



「今の管理会社、本当にこのままでいいのかな?」
「管理会社の変更を検討したいけど、どんな手順で進めたらいいのかわからない……」
マンション管理組合の理事会メンバーには、上記のような疑問や悩みを抱えている方も多いでしょう。実は管理会社の変更は、決して珍しいことではありません。
国土交通省が実施した「令和5年度マンション総合調査」によると、管理会社の変更を経験したマンションは全体の24.5%にのぼります。これは約4軒に1軒の割合であり、多くのマンションが管理会社との関係を見直し、行動に移していることがわかります。
本記事では、マンション管理会社をスムーズに変更するための具体的な手順を8つのステップに分けて解説します。また、変更を検討するきっかけとなる理由や、変更することで得られるメリット・デメリットについてもご紹介します。
ご自身のマンションにとって最適な選択をするために、ぜひ参考にしてください。
参考:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」,P342
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マンション管理会社の変更手順8ステップ

マンション管理会社の変更手順は以下の8ステップです。
- 現在の管理会社の問題点を確認
- 管理会社の選定・見積もり依頼
- 管理会社の選考・決定
- 管理会社変更の総会準備
- 総会にて重要事項説明・変更の審議
- 現行の管理会社との管理委託契約を終了
- 新管理会社と管理委託契約を締結
- 新管理会社に引き継ぎ
順を追って確認していきましょう。
【ステップ1】現在の管理会社の問題点を確認
最初に、現在委託している管理会社にどのような問題があるのか、管理会社を変更したいと感じる根本的な原因を明確にすることから始めましょう。
「なんとなく不満」といった漠然とした感情ではなく、「レスポンスが遅い」「清掃が行き届いていない」「管理委託費が高い」など、具体的な問題点を洗い出すことが重要です。
居住者にアンケートを行うなどして、広く意見を募るとよいでしょう。多くの意見を集約することで、本当に解決すべき課題が浮き彫りになります。
また、その問題が「管理会社を変更することでしか解決できないことなのか?」という視点を持つことも大切です。まずは現在の管理会社に相談することで、解決できる場合もあります。
いきなり変更へと踏み切るのではなく、まずは課題の整理から始めて、どのような管理会社なら改善が期待できるかを明確にすることが、成功への第一歩です。
【ステップ2】管理会社の選定・見積もり依頼
現在の管理会社の問題点が明確になったら、新しい管理会社を探し始めます。さまざまな管理会社のホームページを確認し、問題改善に期待ができる業者を吟味しましょう。
ある程度候補が絞れたら、気になった管理会社に見積もりを依頼します。1社だけではなく、必ず複数の業者に依頼して、良かった点・悪かった点を比較しましょう。
ただし、多すぎても比較が難しくなるため、3~5社程度に絞るのがおすすめです。
また、公平に比較するためには、どの管理会社にも同じ条件で見積もり依頼することが欠かせません。サービス内容や範囲を明確にし、見積もり書のフォーマットも統一すると、後の比較検討が非常に楽になります。
管理会社の求めに応じて提出できるよう、以下の書類を準備しておきましょう。
- 現在の管理会社との管理委託契約書
- 直近の総会議事録
- マンションの図面
- 直近の点検報告書 など
管理会社が見積もりを作成するためには、マンションの現地調査をしなければなりません。理事会役員など、管理会社変更の担当者は、現地調査に立ち会うために管理会社との日程調整も必要です。
【ステップ3】管理会社の選考・決定
複数の会社から見積もりが出揃ったら、いよいよ選考です。
金額だけでなく、提案内容や担当者の対応などを総合的に判断し、2〜3社に候補を絞り込みましょう。
絞り込んだ各社には、プレゼンテーションを依頼します。このプレゼンには、実際に管理業務を行う予定の担当者にも出席してもらうのがおすすめです。資料上ではわからない、人柄やコミュニケーション能力、トラブル発生時の対応力などを直接確認できる貴重な機会となります。
最終的な決定は、理事会だけで行うのではなく、管理組合全体で意見を集約していくプロセスが不可欠です。候補会社について組合員にアンケートを取るなどして、多くの意見を取り入れながら、みんなが納得できる形で決めていきましょう。
【ステップ4】管理会社変更の総会準備
新しい管理会社の候補が決まったら、総会を開催するための準備を進めます。どうしても急いで管理会社を変更したいのであれば、臨時総会を開くという手もありますが、そうでなければ年に1度の通常総会で決議すると、手間が少なくなるでしょう。
住民主導で臨時総会を開催するためには、区分所有者数および議決権数の各5分の1以上の同意が必要です。事前に十分な説明を行い、賛同を得ておきましょう。
総会で決議するための議案書は、事前に組合員全員に配布しておく必要があります。変更の理由や新しい管理会社の提案内容、管理委託費の変動など、重要な情報をわかりやすく記載し、組合員が事前に十分に検討できる期間を設けることがポイントです。
議案書の作成は、一般的に変更前の管理会社が行います。ただし、対応に不満があるため任せるのが不安であったり、「これから契約解除するのに頼みづらい」と感じたりする場合は、新しい業者にお願いするのも手です。
【ステップ5】総会にて重要事項説明・変更の審議
総会の当日には、新しい管理会社の管理業務主任者から、管理委託契約の内容や費用について、重要事項説明が行われます。管理会社の変更によってどのようなメリットが期待できるのかを正しく理解してもらうために、十分な説明を行ってもらいましょう。
この説明の後、質疑応答を経て、変更の可否を審議します。マンション管理会社の変更は、普通決議事項とされています。規約で定められていない限り、議決に必要な定足数は半数以上、決議に必要な議決権数は議決権総数の過半数です。
なお、理事会で管理会社の変更を決めてから総会で決議されるまでにかかる期間は、3~4ヶ月程度が平均です。
【ステップ6】現行の管理会社との管理委託契約を終了
総会で新しい管理会社の承認が完了したら、現行の管理会社との契約を解約(終了)します。
一般的に、管理会社との業務委託契約中に解約する場合は、実際に解約する3ヶ月前までに通知が必要です。そのため、通知後も少なくとも3ヶ月間は、現行の管理会社への管理業務委託が継続します。
多くの管理委託契約では、解約希望日の3ヶ月前までに通知すれば、違約金なしで解約可能です。ただし、契約内容によっては解約予告期間や違約金の条件が異なる場合があるため、必ず事前に契約書をしっかり確認しましょう。
解約通知書は、確実に送付することが重要です。配達記録が残り、万が一届かなかった場合の賠償も受けられる「一般書留」で送付するとよいでしょう。
【ステップ7】新管理会社と管理委託契約を締結
現行の管理会社との解約手続きを進めると同時に、新しい管理会社と管理委託契約を締結します。
重要事項説明の内容と契約内容が相違ないか、再度丁寧に確認することが不可欠です。特に、管理業務の範囲や費用、契約期間などの重要な項目については、細部にわたるまで確認しましょう。
不明瞭な箇所がある場合はそのまま放置せずに、担当者に質問して明確にすることが重要です。不安がある内容については、契約書へ追記する形で明文化できないかも相談してみましょう。
契約内容に納得できたら、重要事項説明書に記名・押印し、その後、管理委託契約書を締結します。
なお、管理委託契約書は、国土交通省が公開している「マンション標準管理委託契約書」をベースに作成されていることが多いです。照らし合わせながら確認することで、不当な条項が含まれていないかチェックできます。
【ステップ8】新管理会社に引き継ぎ
新しい管理会社への引き継ぎは、スムーズな移行のために重要なステップです。
以下のように管理に必要なすべてのものをリストアップし、引き継ぎましょう。
- 共用部の鍵
- 通帳
- 印鑑
- 書類
- 管理会社が保管している備品
特に、鍵については本数だけでなく、実際に使用できるかどうかもその場で確認することが大切です。また、これまでの修繕履歴やトラブル事例など、口頭での情報共有も欠かせません。
理事長や理事会メンバーが立ち会い、抜け漏れがないよう丁寧にチェックしながら進めることが、引き継ぎ後のトラブル防止につながります。
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マンション管理会社を変更する理由

マンション管理会社を変更する理由は、以下の通りです。
- 管理委託費が値上げされた
- 担当者の対応がよくない
- 管理会社に不信感がある
似たような不満が自分のマンションの管理会社にも当てはまるのであれば、管理会社の変更を検討してみるとよいでしょう。
管理委託費が値上げされた
管理委託費の値上げは、管理会社変更を検討する大きなきっかけとなります。
サービス内容が変わらないにもかかわらず、管理委託費だけが一方的に値上げされた場合、多くの管理組合は不満を感じるからです。
ただし、人手不足や物価の高騰など、業界全体で費用が上がっているケースも少なくありません。その場合、管理会社を変更しても大幅な費用の削減は難しい可能性があります。
値上げの理由をしっかり確認したうえで、提示された金額が妥当かどうかを見極めることが重要です。
担当者の対応がよくない
担当者の対応に不満があることも、管理会社変更の理由としてよく挙げられます。
- 管理組合の立場に立って話を聞いてくれない
- ミスが多い
- 連絡が遅い など
日々の業務におけるコミュニケーションに不満が募ると、管理会社そのものへの不信感につながることがあります。
しかし、特定の担当者との相性が悪いだけであれば、まずは管理会社に相談して担当者を変更してもらうことで解決できる可能性もあります。
管理会社に不信感がある
担当者個人ではなく、管理会社そのものに不信感を抱くようになった場合、高い確率で管理会社変更を検討することになります。
特に管理費の着服や横領といった不正行為が発覚した場合、管理会社を変更することは必須です。
信頼関係が崩れてしまった状態では、円滑なマンション管理は成り立ちません。不信感が芽生えたら、その原因を深く掘り下げ、早急な対策を検討しましょう。
大きな問題が表面化しているわけではないものの、管理会社に漠然とした不信感がある場合は、国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」で過去の行政処分歴がないか調べてみるのも一つの手です。
マンション管理会社を変更するメリット

マンション管理会社を変更するメリットは、以下の通りです。
- 管理委託費の見直しができる
- 管理業務の質の向上が図れる
- 抱えているトラブルを解決できる可能性がある
- 居住者の当事者意識が高まる
管理会社変更には多くの労力がかかりますが、それを上回るメリットが得られる可能性があります。
管理委託費の見直しができる
管理会社を変更する最大のメリットの一つは、管理委託費を見直せることです。
複数の管理会社から相見積もりを取るため、現在の管理委託費が適正価格かどうかを客観的に判断する良い機会となります。
適正価格で契約することで、管理費の削減につながり、居住者にとっても直接的なメリットを感じやすいでしょう。
ただし、安易に費用削減を優先しすぎると、サービスの品質が低下するリスクもあるため注意が必要です。
管理業務の質の向上が図れる
新しい管理会社に変更することで、日々の清掃やメンテナンスなど、管理業務の質の向上を感じられる可能性があります。
管理会社は、競争を勝ち抜いて契約を獲得するため、質の高いサービスを提供してくれることが多いです。
また、マンションの課題解決に対して能動的に行動する姿勢を見せることで、管理会社側も緊張感を持って業務に取り組んでくれる可能性が高まります。
より良い環境を求めて行動することで、結果的にマンション全体の価値向上も期待できます。
抱えているトラブルを解決できる可能性がある
長年解決できなかったトラブルも、管理会社を変更することで一気に解決できる可能性があります。そのトラブルの解決に強みを持つ管理会社を選ぶことで、より大きな成果を得られるでしょう。
異なる視点や専門知識を持つ新しい管理会社が、これまで気づけなかった問題点を指摘し、効果的な解決策を提案してくれる場合もあります。
居住者の当事者意識が高まる
管理会社変更のプロセスに関わることで、居住者一人ひとりがマンションの問題を自分ごととして考えられるようになり、当事者意識が高まるメリットがあります。
管理会社の変更は、管理組合員全員で決めていかなければならない一大イベントです。活発な意見交換が行われ、管理組合の運営が活性化すれば、マンションの価値向上にも良い影響を与えてくれるでしょう。
マンション管理会社を変更するデメリット

マンション管理会社を変更するデメリットは、以下の通りです。
- 管理業務の質が低下する可能性がある
- 信頼していたスタッフも変わってしまう
- スムーズに引き継ぎができない可能性がある
管理業務の質が低下する可能性がある
管理会社を変更したからといって、必ずしも管理業務の質が向上するとは限りません。
特に、費用削減を優先しすぎて管理会社を選ぶと、サービスの品質も低下してしまうリスクがあります。
契約の際は、単に安さだけで判断するのではなく、サービス内容や範囲の細部まで確認することが不可欠です。
信頼していたスタッフも変わってしまう
管理会社の変更に伴い、これまで信頼して業務を任せていた管理人や清掃スタッフも入れ替わってしまう可能性があります。
長年にわたりマンションを見守り、居住者と良い関係を築いてきたスタッフがいなくなることは、少なからず不安を感じさせる要因となります。
新しい管理会社でも引き続き同じスタッフに業務を任せられる場合もありますので、希望がある場合は交渉してみるのがよいでしょう。
スムーズに引き継ぎができない可能性がある
元の管理会社から新しい管理会社への引き継ぎがうまくいかないと、さまざまなトラブルの原因となります。
共有事項の伝達漏れや、書類の紛失、備品の引き渡し忘れなど、一つでも欠けると管理業務に支障をきたす可能性があります。
チェックリストを作成するなどして、抜け漏れがないように丁寧に確認しながら進めることが重要です。
マンション管理会社の変更で失敗しないためのポイント

マンション管理会社の変更で失敗しないためのポイントは、以下の通りです。
- 管理業務の品質を重視する
- 専門家に相談する
デメリットを回避し、メリットを最大限に活かすためのポイントを押さえて、管理会社変更を成功させましょう。
管理業務の品質を重視する
管理業務の品質を重視し、サービス内容や担当者の対応などを多角的にチェックすることが大切です。
「なぜこの金額なのか?」「サービス範囲はどこまでか?」といった質問を積極的に行い、金額とサービス内容が釣り合っている管理会社かどうかを見極めましょう。
また、必要なサービスについては、元の管理会社と同等の内容・範囲で受けられるかどうかを必ず確認することもポイントです。
専門家に相談する
理事会メンバーだけでの判断に不安がある場合は、マンション管理士や不動産会社、コンサルティング会社などの専門家に相談することも一つの手です。管理会社変更のプロセスは複雑であり、多くの知識を必要とします。
しかし、コンサルティング会社の中には、安さだけを売りにした品質の低い管理会社を勧めたり、問題を大きくして不要な変更を促そうとしたりする会社も存在します。
相談相手を選ぶ際には、その会社の評判や実績をよく調べ、信頼できる専門家を見つけましょう。
管理会社変更は、管理組合が主体となって進めるべきものです。専門家はあくまでアドバイザーとして活用し、最終的な判断は管理会社主導で慎重に検討しましょう。
マンション管理会社変更のお知らせ例文

管理会社の変更を居住者に伝える際は、不満や不安を抱かせないよう、適切なタイミングでお知らせを送付することが重要です。
お知らせには以下の4つの要素を入れるようにしましょう。
- 簡単な挨拶(経緯)
- 変更日
- 新管理会社
- お問い合わせ窓口
どのように書いたらいいのかわからなければ、以下の例文を参考にしてください。
【例文】
「管理会社変更のお知らせ」
この度、日々の管理業務を委託している管理会社が、現在の○○社から△△社へ変更することとなりました。令和x年x月x日から、変更となります。
管理会社の変更についてご不明点がある方は、以下の連絡先にお問い合わせください。
- 変更日 : 令和x年x月x日
- 変更後管理会社 : △△社
- お問い合わせ : □□□-□□□-□□□
今後は、新管理会社のもと、より良い住環境の実現を目指してまいります。
皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
マンション管理会社の変更はメリット・デメリットを比較して検討しよう
マンション管理会社の変更は、労力もかかり、決して簡単なことではありません。
しかし、不満を抱えたまま現状維持するよりも、マンションの未来を見据えて一歩踏み出すことが、居住者全員の幸せにつながる可能性があります。
変更を検討する際は、この記事で解説した8つのステップや気をつけたいポイントを参考にしながら、メリット・デメリットを冷静に比較検討することが重要です。また、金額だけでなく、管理業務の品質や担当者の人柄など、多角的な視点から総合的に判断することを心がけましょう。
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