
マンションでの置き配サービスは、再配達を減らし、住民の利便性を高めるために便利な方法として広まりつつありますが、便利さの裏で盗難や荷物の破損といったトラブルが発生する場合もあります。
こうしたリスクを減らすためには、管理ルールを定め、マンション内への周知が有効です。
この記事では、マンションでの置き配のデメリットとその対策について、わかりやすく解説していきます。
マンションにおける置き配の現状

宅配便の再配達率の高さを背景に、「置き配」の利用が広がっています。ECサイトを通じた買い物が一般化するなか、受取人が不在だった場合に再配達を減らす方法として、自治体や事業者が置き配の活用を進めているケースもあります。
置き配とは、不在時でもあらかじめ指定した場所に荷物を置いてもらい、直接対面せずに受け取りができるサービスです。指定できる場所は運送会社によって異なりますが、玄関前のほか、宅配ボックス、ガスメーター横、自転車のかご、ガレージなど、住まいの状況に応じた選択肢が用意されています。
一方で、置き配の普及にともない、荷物の盗難被害が報告されるようになり、万が一トラブルが起きた場合の責任の所在をめぐって問題になる場合もあります。
置き配管理における国土交通省の見解
マンションの共用廊下などに宅配荷物を置く「置き配」について、国土交通省も見解を示しています。
「専用使用部分」以外の場所に関しては、置き配は原則的には認められていません。ただし、宅配ボックスがない場合等、例外的に置き配を認める場合には避難の妨げになるような場所や状態での放置は避けるべきだと明言されています。
上記から、個々のマンションが実情に応じて柔軟にルールを定められると読み取れるでしょう。
マンション置き配のメリット
不在時でも荷物を受け取れる

置き配は、不在時でも荷物を受け取れる便利なサービスです。
特に、仕事で忙しく帰宅が遅い方や頻繁に外出する必要があってあまり自宅にいない方でも、荷物の受け取りができます。配達時間を気にせず受け取れる点が大きなメリットです。
また、在宅中でも商談や面談などで手が離せない状況でも、再配達になりません。
非対面で荷物を受け取れる
非対面での受け取りは感染症対策にも効果的といわれており、実際に2020年のコロナ流行を契機に置き配の利用者は増加しています。
さらに、チャイムを鳴らさず物音もしないため、寝かしつけた乳幼児を起こしたり、ペットの鳴き声を防ぐ効果も期待できるでしょう。
マンション置き配のデメリット
盗難リスクがある
配達された荷物が長時間放置されると、盗まれるリスクが高くなります。
置き配を狙った事件も増えており、実際に逮捕された事例も少なくありません。玄関前や施錠されていない場所、目立つ場所に荷物が置かれると、盗難のリスクがさらに高まるでしょう。
特に受取人が長期間不在の場合、荷物が盗まれるだけでなく、自宅の留守がわかりやすくなってしまうため、注意が必要です。
また、置き配では対面での確認がないため誤配達が起こりやすく、そのまま荷物が戻ってこないケースもあります。
荷物が破損する恐れがある
荷物の置き場所によっては、雨水や風にさらされてしまい、破損する可能性があります。
特にマンションの共用部分に置く場合、その場を通った他の人に偶然蹴られてしまうなどのケースも考えられるでしょう。
こうした理由から、一部のECサイトや運送事業者では、高額な商品や壊れやすいデジタル商品、医薬品などを置き配の対象外にしている場合があります。
置き配の荷物が盗難された場合の対処法
置き配で荷物が届かない場合は、まず配送会社に連絡しましょう。
一般的に、置き配は利用者自身の管理が基本とされています。盗難があったとしても、配送会社や発送元も、原則として補償は行っていません。ただし、配達時の手続きや案内に不備があった場合は、配送会社が対応するケースもあります。
荷物が本当に届けられたか、配達時の状況を確認しておくと安心です。被害の可能性がある場合は、警察への相談も検討しましょう。
マンション置き配の盗難を防ぐ方法
利用可能な時間帯を設定する
マンションでの置き配による盗難やトラブルを防ぐには、利用ルールを明確に定める必要があります。
例えば「〇時〜〇時の間のみ利用可」「玄関前のみ可」「通行や避難の妨げ、設備の破損が懸念される場所は不可」といった細則を設けましょう。
また、荷物の放置時間の制限も有効です。さらに、管理組合や管理会社が一切の責任を負わない旨を明記し、「置き配は利用者自身の責任で依頼・管理する」というように責任の所在を明確にしておくとトラブル回避に有効でしょう。
宅配ボックスを設置する

宅配ボックスが設置されていないマンションでは、置き配の盗難が起こりやすいため、宅配ボックスの設置を検討してもよいでしょう。
宅配ボックスには主に「ダイヤル式」と「電子式」の2種類があり、それぞれに操作方法や導入コスト、利便性に違いがあります。例えば、ダイヤル式は導入費用が比較的安価で抑えられますが、セキュリティ面で優れているとされているのは電子式です。
どちらのタイプを選んでも、設置後には定期的な点検や修理が必要となり、維持費用が発生します。そのため、導入を決める際には、初期費用だけでなく、長期的なランニングコストも加味して検討しましょう。
置き配の課題解決にはルール作りが必須
マンションにおける置き配は、再配達を減らして物流の負担を軽減し、住民の利便性を高める手段として普及が進んでいます。
一方で、荷物の盗難や破損といったトラブルも報告されており、管理上の課題は山積みです。
国土交通省は、専用部分での置き配は問題ないとしつつも、共用部分での実施には慎重な対応が求められるとしているため、各マンションが実情に応じてルールを整備する必要があるでしょう。