



大規模修繕をはじめ、管理会社への委託や設備のアップグレードなどなど、なにかとお金が必要になるマンション管理。マンションの資産価値を維持するのは重要ですが、そのためには巨額の費用がかかるため、悩みを抱える管理組合は少なくないはずです。
このような悩みに有効な手段として、マンションで収益事業を実施する方法があります。どのような方法があるのかや重要な注意点について解説していきます。
管理組合の取り組みで収益を得られる
多くの理事会では、理事会の仕事は定例会と年に1度の総会の運営だけと考えられているかもしれません。「実際に理事を経験したけど、その2つの活動しかしなかった」というケースも少なくないでしょう。
しかし、マンション管理の観点で理事会にできることは、ほかにもたくさんあります。積極的に活動するマンションでは、例えば理事会が管理組合の収入増加に向けた取り組みに力を入れている、といったところもあるようです。
多くの理事会は支出の削減に注力しがちですので、収入を増やす取り組みは珍しく思われるかもしれません。しかし、管理組合の収入が増えれば、それだけ支出のマイナスを取り戻せるので、お金が悩みの種になっている管理組合なら挑戦してみたいところ。
それでは、管理組合の収入を増やすにはどのような方法があるのかを見ていきましょう。
管理組合が収益を上げる方法
【方法1】駐車場の利用者を増やす
多くの管理組合は、区分所有者による駐車場の利用料金を収入にしています。駐車場を利用する車の台数が多ければ、それだけ多くの収入につながります。
ただし、昨今では自動車を持たない家庭も増えており、駐車場の空きが目立つようになってきたマンションも少なくないでしょう。
そこで検討したいのが、外部の利用者への駐車スペースの貸し出しです。駐車可能台数に対して区分所有者の自動車所有台数が大きく下回っていても、マンション住民以外の人に利用してもらえれば、満車にできる可能性が高まります。空いているスペースを貸し出すだけなので、新たな設備投資などが不要なのもポイントです。
駐車場利用料金は地域や場所の利便性などの要因によって左右されるので、マンションの立地に合わせた価格設定になるでしょう。高額に設定し過ぎてしまうと、当然利用者の獲得が困難になってしまいます。相場を調べる際は、まずは近隣の駐車場料金の調査からスタートしましょう。
自動車の所有率が低い地域なら、需要が増加しているカーシェアリングのステーションとして貸し出し、運営会社から賃料を得る方法もあります。
【方法2】自動販売機を設置する
マンションの敷地内に自動販売機を設置するのも収入増につながる手段です。商品の売上に応じて、運営会社からの手数料収入を得られます。
最寄りのコンビニまで行かなくてもマンション敷地内で飲み物や軽食が購入できることは非常に便利なので、住民の利便性向上にもつながります。居住者の少ないマンションではあまり手数料を得られないかもしれませんが、大規模マンションであれば効果的でしょう。
自動販売機の設置は、マンションのエントランス内に設置するパターンとマンションの住民以外も利用可能な屋外に設置するパターンの2つが考えられます。
エントランス内に設置する場合は、事前にアンケートを取って住民からの需要のある商品を調べておくと売上の増加につながるでしょう。
外部に設置する場合は、売れる商品の傾向を測定するのは難しくなりますが、利用者が多くなるため、人通りが多い立地であれば高い売上が見込めます。ただし、外部に向けて自動販売機を設置すると、商品や現金の窃盗、機体の損壊などの被害に遭う可能性なども考えられるので、自動販売機の側に防犯カメラを設置するといった対応が必要となるかもしれません。
【方法3】太陽光パネルを設置する
太陽光発電はSDGSの重要性が問われる現代社会において、注目される発電方法の1つです。屋上に太陽光パネルを設置すれば住宅でも発電ができます。
発電した電気は共用部分の電力として使えるほか、余った電気を電力会社に売電することも可能です。コストの削減と利益の獲得の両方ができるので、管理組合の収支のプラスに寄与できる可能性があります。
ただし、大きな発電量を得るためにはパネルを設置する十分なスペースが求められるので、屋上が広いマンションでなければ望む収益を見込めないかもしれません。
また、初期の設備投資に高額な費用がかかる点にも注意が必要です。太陽光発電設備の導入に対して補助金を出している自治体もあるのでその点も加味して総合的な利益を試算するなどし、メンテナンスの必要性なども含めて、導入の検討をしましょう。
【方法4】アンテナ基地局や広告を設置する
携帯電話の通信を安定させるために、携帯電話運営各社は基地局を増設したいと考えている傾向があります。そのような会社にマンションのスペースを貸し出して基地局を設置すると、使用料を得られます。
通常、基地局の設置は、業者側からマンションへ依頼されるのが基本なので、管理組合が能動的に携帯電話運営会社に働きかけるのは難しいかもしれませんが、業者から打診があった際には、管理組合内で意見を交換しながら検討しましょう。
科学的な根拠はないものの、基地局が発する電磁波による健康被害を懸念する声もあるので、住民の合意を得る際には事前に十分な説明が求められます。
また、高速道路などの交通量が多い道路に隣接するマンションでは、人目につきやすいため、広告の出稿を希望する企業もあるでしょう。高層の外壁を広告の出稿場所として貸し出せば、利用料金を得られます。ただし、マンションの外観に影響が出てしまうので、こちらも住民へ説明したうえで同意を得る必要があります。
収益は課税対象となるので要注意
管理組合で収益を得る施策を検討する際に、非常に重要となるのは、外部から収益を得る行為は「収益事業」と見なされ法人税の課税対象となる点です。そのため、得た収益の金額に応じて税金を納めなければなりません。この際、管理組合が確定申告をする必要もでてきます。
駐車場代金は利用する区分所有者も定期的に支払いますが、区分所有者だけを対象としている場合は営利目的として扱われないので、課税の対象とはなりません。しかし、外部に貸し出して継続的に収益を得る場合は事業とみなされます。
そのため収益を得る施策を検討する際には、初期コストと収益に加え、さらにどのぐらい課税され、実際にどのくらいの利益が管理組合の手元に残るのかを試算したうえで十分に検討をしましょう。税務処理を税理士に依頼する場合は、そのコストも加味しましょう。
また、収益事業を始めるためには、総会で議案にあげたうえで可決されなければなりません。
このように理事会の手間は増えてしまいますが、マンションの将来を考えると、継続的な収益を増やすことは非常に有効な行動といえます。マンションのためにできることを考えて、少しでも収益を増やす方法を考えてみてはいかがでしょう。
イラスト:大野文彰