マンションでよくある困った問題をテーマに、その解決方法を紹介していくこの連載。今回は「共用廊下」のトラブルに目を向けたいと思います。
分譲マンションの共用廊下は、住民が共同で利用するスペースです。共用廊下の利用にマナー違反があると、快適なマンション生活を損なう原因になりかねません。今回は、分譲マンションにおける共用廊下のよくあるトラブルと、対策について考えていきます。
共用廊下で起こりがちなトラブル3パターン

【パターン1】玄関先への物の放置

マンションの共用廊下やエントランス、階段などは住民同士が共同で利用する共用部分です。共用部分はほかの住民のことを考えて、マナーを守って利用するべきですが、時には他者への迷惑行為があり、トラブルとなるケースがあります。
よくあるのが、住戸の玄関先に自転車やベビーカー、レジャー道具などの物を置いているパターンです。廊下に自転車や大きな物が置かれていると、通行の邪魔になります。ほかの住民が大きな荷物を持って通る時や管理会社が清掃する時などに、非常に迷惑な行為です。
特に考える必要があるのは災害発生時です。急いで避難しなければならない状況で、放置された物が障害となって、迅速に逃げられなくなる可能性があるためです。特に幼い子どもやご高齢の住民にとって、避難時間のロスは大事になるかもしれません。
今の時代は置き配を利用する人が増え、一時的に玄関先に荷物を置く光景は珍しくないため、ある程度までは許容されやすくなってきています。しかし、「数日経っても荷物が置かれたまま」「たくさんの荷物が放置されている」といった場合には、ほかの住民に不安やストレスを与えかねず、できるだけ早く住戸内に荷物を運ぶべきです。
とあるWEB上の法律相談サイトでは、共用部分への私物の放置に関する相談が50件以上も投稿されていました。この問題は、どこのマンションでも起こり得るトラブルと考えられます。
【パターン2】飼い主のマナー違反
ペット可のマンションでは、犬などの動物のフンや尿が廊下に放置される場合があります。廊下が汚れていると、その場所を通る住民が嫌な気持ちにさせられるでしょう。ペットのフンなどは、本来であれば飼い主が片付けなければなりません。
玄関先に物を置くケースでは、その住戸の住民のマナー違反であると一目瞭然ですが、ペットに廊下が汚されても誰が飼い主なのかわからない場合もあります。多発すると、住民達が互いに疑いを持つような状況を招くかもしれません。
犬に限らずペットを廊下に出すことがある飼い主は、廊下の利用マナーに注意が必要です。
【パターン3】廊下での喫煙
自室がタバコ臭くなることを気にして、共用廊下で喫煙をする人もいます。これは、タバコの匂いが苦手な住民にとっては非常に迷惑な行為です。そもそも本人以外の人へ健康被害を与える危険性を考えると、廊下での喫煙は不適切です。
住民が喫煙者でなくても、自宅に招いた友人が廊下で喫煙するパターンもあります。人を招く際は、招いた住民が来客にもマナーを守らせなければなりません。
共用廊下のマナーを住民に再認識させる
共用廊下の利用でトラブルがあるマンションは、住民に共用部分の利用マナーを再認識してもらう必要があります。
そもそも、本来共用廊下に物を置いてはいけないことを知らない住民もいるかもしれません。玄関先に物を置いている住民がいると、それをみたほかの住民が「廊下に物を置いていいんだ」と誤った認識をして、同じように玄関先に物を置くようになるかもしれません。
トラブルを悪化させないためには、管理組合で「共用廊下に物を置いてはいけません」「ペットのフンは飼い主が責任を持って片付けてください」といった注意書きを作成し、掲示板や廊下の目立つ場所に貼り出す方法が有効です。各住戸の玄関ポストに、「お知らせ」として共用廊下の利用マナーをまとめた資料を配布するのもいいでしょう。
それでも改善しない場合は、注意書きを見てもらえていない可能性があるので、管理組合の理事長から該当の住民に話をしてもらう、といった手段が考えられます。共用廊下のトラブルでは、住民がマナー違反に無自覚なケースが多いので、話をして理解を得られれば改善する見込みが高いでしょう。ただし、注意内容に対して住民から反発を受けるかもしれないので、なるべく断定口調などは避けて丁寧な対応を心掛けることが重要です。
以上、今回は共用廊下のトラブルと対策方法を紹介しました。
共用廊下で起こりがちなトラブルは、住民がマナーを理解していれば、決して改善が難しいものではありません。そのため、まずは住民に共用廊下の正しいマナーを知らせることから始めましょう。
イラスト:カワグチマサミ