】自動販売機をリースする

マンションの自動販売機の設置では、管理組合で購入する方法(リース)もあります。リース方式では、商品の仕入れだけではなく機体の管理も管理組合で行います。仕入れ商品は自由に選べる場合もありますが、基本的に自動販売機を販売する会社が取り扱う商品のみになります。

この方法では、自動販売機の売上は基本的にすべて管理組合の手元に残ります。

マンションに自動販売機を設置するメリット

【メリット1】利用しないスペースを活用できる

マンションに自動販売機を設置するメリットとして、マンションの敷地内の利用していないスペースを有効利用できる点があげられます。自動販売機の幅は70〜140cm、奥行きは60〜80cmが目安です。傾斜や強度に問題がなく、電源を確保できれば比較的簡単に設置できます。

また、自動販売機を外に設置していれば、明かりがライトや街灯の代わりになる場合もあります。立地によっては防犯対策効果にも期待できるでしょう。

【メリット2】販売手数料を得られる

フルオペレーティングシステムの場合、自動販売機の売上の一部を販売手数料として得られます。販売手数料は、管理組合の収入としてマンションの維持費や管理費、修繕工事費用などに充ててもよいでしょう。ただし、売り上げが少なすぎると、金銭的なメリットをあまり得られない場合も。

例えば、売り上げの20%をマージンとして受け取れる場合、120円の飲料を月に300本ほど販売できたとしても、利益は月に4,800円ほどです。電気代などの経費を鑑みて、収支バランスには注意しましょう。

【メリット3】マンションの利便性

マンションの敷地内に自動販売機があれば、居住者の生活が少しだけ便利になります。エントランスに設置されていれば、部屋着のまま敷地を出ずに飲み物を購入できます。

マンションの周辺にスーパーやコンビニがない場合は、立地の不便さというデメリットを補うことができるでしょう。

自動販売機の設置にはデメリットもある

【デメリット1】ランニングコストがかかる

自動販売機は、設置だけではなく管理にもランニングコストがかかります。

例えば、電気代。フルオペレーティングシステムでもリース方式でも、自動販売機の電気代は基本的に管理組合側の負担です。電気代は月に1,000円~3,000円ほどかかります。

また、自動販売機での飲料の販売は収益事業に該当するため、設置方法や場所によっては税金を納める必要があります。

フルオペレーティングシステムの場合は、管理組合がベンダーに場所を貸し付けて場所収入を受領する「不動産貸付業」です。管理組合が外部に対して収益事業を行う場合、その収益は全て課税対象となります。管理組合側の状況によっては、税額に加えて、税務申告作業を税理士などに依頼する必要が生じるのです。

リース方式の場合でも、エントランス前や道路に面した場所への設置は収益事業に該当するとされ、納税の義務が発生する可能性があります。

【デメリット2】収益性が低い

前述の通り、ベンダーに設置場所を提供して自動販売機を設置する場合、管理組合が得られる収益は売上の15〜20%ほど。販売されている飲料の単価は概ね100〜180円前後のため、利用者が少ないとなかなか収益が上がりません。近所にスーパーやコンビニがあるマンションでは、居住者であっても割高な自動販売機を使わない可能性があります。また、近年の物価高騰も、利用者数増加の向かい風です。

現状としては、イニシャルコストとランニングコストを合わせた必要費用と、売上との費用対効果が低く、設置を断念する管理組合が多くなっています。

【デメリット3】マンションの美観を損なう可能性がある

自動販売機の設置によって、周辺にペットボトルや缶のごみが散乱し、マンションの美観を損なってしまう可能性もあります。

ごみ箱を設置していても中からごみが溢れたり、無関係なごみを捨てられたりする場合もあるため、自動販売機周辺の定期的な清掃が必要です。

管理会社との契約の状況によっては、自動販売機周辺の清掃に追加で費用が発生してしまう場合もあるため、設置前に確認を取りましょう。

自動販売機を設置する際のポイント

【ポイント1】周囲の自動販売機よりも価格を下げる

マンションの自動販売機の主な利用者は居住者です。居住者の利用頻度を向上させるためには、周囲の自動販売機よりも販売価格を下げる方法が効果的です。

収益を向上させるために周囲の自動販売機と同じ価格帯や高い価格帯で提供すると、利用者数が伸びずにかえって収益が下がる可能性があります。

【ポイント2】収益のシミュレーションを行う

導入する前に、自動販売機の設置によって見込まれる収益をシミュレーションしておくことも必要です。特に、収益を管理費や修繕積立金に充てる場合は、マンション全体の資金計画に影響します。前述した販売価格のほかに、管理費用や電気代なども試算し、費用対効果がどの程度になるかを試算しましょう。

【ポイント3】総会で普通決議が必要となる

一般的に、管理組合がベンダーに自動販売機の設置場所を提供する際は「自動販売機の設置に関する契約」を取り交わします。マンションによって状況は異なりますが、管理組合が外部と契約を取り交わす際は、管理規約で「理事会の決議で可能」と定められていない限り、総会での決議が必要です。

決議の種類は、総会参加者の過半数の賛成で可決される「普通決議」のため、設置前に居住者向けに説明会や意見交換会を開いておくとスムーズに総会を進行しやすくなります。

ただし、一定数の反対がある場合は設置を断念しなければなりません。

【ポイント4】周辺の清掃についても手配する

自動販売機の周辺は、どうしてもごみが散乱しやすいもの。マンションの美観を保つためにも、定期的な清掃が必要です。

マンションの清掃を管理会社に外注している場合は、現在の契約で自動販売機の清掃も請け負ってもらえるよう、予め交渉しておくとよいでしょう。

費用対効果を検討の上、手続きを進めよう

マンションの敷地内に自動販売機を設置すれば、空きスペースを有効活用できて、収益も得られるメリットがあります。しかし、電気代をはじめとするランニングコストや、清掃の手間などもあり、大きな収益源としては見込めないのが現状です。

自動販売機の設置方法には、ベンダーに場所を提供する方法と、管理組合が自ら管理する方法があります。方法によって収益と負担が変わってくるため、事前にシミュレーションを行い、自分のマンションに合った方法で手続きを進めたいですね。