マンション価格の高騰により、近年投資目的のマンション購入が増加しています。しかし、こうした「投資目的化」はマンションの資産価値低下やコミュニティ形成の困難さなど、さまざまな問題を引き起こす原因になりかねません。
本記事では、投資目的化マンションの問題点と、購入前に見分ける方法を詳しく解説します。
マンション投資目的化の問題点
マンションの資産価値が下がる
近年、マンション価格の高騰の影響もあってか投資目的でのマンション購入が増加しています。
投資目的のマンション購入が増加した結果、マンション購入の抽選倍率が高くなり、入居を目的とする本来のターゲット層が購入できなくなる問題が生じています。
投資目的化が進んだマンションの実例として、東京オリンピックの選手村を改修した「晴海フラッグ」が有名です。分譲マンションの抽選倍率は70倍を超え、一般のファミリー層の入手が困難になったとして問題になりました。
また、投資物件として認識されてしまうと長期的な居住を考えるファミリー層からの人気が下がり、将来的な資産価値の低下につながる可能性があります。
コミュニティが形成されにくい
投資目的で購入したマンションは、築浅のうちに転売もしくは賃貸に出される傾向にあります。2024年1〜10月に東京・大阪で築1年以内に売りに出された物件は1,548戸と、10年前の同期と比較して3倍を超えました。その背景には、投資家が転売益を見込んで短期売買をしている状況があります。
住戸の短期売買が活発なマンションでは、入居者の入れ替わりが頻繁に起こるため、長期的・安定的なコミュニティ形成が難しくなります。住民同士のつながりが薄いマンションでは、防犯面や災害時の協力体制にも影響を及ぼす可能性があるでしょう。
管理組合の意思決定が難しくなる
マンションの維持管理には、区分所有者で構成された管理組合が不可欠です。一方で、投資目的のオーナーが増えると管理組合内で意見が分かれるケースが多くなるおそれがあります。
例えば、居住者は生活環境の質や長期的な資産価値の維持を重視する一方、投資家は短期的な収益性を重視する傾向があります。
特に、大規模修繕や設備更新などの長期的な計画については、投資目的のオーナーは一時的な出費を避けたいという意向が強くなりがちです。このような利害の不一致により、マンションの適切な維持管理が妨げられる可能性があります。
また、そもそも管理規約で所有者が外部に居住している場合などは管理組合員になれないと定められているケースもあります。マンションの投資化が進んだ結果、管理組合役員のなり手が少なくなってしまい、管理不全になってしまうおそれもあるのです。
投資目的化マンションに対する専門家の見解
投資目的化するマンションの問題について、関係機関や専門家はどのような見解を示しているのでしょうか。
例にあげた晴海フラッグの件において、国土交通省は「施行者が販売に関与できないかどうかは、法律に明記されていない」と回答しており、法的な規制の枠組みが明確でない様子がうかがえます。また、販売事業社は「個別の契約内容に関わることは回答できない」としています。
法人や投資家の購入に一定の制限をかける案もありますが、専門家からは、仮に規制が設けられたとしても、親族名義を使うなどの方法で規制を回避する手段が多く、実効的な効果を期待するのは難しいという意見も出ているようです。
登記を見れば投資目的化したマンションかどうか判断できる
マンション購入を検討する際、その物件が投資目的化していないかどうかを事前に確認するためにはどうすればいいでしょう。
具体的な方法の一つが、登記情報の確認です。法務局が提供する登記情報提供サービスを利用すれば、区分所有者の属性や所有権の移転履歴などを確認できます。
特に新築の場合、区分所有者に法人名義が多い場合や、短期間での所有権移転が頻繁に行われている場合は、投資目的での購入が多い可能性が高いといえます。
中古物件の場合は、実際の居住率や賃貸に出されている部屋の割合を不動産仲介業者に確認するのも効果的でしょう。
マンション購入前には投資目的化されていないか確認を
マンションの投資目的化は、実需層の購入機会の減少、コミュニティ形成の阻害、管理組合の意思決定の複雑化など、さまざまな問題を引き起こす可能性があります。
現状では法的規制による対応は限定的であるため、購入者自身が情報収集を行うなど、投資目的化の状況把握が重要です。具体的には、購入検討段階で物件の登記情報を詳しく調査したり、管理組合の状況を確認したりするなどの対策が有効です。
マンション購入を検討する際は、単に物件の立地や設備だけでなく、所有者の構成や居住率、管理組合の運営状況なども確認すれば、将来的なトラブルを回避し、快適な住環境の確保ができるでしょう。