日常的に使用することになるエレベーターはもちろん、乗り降りで利用する空間(エレベーターホール)も快適な暮らしを送るためのカギを握るといえます。特に近年では、高齢者の増加などからバリアフリーに配慮した設計も求められるようになってきました。
記事では、そんなエレベーターホールの理想的な位置や寸法などを中心に紹介していきます。
エレベーターホールに求められるものとは?
改めてエレベーターホール(別名エレベーターロビー)とは、エレベーター前の乗降で利用するスペースのこと。廊下や通路、エントランスなどと一体になっている場合がほとんどだといえます。
エレベーターに乗り降りする際、人が必ず通る場所でもあることから掲示板などを設置しているマンションも多いことでしょう。また近年では高齢者や身体に障害のある方に配慮した、バリアフリーな設計も求められています。
今回は、バリアフリーの視点からエレベーターホールの理想的な位置や寸法などを紹介していきたいと思います。
各住戸までの距離感は50m以内が理想
高齢者や車椅子で生活する方の移動の負担や、荷物の持ち運びなども考慮すると、エレベーターホールから各住戸までの距離は、可能な限り近いほうが良いといえます。
理想的な距離は50m以内。さらにエレベーターホールからメインエントランスまでも、50m以内の距離感が望ましいといえるでしょう。
車椅子の乗り降りで確保すべきエレベーターホールの寸法は?
車椅子でエレベーターに乗るとき、方向転換できるスペースがない場合は前進して乗り込み、降りるときは後退で出ることになります。このとき、降りた後、転回できる空間を確保することも重要です。
国土交通省のガイドラインによれば、エレベーターホールは150cm×150cm、電動車椅子の場合は180cm×180cmの空間を確保するのが望ましいと記載。つまり余裕を持つためにも、最低180cm×180cmのスペースは確保したほうが良いといえるでしょう。
公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン
平坦でない場合はスロープも併設する
バリアフリーを考えた場合、廊下やエントランスからエレベーターホールまでは平坦であることも大切です。ただ高低差があるために階段上となっている場合などは、スロープを設置することで対応しましょう。
なおスロープを設置する場合、勾配は1/15以下が望ましいとされていますが、難しい場合は1/12以下でも問題ありません。そして勾配が1/15以下では幅が120cm以上、1/12以下なら幅は90cm以上設けることが理想です。あわせてスロープには、少なくとも片側には連続した手すりを設置する必要もあり、高さは床から75cm程度が目安といわれています。
島根県:長寿社会の住宅設計指針
エレベーターホールではバリアフリーも必要な時代に!
近年では高齢者が増加している背景なども踏まえて、エレベーターホールにはデザインだけでなく、バリアフリーも求められるようになってきました。高齢者や車椅子の方も含めて、老若男女が住まうマンションにおいては、特に今回紹介したようなエレベーターホールやスロープなどの寸法を押さえておく必要があるでしょう。
また、高齢者の移動の負担や荷物の持ち運びなども踏まえると、エレベーターホールから各住戸もしくはエントランスまでの距離も近いほうが望ましいといえそうです。
イラスト:大野文彰