管理組合に押し寄せる「高齢化問題」

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      日本では少子高齢化が深刻な社会問題となっています。その影響はマンション管理にも及んでいて、管理組合の高齢化に頭を悩ませているマンションが少なくないようです。

      なぜ、高齢化が管理組合にとっての課題となるのでしょうか?この記事では、高齢化が管理組合の活動にどのような影響を与えるのかと、対策方法について解説していきます。

      60歳以上のマンションの世帯主は全体の半数を超える

      マンション管理組合にとって建物の老朽化への対策は非常に重要であり、大規模修繕はマンション最大のイベントともいわれます。近年、同じぐらい重要性が高い課題といわれているのが、居住者の高齢化です。「建物の老朽化」と「居住者の高齢化」はマンションの「2つの老い」と呼ばれます。築年数が30〜40年辺りに差し掛かると、ほとんどのマンションで管理組合における高齢者の割合が増加します。

      国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では、マンション世帯主の年齢についての調査が実施されました。調査の結果、60代が27.8%、70代が25.9%と、60歳以上だけで全体の半数を超えるデータが出されています。

      令和5年度マンション総合調査

      区分所有者の高齢化が進むと、管理組合が機能不全に陥る可能性が懸念されます。高齢者が多いマンションでは、体力の衰えや健康上の理由などにより、理事会の役員就任を辞退せざるを得ない人が増加していくと考えられ、その結果、本来は輪番制で理事が交代していくはずなのに、理事の成り手が見つからず、同じ人物が何期も理事会の役員を続ける状況になってしまうかもしれません。特に30戸未満の小規模マンションは、このようなパターンに陥りやすいでしょう。

      また、高齢者役員の割合が多い理事会では、体調不良などの理由で理事会の欠席が多くなり、決めるべき事項を決められないまま、どんどん先送りにされてしまうことも考えられます。

      理事会が適切に開催できないと「清掃が行き届かず廊下が汚い」、「設備の破損や故障が放置されている」などといった事態への対応が遅れ、マンションの環境がどんどん悪化していくでしょう。総会や大規模修繕の準備といった、重要なイベントを適切に進められなくなってしまうことも考えられます。

      理事会が機能しておらず、管理が行き届いていないマンションは、市場から低く評価されて資産価値が下落してしまう懸念もあるでしょう。特に近年は、一定の基準を満たす管理計画を有するマンションを地方公共団体が認定する「マンション管理計画認定制度」が施行されたこともあり、「マンション管理」への注目が高まってきています。そのような背景を踏まえると、これからの管理組合は適正な運営をより一層目指していくべき時代といえます。

      管理組合の高齢化に有効な対策は?

      誰もがいつかは高齢者になるため、マンションに住み続ける限り管理組合の高齢化を避けるのは困難です。しかし、高齢化により理事会の活動が滞るのを避けるために、効果的な対策はあります。ここでは、2つの方法を紹介していきます。

      【対策1】理事会役員の成り手の対象を拡大させる

      理事会役員の成り手不足問題は、マンションにとって大きな痛手です。そこで検討したいのが、理事会役員に就任できる対象範囲の拡大です。多くのマンションでは、すべての区分所有者が管理組合員となり、その中から理事会の役員が選ばれる制度が採用されています。つまり、原則として理事会役員は区分所有者でなければなりません。

      しかし、管理規約を改定すれば、管理組合員以外の人物を理事会役員にすることができるようになります。例えば区分所有者の同居する親族などを役員に就任可能とすることができます。

      このように、役員になれる対象者を拡大させれば、区分所有者の多くが高齢者となったマンションであっても理事会の機能不全を防げる可能性が高まります。

      【対策2】第三者管理を利用する

      理事会の運営をマンション管理士などの外部の専門家に委託する「第三者管理」という方法もあり、マンションの高齢化や理事会の成り手不足を解決する方法として、近年注目されています。プロに依頼するので費用はかかりますが、専門家に管理を任せれば管理組合の負担が減り、管理の質の向上も期待できるでしょう。

      第三者管理の契約料金はマンションの規模や委託する内容に応じて変動しますが、月額10万円前後が目安です。契約料は管理費から捻出されるので、区分所有者が支払う管理費を値上げしなければならなくなる可能性がある点は覚えておきましょう。

      この方法を実行する場合も、【対策1】のようにマンション管理規約を変更する必要があります。

      どのマンションも高齢化は起こり得る

      人は生きている限り、誰しも年を重ねていくものです。少子高齢化が進む日本のマンションでは、住民の高齢化が進んでいくのは当然といえます。

      今はまだ管理組合が高齢化していないマンションでも、将来的に高齢化する可能性は充分考えられるでしょう。

      すでに高齢化が進んでいるマンションも、まだ高齢化していないマンションも、適切な管理ができなくなるリスクを見越して、対策を考えておくことが大切です。

      イラスト:大野文彰

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      この連載について

      【連載】

      理事会役員超入門

      マンションだからといって、購入後の管理はすべて管理会社にお任せ!というわけにはいきません。ほとんどのマンションにおいて、理事会の選考は立候補制ではなく、メンバーが入れ替わる輪番制。つまり、居住者誰もが理事会を担当する可能性が。というわけで本連載では、理事会役員になったらまず、これだけは知っておきたい!という超入門知識をご紹介。しっかり知識を身につけて、より良いマンションライフを送りましょう!
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