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不測の事態で効果を発揮!大規模修繕の予備費を解説

大規模修繕を控えた皆さんに向けて、修繕工事のいろはを説明するこの連載。今回は大規模修繕で追加工事が発生した際のために備えておきたい、「予備費」を解説します。不測の事態の発生は大規模修繕につきものなので、予備費の重要性を理解しておきましょう。

大規模修繕は追加費用が発生するケースが4割以上もある!

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大規模修繕には高額な費用がかかります。そのため、管理組合は大規模修繕を見越して修繕計画を立てたり、管理組合員から毎月修繕積立金を集めたりして、大規模修繕に備えるのが基本です。

しかし、実情では、綿密に事前準備をしても資金が不足するケースが散見されます。主な理由は見積もりの段階では想定されていなかった、追加工事の発生です。たとえ、事前に建物診断を実施していても、実際に工事を進めると新たに修繕が必要な箇所が発覚するパターンはよくあります。

例えば、外壁の劣化診断では、高い位置の外壁は足場をかけない限り詳細な劣化度合いを確認できません。そのため、大規模修繕工事が始まってから、はじめて高所に修繕が必要なタイルがあると気づくケースがあるのです。

東洋大学の研究室と公益財団法人マンション管理センターが、48社の修繕業者を対象に実施した調査では、全体の43.8%が「工事金額から追加精算になることが多い」と回答しています。

東洋大学理工学部建築学科秋山研究室、公益財団法人マンション管理センター「マンションの大規模修繕工事における工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果」
この結果から、追加工事の発生は決して珍しくないといえるでしょう。

大規模修繕の積算方法には、「実数精算方式」と「責任数量方式」の2種類があります。

実数精算方式は、施工前に仮の数量で見積もり額を出し、工事完了後に実際に作業した分の費用を請求する方法です。そのため、見積もりの金額と実際の請求額が異なる場合があります。

一方の責任数量方式は、施工前の見積もり額で工事費用を確定させる方法です。実際の工事内容と見積もりに齟齬があっても、管理組合が支払う金額は変わりません。

大規模修繕では、約8割の施工業者が実数生産方式を採用しているといわれており、この点が追加費用の発生に大きく関わっています。

実数精算方式を採用している業者に依頼した場合、予定していた大規模修繕工事を実施できるギリギリの予算しか用意がなければ、追加で必要な工事が発覚しても対応できないかもしれません。

そのため、大規模修繕を実施する際は「予備費」の準備が重要です。

予備費の目安は工事費全体の5〜10%

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一般的な予備費の目安は、大規模修繕にかかる費用全体の5〜10%です。この範囲内で妥当となる数値は工事の規模によって変動します。

竣工後初めての大規模修繕であれば比較的劣化箇所が少なく、追加工事が必要になる可能性は低いでしょう。そのため5%程度が目安です。

一方で、竣工以降3度目の大規模修繕の場合は、築年数が35年から40年以上経過しているため、工事を進める中で予定外の修繕が必要になる可能性が高くなります。そのため、10%を目安に予備費を用意するのが妥当でしょう。

また、マンションの規模も予備費の金額を決める重要な要素です。小規模なマンションであれば、建物自体が小さく、設備の数が少ないため、追加で修繕が必要になる可能性は低いと考えられます。そのため、予備費を少なめに設定しても資金が不足する可能性は低いでしょう。

反対に建物が大きく、設備が充実している大規模なマンションでは、予定外の修繕が必要になる可能性が高いため、予備費を高めに設定したほうが無難となります。

追加工事が発生せずに、予備費を使わなかった場合は、次の大規模修繕のために残しておけばいいので無駄にはなりません。

追加工事の費用が不足すると理事会は大忙し

費用が不足して追加工事が実施できない場合、理事会は大変です。

予定にない修繕工事を追加で実施するには、マンション総会で承認を得なければなりません。総会の時期が数ヵ月先になるなら、臨時総会を開催する必要が出てきます。

総会で承認を得られたとしても、追加費用を集めるのがまた大変です。方法としては、管理組合から一時金を集めるか、金融機関から借り入れるかの、いずれかが考えられます。

また、無事に資金を集められたとしても、追加の作業が発生するため、大規模修繕の工期が予定よりも伸びてしまうのも問題です。大規模修繕の期間中は、工事による騒音や外部の人の出入りの増加など、マンションの住み心地が低下します。そのような状況に陥ることで、住民からの理事会への不満が高まり、クレームを出されるかもしれません。

事前に予備費を用意しておけば、このような悲惨な状況を避けられます。大規模修繕で追加工事が発生した場合に備えるための最適解は、「適切な予備費の準備」といえるでしょう。

どうしても費用が足らず、追加工事ができない場合は、修繕業者と相談して優先度の低い工事を取りやめてコストカットする方法もあります。また、不足分の金額が集まるまで工事を延期する方法も考えられるでしょう。

しかし、修繕を予定通りに実施できないのはマンションにとって大きなマイナスとなるので、やはり予備費を用意しておくことをおすすめします。

イラスト:平松 慶

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この連載について

【連載】

ついにやって来た!大規模修繕

約12年に一度の周期で訪れるマンションの大規模修繕。住まう人々が安心して暮らすため、また、建物としての価値を維持するために、とても大切なイベントです。とはいえ、修繕工事などと言われてもピンとこない方がほとんどでしょう。この連載では、そのような方に向けて、修繕工事に向けた準備の進め方の一例を順を追ってレクチャー!みんなが納得できる工事となるように、しっかりと準備を整えましょう!

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