「もうすぐ子どもが生まれるのですが、育休中の住宅ローン、今のままで払っていけるでしょうか?」——共働きで住宅ローンを組んだご夫婦が、出産を前に抱えやすい不安です。産休・育休のあいだは世帯の収入が一時的に下がるため、毎月決まった額が引き落とされるローン返済が気がかりになるのも無理はありません。
産休・育休中は、出産手当金や育児休業給付金といった公的な給付があり、収入がゼロになるわけではありません。それでも、ペアローンや収入合算で2人分の収入を前提に借りている場合は、減った分をどう補うかを事前に考えておく必要があります。
この記事では、産休・育休で家計の収入がどう変わるのか、組み方によって何が起きるのか、そして返済が苦しくなりそうなときに取れる手立てを、時期ごとに見ていきます。
会社員が産休・育休を取る場合、主な収入は給与から公的な給付に切り替わります。期間ごとの大まかなイメージは次のとおりです。
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期間 |
主な給付 |
給付の目安 |
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産前産後休業 |
出産手当金(健康保険) |
標準報酬日額の3分の2相当 |
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育休 開始〜180日 |
育児休業給付金(雇用保険) |
休業開始前の賃金の67% |
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育休 181日目以降 |
育児休業給付金(雇用保険) |
休業開始前の賃金の50% |
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出生後の一定期間 |
出生後休業支援給付金 |
最大28日分、賃金の13%を上乗せ |
給付金は非課税で、産休・育休中は健康保険料や厚生年金保険料も免除されます。そのため給付率の数字ほど手取りは減らないものの、育休が半年を超えると給付率は50%に下がり、給付額には上限もある点は押さえておきたいところ。2026年8月以降は、休業前6か月の月給(賞与を除く)の平均がおよそ50万円を超えると上限にかかる計算で(厚生労働省「育児休業等給付の内容と支給申請手続」2026年8月1日改訂版)、もともと収入が高かった人ほど「手取りが大きく減った」と感じやすくなります。住宅ローンの返済は毎月同じ額で続くため、家計の山場は育休の後半に来やすいと考えておきましょう。
夫婦それぞれが住宅ローンを契約するペアローンでは、育休を取る側のローンも通常どおり返済が続きます。本人の収入が給付金に切り替わっても返済額は変わらないため、世帯の収入で2本分の返済を支えられるかがポイントになります。
収入合算の場合、ローンの契約者は主債務者1人。合算者が育休に入っても返済額はそのままですが、世帯の収入が減る分、家計に占める返済の割合は重くなります。ペアローンとの違いは「ペアローンと連帯債務の違いは?共働き夫婦の住宅ローンの組み方」でも整理しています。
給付金は非課税のため、育休を取った年は本人の所得税が少なくなります。住宅ローン控除は所得税から差し引き、引ききれない分を一定の上限の範囲で住民税から差し引く仕組みなので、控除額を満額使い切れない年が出ることも。ペアローンで夫婦それぞれが控除を受けている場合は、あらかじめ織り込んでおくと家計の見通しを立てやすくなります。
産休・育休中や、その予定がある時期に住宅ローンを申し込む場合、審査で見られる収入の扱いは金融機関によって分かれます。休業中は復職の予定や復職後の収入の見込みを確認されることが多く、場合によっては復職後の給与明細がそろうまで収入合算に使えないこともあります。
借入額を決めるときは、2人がフルで働いている時期の収入だけでなく、育休中の収入でも返済が回るかを基準にしておくと、あとで家計が苦しくなりにくい組み方になります。
育休中は賞与も出ないことが多いため、ボーナス払いを併用している場合は、休業に入る前に毎月払いへの振り替えなどを借入先に相談しておくと安心です。固定費の見直しや、育休中に取り崩す貯蓄の額も、休業前に決めておくとぶれません。
一時的に返済が難しくなりそうなら、延滞する前に借入先へ相談を。延滞してからでは、選べる対応が限られてしまいます。返済期間の延長や、一定期間の返済額の減額といった条件変更に応じてもらえる場合も。フラット35の返済方法変更メニューなどは、「住宅ローン返済中の『もしも』に備える」でも紹介しています。
金融機関によっては、育休期間中の返済額を一時的に抑える取り扱いを設けているところもあります。利用できるかどうか、あとで返済額がどう増えるのかは商品ごとに違うため、契約中のローンの条件を確かめてみる価値はあります。
手元の資金を繰上返済に回しすぎると、育休中に取り崩せるお金が足りなくなります。育休が明けて収入が戻るまでは、生活費の数か月分を別に確保しておき、繰上返済はそのあとに回すくらいの順番を考慮しておくと無理がありません。
小林 勝之(カシワバラ・アシスト 第1営業部 次長)
ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士)・貸金業務取扱主任者・個人情報取扱主任者
2011年カシワバラ・アシスト入社/返済計画見直しの対応実績多数
「返済計画の見直しでご相談が多いのは、育休の後半、給付率が下がるタイミングです。ペアローンなら2本分の返済が続き、ボーナス払いがあればその月の負担も重くなる。育休に入る前に、給付金の見込み額と毎月の返済額を並べて、足りない月をいくら貯蓄で埋めるのかを決めておくと、休業中の不安はかなり小さくなります。」
A. 申し込み自体を受け付ける金融機関はありますが、休業中の収入をどう評価するかは金融機関によって異なります。復職予定日が分かる書類や、休業前の収入証明を求められることが多く、収入合算に使えるのは復職後になる場合もあります。申し込む前に借入先の候補へ取り扱いを確認しておくと、手続きがスムーズに進むでしょう。
産休・育休中も給付金があるため、収入がゼロになるわけではありません。ただ、育休が半年を超えると給付率が下がり、ペアローンや収入合算で借りている家庭ほど返済の負担を感じやすくなります。
休業に入る前にボーナス払いと貯蓄の取り崩し計画を決め、苦しくなりそうなら延滞する前に金融機関へ相談する。この順番を押さえておけば、子育ての始まりの時期を、返済の心配に振り回されずに過ごせるはずです。
※ カシワバラ・アシストでは、住宅ローンの専門機関として、産休・育休を見据えた借入額の考え方や、返済中の条件変更のご相談にも対応しております。「育休中の家計でも返済が回るか確かめたい」という段階から、ご相談いただけます。
※ 給付金の支給率や要件は制度改正で、上限額は毎年8月の改定で変わることがあり、この記事の内容は2026年時点の一般的な制度に基づいています。実際の支給額は勤務先や加入している健康保険・雇用保険に、住宅ローンの取り扱いは借入先の金融機関にご確認ください。
小林 勝之 カシワバラ・アシスト 第1営業部 次長
【保有資格】
ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士)・貸金業務取扱主任者・個人情報取扱主任者
【経歴】
2011年カシワバラ・アシスト入社。複雑なローン商品の比較検討から、お客様の家計状況に応じた資金計画の作成、審査書類の作成支援、融資実行までの一貫したサポートを多数手がける。詳細なシミュレーションに基づいた提案には定評があり、ライフステージの変化に応じた返済計画の見直しまで幅広く対応する住宅ローンの専門家。
【読者へのメッセージ】
産休・育休の期間は、収入が一時的に下がる一方で、支出は増えやすい時期です。給付金の見込みと返済額を並べたシミュレーションをもとに、ボーナス払いの見直しや条件変更の選択肢まで含めて、ご家庭に合った乗り切り方をFPの視点でご提案します。