大きな災害が起きてマンションが被災すると、管理組合のなかで災害による被害を最小限に抑えるために活動をする「災害対策本部」を設置し、情報収集や生活維持のサポートをする必要があります。また、廊下の壁やドアなどに破損が生じた場合は、行政から被害認定を受けたり、復旧の手配をしたりしなければなりません。
ただし、災害発生時に場当たり的に対応しようとするとうまく動けないもの。そのため、事前にすべきことや流れをシミュレーションしておきたいものです。
今回は、マンション管理組合が災害に備えて事前に立てておくべき、防災計画について紹介していきます。確認して必要な備えについて考えてみましょう。
防災計画で被害を最小限に抑える
防災計画を作成する目的は、災害発生時に迅速な対応を行い、マンションの居住者や建物の被害を最小限に抑えることです。
日本では、地震や火災のほか、台風や水害など多くの災害が発生するリスクがあります。
マンションのように多くの世帯が生活している場では、有事での行動指針をあらかじめ共有しておくことが特に重要で、有効な対策をしておくと被害の軽減や二次災害の発生防止に期待できます。
災害の発生を他人事とせず、リスク備えるためにも、防災計画の策定は重要であるといえるでしょう。
マンションの防災計画に盛り込む要素は4つ
【1】災害に対する基本方針
防災計画の雛形は、国土交通省が2020年に公表した「Eマンション地区防災計画」のほか、各自治体のホームページでも公開されているので、参考にしてみましょう。
最初に明確にしておきたいのが、マンションにおける防災の目標と災害対策本部の設置基準です。これらの項目は「基本方針」として1章にまとめておくとよいでしょう。
目標は平時と災害時で分けて設定します。平時の項目に記載するのは、主に日頃の防災活動や備蓄品の量など。
災害時の項目では災害対策本部の設置基準を明記しましょう。設置基準は、「災害の規模」や「被害の有無」などで決めるのが一般的です。
【2】地域の特徴
防災計画を考える際の前提となる情報には、マンションが位置する地区や建物の状況があります。
海抜や河川の位置などの地勢や地質のほか、人口や建物の状況といった地区全体の情報をまとめておくとよいでしょう。そのほかに、災害での被害想定も記載します。これらの情報は、自治体のホームページで確認可能です。
地区全体だけではなく、マンションの現況についての項目も設けます。基本情報のほかに防災上の課題や防災訓練のスケジュール、備蓄品のリストなどが必要です。特に防災訓練については、防災計画の見直しのためにも毎年実施する旨を明記しましょう。
【3】災害対策本部の概要
続いて、マンションでの災害発生時の具体的な活動計画について記載します。
災害対策本部に関する内容は、活動基準や組織体制や活動するための場所、対応フローなどを記載しましょう。
通常の場合、災害対策本部内には本部長や副部長がおり、その下に消火班、救護班、情報班、生活班などが組織されます。マンションの規模によっては、フロアをいくつかのブロックに分けて代表者を決めておくと、情報伝達がスムーズになるでしょう。
対応フローには、災害ごとに発生から復興までの流れをまとめておきます。災害に応じて必要な対応が変わるので、地震や水害など災害の種類別にフローを記載しましょう。
【4】居住者の対応
マンションの防災では、災害対策本部だけではなく居住者ひとりひとりの協力が不可欠です。
周辺や家族の状況によっては、避難所に避難するよりも自宅にいたほうが安全なこともあります。在宅避難では水や食料のほか、簡易トイレや充電器など停電や断水に備えた物資が必要になってきます。
少しでも在宅避難の可能性があるならば、最低でも7日間、可能であれば2週間分の防災用品を備蓄するように呼びかけましょう。
正確な防災計画を立てるポイント
実際に災害が発生した時に有効に機能する防災計画は、すぐに立てられるものではありません。まずは管理組合で防災委員会を組織し、複数回の話し合いを重ねて各項目を検討していく必要があります。
専門知識がなく、現在の人員だけで計画立案が難しい場合は、マンション管理士や防災の専門家をアドバイザーとして迎えてもよいでしょう。
防災計画は「立てて終わり」にしない
防災計画は立てた後も重要です。例えば、居住者の年齢層が上がっていくにつれて、基本的な防災備蓄品だけではなく、車椅子や介助器具なども必要になってくるので、定期的な見直しが求められます。
マンションでの防災訓練は、防災計画で改善するべき点を知るための絶好の機会です。年に一度は実施し、居住者のニーズに合わせて内容を更新しましょう。
平時こそ災害に備えて動き出そう
自然災害が多く発生する日本では、日頃からの備えが重要です。多くの人が暮らすマンションでは、あらかじめ防災計画を立てておくことが、被害軽減に有効な手段といえます。
防災計画で災害対策本部や居住者がすべきことを明確に定め、周知することで、災害時もパニックを起こさず避難する助けになります。
計画は定期的に見直し、マンションでの暮らしをより安心できるものにしたいですね。