住宅ローンを組むときに、ほぼ必ず加入することになる団信(団体信用生命保険)。最近は「がん保障」「三大疾病」「全疾病」など、特約付きのプランがずらりと並びます。
「金利上乗せ0.3%でがん保障」と言われると、得な気がしてくる方も多いのではないでしょうか。ただ、団信は"保険"であると同時に、"金利上乗せ"でもあります。判断を誤ると、生涯で100万円単位の差になります。
本記事では、日々ご家族の保険証券と住宅ローンを並べて見直しているFPの視点から、『本当にその特約は必要なのか?』を後悔なく判断するための基準を整理します。
団信には大きく3つのタイプがあります。
・通常団信:死亡・高度障害時にローン残債が0円になる。多くは金利の上乗せなし
・ワイド団信: 持病があっても加入できる。金利+0.3%程度
・特約付団信: がん・三大疾病・全疾病など。金利+0.1〜0.3%
ベースとなるのは通常団信です。そこで「もう少し手厚くするか」を判断するのが、特約の選び方になります。なおフラット35では、夫婦どちらか一方の万一に2人とも備えられる「デュエット(ペア連生団信)」も用意されています(連帯債務型での申込み時に選択可)。
がんと診断確定された時点でローン残債が0円になるタイプが主流です。上皮内がんを対象外とする商品もあるので、保障範囲はきちんと確認しましょう。
がん・急性心筋梗塞・脳卒中の3つが対象。ただし「所定の状態が60日継続」など、給付条件が細かく設定されていることが多く、診断即0円ではないケースもあります。
病気・ケガで就業不能状態が一定期間続いた場合に、残債が0円または毎月返済が肩代わりされる仕組みです。範囲が広い分、給付条件が多岐にわたる場合や、特定の条件を満たす必要がある場合があります。
金利上乗せ0.1〜0.3%は、生命保険料に換算するとどのくらいになるでしょうか。3,000万円・35年・元利均等・基準金利1.0%で試算すると、おおよそ次のような目安です。
・ +0.1%:利息増加 約60万円(35年累計)
・ +0.2%:利息増加 約120万円
・ +0.3%:利息増加 約180万円
つまり「+0.3%でがん保障」は、生涯で約180万円の利息増加(保険料に相当)となる計算です。既に加入している民間のがん保険と内容が重複していないかを点検する必要があります。
私たちが初回の相談で保険証券を拝見すると、『ローンを組むときにがん特約をつけたのに、独身時代に入った民間のがん保険もそのまま毎月払い続けている』という方が半数近くいらっしゃいます。これは家計にとってもったいない状態です。団信のがん保障や全疾病保障は、すでに加入している民間保険と内容が重なることが多くあります。
・終身がん保険(月5,000円〜)に既加入なら、団信のがん特約は"重複"の可能性
・就業不能保険(月3,000円〜)に既加入なら、全疾病特約は"重複"の可能性
団信特約をつけるなら、民間保険を見直す。民間保険を残すなら、団信は通常タイプで。どちらを選ぶにしても、両方を手厚く契約すると保障内容が重複する可能性が高まります。
あくまで一般論ですが、判断の出発点として次のパターンも参考になります。
片方の収入が長期で止まると家計が傾きやすい年代。通常団信+全疾病(就業不能型)を検討する価値があります。
教育費ピークと重なる時期。がん特約の優先度が高くなります。既加入のがん保険があれば、解約と特約付加を比較しましょう。
残り返済年数が短いため、特約の費用対効果は下がります。通常団信+別途医療保険のシンプル構成が現実的です。
いざ金融機関の窓口に行くと、膨大な書類を前にして『おすすめされるがままにサインしてしまった』とおっしゃる方が、よくいらっしゃいます。後悔しないために、担当者へ必ず以下の3点を質問してメモに残してください。
1. 給付条件は「診断確定」か「所定の状態が継続」か
2. 上皮内がん/持病・既往症の扱いか
3. 途中で特約だけを外せるか/金利は連動するか
ここまで確認したうえで、既加入保険と並べて、初めて特約の要否を判断できます。
団信特約は、家計を守るうえで強い味方になり得ます。同時に、最大で200万円規模のコストでもあります。
「とりあえずおすすめされたから」ではなく、既加入の保険・家族構成・年代を踏まえて、家計全体で判断することが大切です。