大規模修繕工事の発注先別にメリットを比較!業務内容や発注方式も

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      マンションの大規模修繕工事では、建物診断や業者選定、工事箇所の検討、見積もりなどやるべき業務がたくさんあります。大規模修繕を成功させるには、専門業者とうまく連携をとりながら進めなければなりません。業務ごとに専門知識も必要なため、適切な業者に依頼をすることも大切です。

      今回は大規模修繕工事の依頼先ごとの違いやメリットを比較していきます。

      大規模修繕工事を行うメリット・デメリット

      十数年に1度行われるマンションの大規模修繕は、「安全性」「利便性」「資産価値」の向上につながるといったメリットがあります。

      外壁のヒビや鉄部の錆など、建物が老朽化すると安全性も落ちるもの。劣化を直すだけでなく、耐震工事などを行うことでで、より安全なマンションになっていきます。

      また、手すりやスロープを設置してバリアフリー化するといった工事や、防犯カメラを設置するなどセキュリティの強化は、住みやすさにもつながります。安全性や利便性が高まれば、マンションの資産価値も高まるでしょう。

      ただし、どうしても多額の費用がかかる点はデメリット。工事にかかる予算を把握し、計画的な資金準備が重要になります。

      また、工事の依頼先によっても費用感がかわってくるため、それぞれの依頼先によってどんなメリット・デメリットがあるのかもよく確認しておきましょう。

      大規模修繕発注先別のメリット比較

      大規模修繕の主な依頼先は「管理会社・コンサルタント・大手ゼネコン・専門工事業者」の4つです。それぞれ発注できる業務内容やメリットが違ってくるため、しっかり押さえておきましょう。

      発注先毎のメリットデメリットを押さえよう

      【1】管理会社

      日頃から管理を任せている管理会社はもっとも一般的な依頼先

      メリット

      ・管理組合の負担が少ない
      ・マンションを熟知している

      デメリット

      ・競争原理が働かない

      大規模修繕の最もスタンダードな依頼先が、日常の管理業務を任せている管理会社です。普段から馴染みのある担当者が窓口になるため、気軽に相談しやすいでしょう。管理会社は日ごろの建物管理や保守点検を通してマンションのことを熟知しているため、工事箇所の検討やアフターフォローもスムーズです。

      また、大規模修繕にかかわる理事会や修繕委員の人も、仕事など、個人の生活で忙しいもの。大規模修繕の準備にそこまで多くの時間がかけられないケースも多いでしょう。管理会社であれば業者選定から工事まで、すべての業務を一任できるため、管理組合の負担を大きく抑えられます。

      注意点は、競争原理が働かないこと。他社を検討せず管理会社に工事を発注すると、費用が割高になってしまうリスクがあります。外部のコンサルタントを入れたり、複数社から見積もりをとって比較したりすることでリスクが軽減できるでしょう。

      【2】コンサルタント

      コンサルタントは中立的な立場の意見が聞ける

      メリット

      ・中立的な立場で業者選定できる
      ・手抜きやミスを防ぎやすい

      デメリット

      ・コンサルタント費用が必要
      ・施工業者との癒着に注意

      大規模修繕専門のコンサルタントに、建物診断や業者選定などの業務を依頼する方法もあります。どの施工業者を選ぶのがいいか、中立的な立場で判断できるのがメリットです。また競争原理も働くため、工事費も抑えやすいでしょう。

      建物診断をもとに、どのような工事が必要か検討するのもコンサルタントの業務の一つです。設計と施工を分離することで、客観的に工事内容を決めることができます。修繕工事が始まってからも、第三者の立場で工事の進捗をチェックしてもらえるため、手抜きやミスを防ぎやすくなるでしょう。

      注意点は、工事費とは別にコンサルタント費用が発生する点です。またコンサルタントと施工業者の癒着などの不正行為が起きないよう、信頼できるコンサルタントに依頼することも重要です。

      【3】大手ゼネコン

      メリット

      ・会社の知名度が高く安心
      ・幅広い業務を任せられる

      デメリット

      ・下請け業者の技量で品質が変わる
      ・中間マージンがかかり費用が割高に

      管理組合が施工業者を探して、直接依頼する方法もあります。大手ゼネコンは知名度が高い分、安心感がある依頼先です。社内にさまざまな部署を抱えているため、建物診断から工事まで、すべての業務を一任できるのも大きなメリットといえるでしょう。

      また、マンションを施工した会社に依頼した場合は、建物の構造や仕様について詳しい情報も持っているため、どのような修繕を行うべきかをスムーズに決められるでしょう。

      ただし、大手ゼネコンに依頼しても、実際の工事は下請け業者が行うケースが大半です。そのため、下請け業者の技量によって、施工品質が変わってくる可能性があるでしょう。また中間マージンの分だけ費用が割高になるというデメリットもあります。

      【4】専門工事業者

      メリット

      ・費用が割安
      ・自社施工が多い

      デメリット

      ・業者選びの失敗リスク

      大規模修繕を専門に行っている工事業者を探して、直接依頼する方法もあります。大手ゼネコンとは違って中間マージンがかからず、費用が割安になるのがメリットです。大規模修繕を専門に行っているからこそ、深い知識や技術力にも期待できます。

      また大手とは違って、中小企業は自社施工が大半です。工事中も密なコミュニケーションをとることができるので、新たな要望にもきめ細やかに対応してもらえる可能性が高いでしょう。

      ただし管理組合が業者を選ぶ場合、業者選びに失敗するリスクを伴います。業者の規模や経営状態、過去の実績などをよく調べて、安心して任せられる業者を選ぶことが重要です。

      大規模修繕工事の発注方式

      大規模修繕工事は依頼先によって工事の発注方式が変わります。各方式の特徴を知っておくと、業者選びがよりスムーズに行えるでしょう。

      責任施工方式

      責任施工方式は管理組合の手間や費用が少なく済む

      一つの会社に設計・工事監理・施工まで、すべての業務を発注するのが責任施工方式です。前述の発注先別に言うと「管理会社・大手ゼネコン・専門工事業者」に依頼する場合はこちらの方法をとります。

      一括発注のため、管理組合の手間や費用が最小限ですむのがメリットです。

      設計監理方式

      施工業者とは別に、設計監理業務を行うコンサルタントを入れるのが設計管理方式。業者選定が公正に実施され、無駄な工事をなくせるのがメリットです。

      コンサルタント費用が発生しますが、その費用以上に経費削減できるケースもあります。

      アドバイザー方式

      施工業者が決まったあとで、コンサルタントに設計管理業務を依頼するのがアドバイザー方式です。

      設計監理方式とは違うのが、コンサルタントが業者選定に関わらないという点。両者の癒着を防げるため、無駄な工事費用を削減しながら工事の質を担保できるのがメリットです。

      大規模修繕におすすめの時期とそれぞれのメリット・デメリット

      大規模修繕に向いているのは気候の穏やかな春秋だとされています。それぞれのメリット・デメリットを見ていきましょう。

      春秋

      メリット

      ・湿度がそれほど高くなく、塗装や下地が乾きやすい
      ・温度変化が少ない

      デメリット

      ・人気シーズンのためスケジュールが抑えづらく費用も割高な可能性も

      夏冬

      メリット

      ・費用の交渉ができる可能性がある
      ・技術の高い業者や職人に依頼しやすい

      デメリット

      ・気候によりスケジュールが読めない
      ・夏は湿度が高く雨も多いため、塗装が乾燥しにくい
      ・気温が低すぎると塗料の硬化が鈍る

      シーズンではないだけに、夏冬の工事は費用が抑えられる可能性もありますが、一方でスケジュールが延びたり、材料を変更しなくてはならなかったりするために、追加費用がかかってしまうかもしれません。

      マンションの実情に合わせてベストな業者を選ぼう

      大規模修繕の発注先によって、工事の仕上がりや管理組合の負担は変わってきます。円滑に修繕を進めるためにも、業者の実績や担当者の能力は重要です。

      最適な発注先はマンションの規模や、管理組合の性格によっても異なります。各発注先の特徴やメリットを理解したうえで、マンションの実情に合わせて業者を決めましょう。

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