マンション解体業者の選び方!見積もりのチェックポイントも解説

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      マンションの解体は、一般的な戸建て住宅とは異なり、規模が大きく構造も複雑です。近隣への影響も大きいため、業者選びは非常に重要になります。

      「どの業者なら信頼できるのか」「提示された見積もりは適正なのか」など、不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

      もし業者選びを誤れば、実績不足によるトラブル、高額な追加費用の請求、あるいは廃棄物の不法投棄といった法令違反に巻き込まれる懸念さえあります。

      本記事では、マンション解体で失敗しないために、信頼できる業者の見極め方9つのポイント、見積もり比較時のチェックポイント、さらに費用を抑えるコツまでをわかりやすく解説します。

      安心して任せられる業者選びの参考にしてください。

      マンション解体業者の選び方のポイント

      マンションの解体業者を選ぶ際は、以下のポイントを意識しましょう。

      1. マンションの解体実績が豊富にあるか
        RC造など特有の構造や規模に対応できる、十分な経験と技術があるかを確認します。
      2. 行政処分や指名停止措置を受けていないか
        過去に法令違反などがなく、コンプライアンス意識の高い、信頼できる業者かを見極めます。
      3. マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを発行してくれるか
        解体で出た廃棄物が法律に基づき適正に処理された事実を、書類で証明してもらえるか確認します。
      4. 見積もり前に現地調査を行っているか
        図面だけでなく、現地の状況やアスベストの有無、周辺環境を直接確認し、正確な見積もりを行うかを見ます。
      5. 損害賠償保険に加入しているか
        万が一の事故や近隣への損害が発生した際に、十分な補償が可能な保険に入っているか確認します。
      6. 官公庁への届出
        アスベストの届出や、近隣挨拶、工事説明、看板設置など、自治体ごとのルールを把握し、適切に実行できるかを確認します。
      7. 担当者とのコミュニケーションがスムーズか
        こちらの疑問や要望に対し、誠実かつ迅速に、わかりやすく対応してくれるかも重要です。

      1. マンションの解体実績が豊富にあるか

      マンションの解体は、一般的な戸建て住宅の解体とは大きく異なります。多くが鉄筋コンクリート(RC)造で頑丈なうえ、規模も大きいため、取り壊しには専門的な技術と手間が必要です。

      また、大規模な現場では、緻密なスケジュール管理や、必要に応じた協力業者の手配・管理などの業務も発生します。近隣の状況によって作業時間が制限される場合も少なくありません。

      そのため、マンション解体の経験が豊富な業者を選ぶのが賢明です。業者の公式ウェブサイトなどで過去の施工実績を確認しましょう。

      その際、単に「マンション解体」の実績があるだけでなく、今回予定している物件と「同等規模」や「類似した構造」の解体実績があるかを確認すると、よりスムーズな工事が期待できます。

      2. 行政処分や指名停止措置を受けていないか

      解体工事の許可や登録を有している業者であっても、過去に不正行為や法令違反により、行政処分や指名停止措置を受けていないかを確認するのは重要です。解体工事には遵守すべき法律や規定が数多く存在します。

      こうした処分歴は、各都道府県のウェブサイトで公表されている場合が多く、比較的簡単に検索できます。最新の詳しい情報を知りたい場合は、都道府県庁の担当部署(建設課など)へ直接問い合わせましょう。

      また、国土交通省が提供する「ネガティブ情報等検索サイト」を利用すれば、5年以内に行政処分を受けた業者の調査が可能です。

      国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」

      特に解体工事では、産業廃棄物の不法投棄などが厳しく罰せられます。廃棄物処理に関する重い処分を受けていないかは、公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団のウェブサイト内にある「産業廃棄物処理業・処理施設 許可取消処分情報」などで確認しましょう。

      公益財団法人産業廃棄物処理事業振興財団「産業廃棄物処理業・処理施設 許可取消処分情報」

      3. マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しを発行してくれるか

      解体工事で多くの産業廃棄物が発生するのは当然です。かつては廃棄物を分別せず一気に解体・処分する「ミンチ解体」が横行していましたが、現在は環境への配慮やリサイクルの観点から、廃棄物を種類ごとに分別する「分別解体」が法律で義務付けられています。

      この分別された廃棄物が、解体現場から収集運搬業者、そして最終処分場まで、法律に則って適正に処理されたかを確認・管理する仕組みが「マニフェスト制度」です。

      「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」は、この廃棄物の流れを記録・管理するための伝票です。解体業者には、このマニフェストを用いて、廃棄物が最終処分まで完了したかを確認する法的な義務があります。

      優良な業者かを見極めるため、契約前に「工事完了後にマニフェストの写しを発行してください」と伝えましょう。

      適正な処理を誠実に行っている業者であれば、発行してくれるはずです。もし発行を渋ったり、あるいは何らかの理由をつけて拒否したりする業者は、不法投棄などの不正を行っている可能性が疑われます。トラブルを避けるためにも、そのような業者は選ばない方が賢明です。

      4. 見積もり前に現地調査を行っているか

      解体工事の見積もりにおいて、建物の状況や周辺環境による変動は一般的です。樹木や庭石の有無、地中埋設物の可能性、重機が進入できるかなど、多くの要素が費用に影響します。

      そのため、精度の高い見積書を作成するには、契約前の「現地調査」が不可欠です。

      信頼できる業者は、必ず現地に足を運びます。建物の大きさや構造はもちろん、建物内部の詳細な状況、外構などの付帯設備、さらには重機の搬入経路となる前面道路の幅や、近隣の建物との距離といった周辺環境まで入念な調査が必要です。

      可能であれば依頼者も立ち会い、詳細な状況を一緒に確認してもらうと良いでしょう。

      この調査結果をもとに作成された見積もりは信頼性が高くなります。逆に、現地調査を行わず、図面や口頭の情報だけで見積もりを提示しようとする業者は注意が必要です。後から想定外の作業が判明し、高額な追加費用を請求されたり、工期が遅れたりする懸念があります。

      また、現地調査の時点で性急に契約や仮契約を迫る業者、着手金の話を持ち出す業者も避けたほうが賢明です。見積もり依頼が即契約義務とはなりません。

      5. 損害賠償保険に加入しているか

      解体業者は、日々さまざまなリスクを想定しながら慎重に作業を進めます。しかし、どれほど注意を払っていても、解体工事における事故のリスクをゼロにするのは困難です。

      例えば、作業中の重機が誤って隣家の外壁に接触して傷をつけたり、解体材や瓦礫が飛散・落下して通行人にケガをさせたりする可能性は否定できません。重機の横転といった重大な事故もあり得るでしょう。

      安全意識の高い解体業者は、このような「いざという時」のわずかな可能性にも備え、損害賠償保険に加入しています。これは、万が一の際に適切な補償を行うための重要な備えです。

      しかし、残念ながら業者のなかには、安全意識の低さや保険料を浮かせたいという考えから、保険に未加入のまま営業しているところも存在します。

      本来、解体作業中に生じた事故や破損に関する賠償は、業者が責任を負うのが当然です。もし保険未加入の業者が事故を起こし、その負担額を支払えない場合、最悪のケースでは依頼者が費用負担を求められる可能性も出てきます。

      業者を選ぶ際には、損害賠償保険への加入の有無を必ず確認しましょう。

      6. 官公庁への届出

      解体工事の実施には、さまざまな法律にもとづき、官公庁への事前の届出が義務付けられています。

      特に重要なのが、アスベストに関する手続きです。築年数の古いマンションではアスベストが使用されている可能性があり、法律で事前調査が必須とされています。

      信頼できる業者は、まずこの事前調査方法が適切です。アスベストの使用が判明した場合、専門的な知識と資格を持った作業員による適切な除去作業が求められますが、対応も期待できます。業者がアスベスト除去作業を適正に行った証明書を役所に提出した後で、管理組合に同様の証明書を提出してくれるかどうかも事前に確認しておくといいでしょう。

      また、騒音や振動に関する各市町村のルール(条例など)に沿った近隣対策も重要です。業者が工事請負後、速やかに周知看板を設置し、定められた手順で近隣への説明や挨拶を行うかも確認しましょう。

      アスベストの調査・測定も重要な近隣対策です。測定結果が数字で残されていれば、マンション近隣の住民から、クレームの声が上がった場合の証拠になります。調査・測定は除去作業開始前、施工中、施工後に分けて実施し、何かあったときに対応可能な書類を残しておくように業者に相談しておきましょう。

      7. 担当者とのコミュニケーションがスムーズか

      解体工事は長期間に及ぶ場合もあり、その間の業者とのやり取りは非常に重要です。

      質問や依頼に対する反応が遅かったり、回答が不確実だったりする業者は、万が一の緊急事態が発生した際にスムーズに連携が取れず、トラブルや施工ミスに発展する懸念があります。

      打ち合わせの際、担当者が不在の場合やすぐに連絡がつかない状況でも、速やかに折り返しの連絡があるか、または伝えた内容が社内で確実に共有されている体制かも重要となります。

      また、専門的な内容をわかりやすく説明してくれるか、こちらの不安や要望に親身になって耳を傾けてくれるかなど、担当者の対応が丁寧であるかも大切なチェックポイントです。

      見積もり確認時のチェックポイント

      複数の業者から見積もりを取得したら、以下の点を中心に比較検討しましょう。

      1. 見積書や説明が明確でわかりやすいか
        見積書には、どのような工事にいくらかかるのか、その内訳が具体的に記載されている必要があります。「解体工事一式」といった曖昧な表記ではなく、仮設工事、解体作業、廃棄物の処理費用など、項目ごとに金額が明記されているとよいです。
      2. 見積もりの金額が適正か
        金額を比較する際は、単に総額の安さだけで判断しないよう注意が必要です。極端に安価な見積もりは、廃棄物の適正処理といった必要な作業が省略されていたり、後から高額な追加費用を請求されたりする可能性があります。複数の見積もりを見比べ、内訳項目や単価が市場の相場から大きく外れていないか、適正な価格設定かを見極めましょう。
      3. 追加費用について明確な説明があるか
        解体工事では、地中埋設物の発見のように、現地調査だけでは予測できなかった事態が発生し、追加費用がかかる場合があります。どのような場合に追加費用が発生するのか、その際の費用算出の根拠や連絡・確認の手順が、契約前に明確に説明されているかを確認しましょう。

      【ポイント1】見積書や説明が明確でわかりやすいか

      解体工事と一口にいっても、足場の設置から実際の取り壊し、廃棄物の運搬まで、段階に応じてさまざまな作業が発生します。そのため、見積書には「どのような作業に」「いくらかかるのか」という作業の内訳と料金が具体的に明記されている業者が安心です。

      業者は通常、見積もり依頼を受けると現地調査を行います。現場の立地条件や建物の規模などを確認したうえで、必要な作業を判断し費用を積算するはずです。この内訳を詳しく提示してくれる業者が望ましいでしょう。

      特に注意したいのが、「諸経費」や「解体工事一式」といった内容が曖昧な項目です。これらの項目については、具体的に何が含まれているのかを必ず質問し、詳細を確認します。

      また、複数社の見積書を比較した際に、極端に高い、あるいは極端に安い項目があった場合や、作業内容を想像できない項目があった場合なども、そのままにせず問い合わせましょう。

      こうした質問に対して、担当者が丁寧に、そして納得できるようにわかりやすく説明してくれるかも、信頼できる業者か見極めるための大切な判断材料になります。

      【ポイント2】見積もりの金額が適正か

      見積もりを比較する際、金額が不当に高い業者はもちろん候補から外すべきです。しかし同時に、金額が「安すぎる」場合も注意が必要でしょう。

      解体工事の契約を取りたいがために意図的に安価な見積もりを提示し、契約が成立した後でさまざまな理由をつけて追加費用を請求するケースは珍しくありません。安さで選んだにもかかわらず、最終的な支払総額は他社と同じか、かえって高額になってしまう場合もあります。

      また、極端な安さの背景には、工事の品質が低かったり、法令に沿った適切な作業が行われなかったりするリスクが潜んでいる可能性が高いです。

      特にマンションに多いRC造(鉄筋コンクリート造)やSRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)の解体では注意が必要です。近年、コンクリートガラの処分費用が高騰しているため、これらの構造で極端に安価な見積もりを出す業者は、産業廃棄物の不法投棄を行っている可能性も考慮しなくてはなりません。

      解体工事の費用は、一般的に「坪単価(1坪あたりの費用)」に「延べ床面積」を乗じて算出されますが、これはあくまで目安の一つです。実際の費用は、建物の構造や立地条件、エリアによって大きく変動します。

      表面的な金額の低さだけで業者を選ぶのは控えたほうが賢明です。

      S造,RC造,SRC造各坪単価の費用目安

      【ポイント3】追加費用について明確な説明があるか

      現地調査を丁寧に行ったとしても、解体工事の途中で想定外の作業が発生し、追加費用がかかる場合があります。そのため、見積書や契約書に、追加料金が発生する可能性について明記されているか、またその内容について明確な説明があるかを事前に確認しましょう。

      特に注意が必要なのは、地中から古い基礎、井戸、浄化槽といった「地中障害物」が発見されるケースです。これらは事前の調査では見つけにくく、撤去するために別途費用が発生します。

      また、古い物件ではアスベストの除去費用も考慮しなくてはなりません。建物が途中で改修工事をされていてもその内容が図面に反映されておらず、その結果、除去されずに残っていたアスベストが解体中に発見され、追加料金が発生する可能性もあります。

      アスベストのほか、PCB、ハロン、蓄電池、廃油などの有害物質の取り扱いについても、見積もり時点で業者に説明を求めておくと安心です。

      契約書の内容にも関わりますが、「どのような場合に追加費用が発生するのか」という条件や理由が具体的に明示されているかを確かめます。あいまいな理由や納得できない条件での請求を避けるためにも、契約前の入念な確認が重要です。

      マンション解体工事を適正費用で依頼するためのコツ

      マンションの解体工事を適正な費用で依頼するには、以下のコツを押さえておきましょう。

      1. 複数社に相見積もりを取る
        必ず複数の業者に見積もりを依頼し、提示された金額や工事の内訳を比較検討しましょう。これにより、その工事内容に対する地域の費用相場を把握でき、不当に高額な請求はもちろん、逆に安すぎて品質や法令遵守に不安が残る業者を見極める助けになります。
      2. 解体工事の閑散期に工事を行う
        解体業界にも繁忙期と閑散期があり、一般的に年度末などは工事が集中しがちです。需要が落ち着く時期を狙って依頼すれば、業者のスケジュールにも比較的余裕があり、費用交渉がしやすくなる可能性があります。
      3. 見積もり時に図面を提出する
        建物の設計図面(構造図や平面図など)を事前に提示しましょう。業者は建物の正確な構造や延床面積を把握しやすくなるため、現地調査とあわせる形で、より精度の高い見積もりを算出してもらうための重要な資料となります。

      【コツ1】複数社に相見積もりを取る

      解体工事では相見積もりをしないと、金額が適正であるか判断できません。必ず複数の業者から見積もりを取り、比較検討しましょう。

      ただし、見積もり依頼には現地調査がともなうため、業者数が増えれば依頼側の手間も増えます。また、数が多すぎても比較検討が大変になるため、依頼する業者は「3社程度」を目安にするのが望ましいでしょう。

      依頼する際は、最初に「相見積もりである」と各業者へ明確に伝えます。業者によっては相見積もりを受け付けない場合もあるため、先に伝えておくと話がスムーズです。また、条件が合わずに断る際にも、心理的な負担が軽減されます。あわせて、何社程度に依頼しているかも伝えておくと親切です。

      その際、各社が同じ基準で見積もりを算出できるよう、「条件を統一」するのが重要です。解体範囲や条件が異なれば、提示される費用も当然変わってしまいます。建物の構造、解体する範囲、解体の目的、希望する工事完了時期などを揃えて伝えましょう。

      また、スムーズに比較検討を進めるため、見積書の「提出期限」も設定します。期限がないと各社の提出時期がバラバラになり、検討開始が遅れてしまいます。業者の都合も考慮し、数週間から1ヵ月程度の余裕を持たせると良いでしょう。

      【コツ2】解体工事の閑散期に工事を行う

      解体工事の費用は、依頼する時期によっても変動します。

      一般的に、公共工事や企業の決算期が重なる年度末、具体的には12月から3月が繁忙期です。この時期は解体業者のスケジュールが埋まりやすく、工事の需要が高まるため、費用も高額になる傾向が見られます。

      もし工事の日程に融通が利くのであれば、この繁忙期を意図的に避けてスケジューリングすると、費用を抑えられる可能性があるかもしれません。

      例えば、初夏から秋口にあたる5月から9月頃は、比較的需要が落ち着く時期です。天候が安定するこの季節は工事もスムーズに進めやすく、特にコンクリートガラの処分がしやすいといった側面もあります。業者のスケジュールにも余裕が出やすいため、こうした閑散期に依頼すると、費用交渉に応じてもらえる可能性が高いです。

      【コツ3】見積もり時に図面を提出する

      解体工事の見積もりを依頼する際、建物の図面を準備しておくと非常に有効です。

      特に「竣工図」と呼ばれる建物の完成時の図面は、外から見るだけではわからない床下の状態や建物の詳細な構造、使用されている建材などの情報が記録されているため役に立つでしょう。

      業者が現地調査で得た情報と、これらの図面情報をあわせると、より精度の高い見積もりを算出できます。

      マンション解体成功の鍵は「比較」と「準備」

      マンションの解体業者を選ぶうえでは、まず業者の信頼性を見極めるのが肝心です。類似物件の施工実績が豊富にあるか、法律で定められた資格を保有しているか、そして万が一の事故に備えた損害賠償保険に加入しているか、これらは最低限確認すべき点だといえます。

      具体的な業者選定では、1社に絞らず複数社から見積もりを取得するのが基本です。比較検討の手間も考慮し、3社程度を目安に相見積もりを依頼しましょう。

      受け取った見積書は、総額の安さだけで判断してはいけません。金額が適正であるかは当然として、見積書の内訳が明確でわかりやすいか、そして追加費用が発生する条件はどのような内容か、細部までチェックして総合的に判断しましょう。

      そして、解体工事を適正な費用で依頼するには事前の準備も影響します。見積もり時に設計図面を提出して正確な見積もりを促したり、工事が集中する繁忙期を避けて閑散期に依頼したりするのも有効な手段です。

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