大規模修繕を控えた皆さんに向けて、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は、マンションで劣化が早い部位や資材についてです。部位ごとの耐用年数を知って、適切なタイミングでの修繕に役立てましょう。
初回の大規模修繕の代表的な対象は4つ

マンションにはさまざまな建材が使用されていますが、それぞれ劣化する早さに違いがあります。例えば、外壁のつなぎ目などに使われるシーリング材は劣化の進行が早い部位で、10年ほどが耐用年数の目安とされています。そのため、多くのマンションで大規模修繕の度に打ち替えを実施しているでしょう。
一方で、構造部のコンクリート躯体(くたい)そのものの補修は25〜40年が目安とされており、毎回の大規模修繕で抜本的なメンテナンスを行う必要はありません 。ただし、表面のひび割れ(クラック)や欠損などは、放置すると内部の鉄筋を錆びさせ、建物の寿命を縮める原因となります。そのため、大掛かりな補修は不要でも、毎回の大規模修繕時に必ず点検を行い、必要に応じて部分的な補修を施すのが一般的です。
不必要な修繕は余計なコストの発生につながります。何度目の大規模修繕でどの部位を修繕するのかを整理し、計画的に進めることが重要です。
ここからは特に劣化が早い部類に入る部位について、どれくらいの周期で修繕が必要になるか見ていきましょう。
代表的な劣化が早い部位
1.シーリング材
前述の「シーリング材」は劣化が早い部位の代表格です。シーリング材とは、外壁目地やサッシ周りなどに埋められる材料で、建物に防水性を付与する効果を持ちます。屋外に使われるため、紫外線や雨風の影響を受けやすく、硬化やひび割れ、剥離などの劣化が進行しやすい部位です。
おおよそ10〜15年が打ち替えの目安とされ、初回の大規模修繕では高い確率で全面打ち替えが行われます。
2.外壁塗装
外壁塗装に使われる塗膜は、建物の美観を保つ効果と防水性、コンクリートの保護機能を有しています。塗膜が劣化すると建物の防水性が低下し、ひび割れから雨水が屋内にまで浸入するリスクが高まってしまいます。12〜15年周期での塗り替えが目安とされ、シーリング工事と同時に実施されるケースが一般的です。
3.防水層
屋上やバルコニーの床面に施工される防水層は、建物内部への漏水を防ぐ効果を持つ設備です。ウレタン防水、シート防水などの種類があり、それぞれ耐用年数が異なりますが、おおよそ12〜20年程度が更新の目安となります。劣化を放置してしまうと漏水が発生する可能性があるため、大規模修繕の際に状態を確認し改修を検討するべき部位です。
4.鉄部塗装
階段や手すりなどには鉄製の建材が使われています。鉄は錆が発生しやすく、劣化の進行も比較的早い部位です。錆を放置すると腐食が発生して強度の低下につながり、階段などでは崩落事故が起きる可能性もあるため、定期的な修繕が求められます。劣化の進行状況によっては、部材そのものの交換が必要になる場合もあり、3〜6年程度での定期的な塗り替えが推奨されています。大規模修繕のタイミングだけでなく、中間期でのメンテナンスも実施しましょう。
修繕の要不要を見分けるコツは?

ここまで、修繕周期が短いマンションの部位ごとに修繕が求められる目安の年数を紹介してきましたが、耐用年数はあくまで一つの基準であると考えましょう。なぜなら、建物の立地や日当たり、風雨の当たり方といった条件によって劣化の進み方が大きく異なるからです。例えば、海に近いマンションと内陸部のマンションでは、同じ築年数でも鉄部の錆び方は大きく変わります。
適切なタイミングで修繕を実施するためには、実際にどれぐらい劣化が進行しているかの見極めが重要です。
シーリング材であれば、ひび割れや剥離が起きていないかがポイントとなります。外壁塗装は、手で触ると白い粉がつく「チョーキング」が起きていないかや、色あせが進んでいないかが有力な判断材料です。防水層は膨れや破れ、鉄部であれば塗膜のはがれや錆が発生していないかをチェックしましょう。これらの目に見える変化は、修繕のタイミングを判断する重要な手がかりになります。
ただし、見た目だけでは判断できない劣化が資材の内部で進行している可能性もあります。そこで効果的なのが、専門家による建物診断です。打診調査や防水層の状態確認などを実施すれば、見た目だけでは分からない劣化の進行を把握できます。
もうひとつのポイントは、全面改修か部分補修かの判断です。大規模修繕では、必ずしも全体を一度に更新する必要はありません。劣化が進んでいる箇所を優先的に対応して進めれば、修繕費を抑えながら建物の性能を維持していけるでしょう。状態を把握し、優先順位をつけ、必要なところにだけ手を入れることが成功の秘訣となります。
建物の老朽化は決して止められません。しかし、劣化の進行をコントロールすることは可能です。大規模修繕はあらゆる部位を一斉に更新するのではなく、必要な箇所に、必要なタイミングで実施していきましょう。部位ごとの劣化特性を理解し、長期修繕計画に反映させることが、将来の修繕積立金の安定にもつながります。
イラスト:平松慶

