
理事会にとって最も重要と言える「マンション総会」。しかし、理事たちの想いに反して、思ったように参加者が集まらない、という悩みが多いと聞きます。
この記事では、総会の参加者を増やす方法を紹介していきますので、総会の参加率で悩んでいる管理組合はぜひ参考にしてください。
定足数未満なら、不成立となる可能性も

総会はマンション管理組合の最高意思決定機関であり、マンション管理の重要方針などを決定する場です。区分所有法では、年に1回必ず総会を開催しなければならないことが定められており、法律でも重要性が高い位置づけにあります。
原則として、マンションの区分所有者は全員総会への出席が求められます。しかし、実状として多くの管理組合で、例年たくさんの欠席者が出ているようです。
総会では「大規模修繕で実施する工事内容の承認」や「管理規約の変更」など、マンション住民全員に影響を及ぼす重要なトピックについての決議を採ります。決定事項に対して不公平と思われないためにも、理事会としてはなるべく多くの人に出席して欲しいもの。
さらに、総会は定足数の決まりがあるため、参加者が一定人数に達しなければ、不成立となる場合もあります。議決権総数の半数を下回る場合は、定足数に満たないと判断されるので注意が必要です。特に、毎年の総会を定足数ギリギリで開催している管理組合は、今後に向けて参加者を増やす方法を考えてみましょう。
総会の参加者を増やす方法

小規模マンションでは少なくとも10数名、大規模マンションなら100名以上の区分所有者がいます。同じマンションに住んでいるとはいえ、それぞれの暮らしぶりは千差万別。全員の予定を合わせるのは至難の技です。
区分所有者全員の参加は難しいとしても、少しでも多くの人に総会に出席して貰うために、効果的な施策を考えていきましょう。
1. 日程を早期に決定する

毎年なかなか参加者が集まらない管理組合は、総会の日程を決めるのが遅過ぎるのかもしれません。
総会は人が集まりやすい土日祝に開催されるのが一般的です。休日の予定を早めに決める人は少なくなく、数週間後までの週末の予定を決めている人もいます。そのため、目安として2ヵ月以上前には総会の日程を設定し、管理組合に周知するべきでしょう。
管理組合によっては開催日程を、「5月の第4土曜日」などと毎年固定して決めているところもあるようです。この決め方であれば、前もって日程が分かっているので区分所有者全員が調整しやすくなり、理事会としてもスケジュールを決めるのに悩まずにすみます。
2. 総会開催の周知

根本的に総会の開催についての周知が十分にできていなければ、参加者は集まりません。十分に告知したつもりでも、総会の翌週に「開催していたなんて全然知らなかった」と言う人が出てくるのは、実はよくあるパターンです。
周知する際は、マンション掲示板への開催案内を貼り出す方法が考えられます。マンションを出入りするときに目につく可能性が高いので、必ず実施しておきたい告知ですが、掲示板を一切見ない人もいるため、この施策だけでは不十分です。そのため、掲示板への貼り出しと合わせて、回覧板やポスティングなどの方法による案内の配付も検討しましょう。
ポスティングをする際は、案内がほかのチラシに紛れて捨てられないように、「○○マンション管理組合 総会のお知らせ」という文字が目立つように書かれた封筒に入れるなど、受け取る側の見落としが起こりにくい工夫を加えてください。
デジタルの活用も有効です。例えば、管理組合のLINEグループがある場合は、連絡や出欠の管理が簡単にできます。未読・既読を確認できる機能があるのもありがたいところ。
開催日の1ヵ月前や1週間前にリマインドの連絡を入れると、うっかり忘れられてしまうケースも減らせるでしょう。
3. わかりやすい資料づくり
資料のわかりやすさと参加率は無関係だと思うかもしれません。しかし、仕事が休みの日にわざわざ参加しているのに、不明瞭な資料を見せられて、よく理解できない状態のまま会計報告などをされてしまうと、総会に参加する意義を感じられなくなる人もいるでしょう。そのような方は、来年も総会に出席しようと思わないかもしれません。
前述の通り、総会はマンションの重要事項を決定する場なので、管理組合全員に深く関係します。わかりやすい説明で議事の内容を正しく理解して貰えれば、総会に対する「自分ごと化」が促進されて、マンション管理に対して感心を持ってもらえる機会となるかもしれません。
総会は、管理組合に対してマンション管理のアピールをできる場と考えて、わかりやすい説明を心掛けましょう。
4. 出席者に特典を配付する
街中で行われる献血のように、参加特典をつけて出席者を増やす方法もあります。
例えばカンパンや保存水などの非常食を特典にすれば、各住戸の災害への備えにつながるので、管理組合としては一石二鳥の効果を得られるでしょう。防災関連でなくても、市販のお菓子なども参加者に喜ばれる特典となります。
ただし、出席者を増やしたいがために特典に費用をかけ過ぎてしまうと、クレームが出される可能性もあるので、やり過ぎには注意が必要です。
特典とは逆に、総会を欠席する区分所有者にペナルティを科す管理組合もあるそうです。例えば、欠席した人に少額の支払いを科するといった形式が考えられます。
明確な罰則があれば参加率アップに効果的かもしれませんが、強引なやり方なため、不満を持つ人があらわれやすい方法です。不参加者に罰則を取り入れるとしても、「理由なく欠席した人と、体調不良や急用で出席できなかった人に同じペナルティを科すか」などを全員が納得いく形で決めることは難しいので、おすすめはできません。
そもそも、総会への参加は自由意志に基づいて決めるものです。仮に、規約などで罰則規定を制定していたとしても、法的には無効となる可能性が高いでしょう。
欠席する場合は議決権行使書の提出が有効
多くの人に総会へ出席してもらいたいと考えるのは当然ですが、やむを得ず不参加となる人への配慮も必要です。標準管理規約では、参加できない区分所有者の代わりに、一定の条件に該当する人物を代理人として認められる旨が記載されています。現行の管理規約で代理人を認めていない場合は、規約の変更を検討してみましょう。
本来の区分所有者に代わって代理人が参加する場合は、議決権を委任するために委任状の提出が求められます。管理規約の内容によっては、「代理人は『配偶者』『同居の親族』『他の組合員』しか認められない」などといった制限がされている場合もありますので、注意してください。
また、総会に参加しない管理組合員には、議決権行使書の提出を求めましょう。議決権行使書は、総会に参加できない区分所有者が議案に対する賛否を選択するための書類です。
議決権行使書を利用すれば欠席者も議事に対する意見を表明できます。ただし、総会の開催より前に書面で意見を伝えるという性質上、総会のやりとりを聞いたうえで意見を変更することができないので、やはり実際に参加していただくのがベストではあります。
総会を成立させる方法は数あれども、本当に意味のある総会にするためには参加者を増やすのが最適解です。総会参加者が少ないと感じている理事会は、この記事で紹介した、参加者を増やす方法の実践を検討してみましょう。
イラスト:大野文彰