「マンション理事会役員の負担が大きいのに、無報酬なのは不公平では?」
「マンション理事会の役員報酬を導入したいけれど、相場や注意点がわからない」
マンション管理組合の中には、上記のようなお悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
マンション理事会の役員報酬は、法律上必須ではありません。しかし、役員のなり手不足や負担の偏りを解消するため、報酬制度を導入する管理組合も増えているのが現状です。
この記事では、マンション理事会の役員報酬の相場やメリット・デメリット、導入時の注意点、具体的な決め方までわかりやすく解説します。
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資料ダウンロードはこちらからマンション理事会の役員報酬の支払いは義務ではない
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マンション理事会の役員報酬は、支払う義務があるわけではありません。
マンション標準管理規約では「役員としての活動に応ずる必要経費の支払と報酬を受けることができる」と定められており、役員報酬を支払うかどうかは各管理組合の判断に委ねられています。
国土交通省の「平成30年度マンション総合調査」 によると、マンション理事会の役員報酬の支払い実態は以下の通りです。
| 状況 | 割合 |
| 報酬を支払っていない | 73.3% |
| 役員全員に報酬を支払っている | 23.1% |
| 理事長のみに報酬を支払っている | 1.1% |
全体の約7割が役員報酬を支払っていないことがわかります。
また、同調査によると、新築のマンションほど、役員報酬を支払っていない割合が高い傾向があります。
| 完成年次 | 役員報酬を支払っていない管理組合の割合 |
| 昭和44年以前 | 38.1% |
| 昭和45~49年 | 45.6% |
| 昭和50~54年 | 49.1% |
| 昭和55~59年 | 52.8% |
| 昭和60~平成元年 | 63.8% |
| 平成2~6年 | 63.0% |
| 平成7~11年 | 80.4% |
| 平成12~16年 | 85.1% |
| 平成17~21年 | 86.1% |
| 平成22~26年 | 89.3% |
| 平成27年以降 | 94.9% |
これは、築年数が浅いほど管理組合が抱える課題や業務量が少ないからといえるでしょう。
また、マンションの規模が大きくなるほど、役員報酬を支払っている管理組合の割合は増加します。
| 総戸数 | 役員報酬を支払っていない管理組合の割合 |
| 20戸以下 | 78.8% |
| 21~30戸 | 73.9% |
| 31~50戸 | 79.1% |
| 51~75戸 | 76.1% |
| 76~100戸 | 70.7% |
| 101~150戸 | 73.1% |
| 151~200戸 | 62.7% |
| 201~300戸 | 55.1% |
| 301~500戸 | 53.6% |
| 501戸以上 | 54.1% |
規模が大きい分、役員の業務負担が重くなるため、報酬で還元する方針を選ぶケースが多いと考えられます。
参照:国土交通省「マンション標準管理規約(単棟型)」,p16
参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」,p95・96
マンション理事会の役員報酬の相場
役員報酬の相場は、以下の場合で大きく異なります。
-
・役員報酬が一律の場合の相場
-
・役員報酬が一律でない場合の相場
国土交通省のデータをもとに、それぞれの傾向を紹介します。
マンション理事会役員報酬が一律の場合の相場
役員全員に同じ金額を支払っている場合、報酬額の平均は約3,900円/月です。
金額帯ごとの分布を多い順に抜き出すと、以下の通りです。
| 報酬額/月 | 割合 |
| 1,000円以下 | 30.1% |
| 1,001~2,000円以下 | 17.5% |
| 4,001~5,000円以下 | 11.7% |
実態としては平均値の約3,900円よりも、1,000円以下の少額報酬が多数派となっています。「気持ち程度に」という位置づけで設定しているケースが多いといえるでしょう。
参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」,p97
マンション理事会役員報酬が一律でない場合の相場
役職ごとに異なる金額を設定している場合、理事長の平均報酬額が最も高く、約9,500円/月です。
役職別の平均額と、最も多い金額帯をまとめると以下の通りです。
| 役職 | 平均報酬額/月 | 最も多い金額帯(割合) | 2番目に多い金額帯(割合) |
| 理事長 | 約9,500円 | 10,000円超(20.0%) | 2,001~3,000円(16.3%) |
| 理事 | 約3,900円 | 1,000円以下(31.1%) | 1,001~2,000円(15.4%) |
| 監事 | 約3,200円 | 1,000円以下(34.2%) | 1,001~2,000円(15.4%) |
理事長は責任や判断を求められる場面が多く、報酬も高めに設定される傾向があります。
一方、理事・監事は1,000円以下が最も多く、役職の重さに比例した差がついていると考えられます。
参照:国土交通省「平成30年度マンション総合調査」,p99~104
マンション理事会で役員報酬を支払うメリット

マンション理事会で役員報酬を支払うメリットは以下の通りです。
-
・理事会役員業務の負担に対する不公平感を減らせる
- ・モチベーション向上で管理の質が上がる
-
・理事のなり手不足を解消できる
それぞれ詳しくみていきましょう。
理事会役員業務の負担に対する不公平感を減らせる
役員の業務に報酬を設けることで、「ただ働きしている」という不公平感を解消できます。
理事会や組合員集会の多くは休日に開催されます。「何も得られないのに時間を割くのは納得できない」という気持ちは、ごく自然な感情です。
金銭での還元があれば、役員として費やした時間に対して正当な評価を受けられます。不公平感が薄れることで、役員の引き受けに対する心理的なハードルも下がりやすくなるでしょう。
モチベーション向上で管理の質が上がる
役員報酬が得られると分かっていれば、管理業務に前向きに取り組む姿勢が生まれやすくなります。
自発的な姿勢は責任感の醸成にもつながり、結果として管理の質が底上げされる可能性があります。管理が行き届いたマンションは、長期的な資産価値の維持・向上にも有利に働くでしょう。
報酬の金額が大きくなくても、「きちんと評価されている」という実感が、積極的な関与を引き出す一因になります。
また、立候補制を採用している管理組合では、報酬の存在が立候補するきっかけの一つになることもあります。
立候補者が増えることで、よりやる気のある人材が役員に就きやすくなり、管理運営の活性化にもつながるでしょう。
理事のなり手不足を解消できる
現在、多くの管理組合で理事会役員のなり手不足が深刻な課題となっています。
実際、国土交通省「令和5年度マンション総合調査」では、外部専門家の登用を検討している管理組合のうち、約42.3%が「役員のなり手不足」をその理由に挙げています。
報酬を設けることで就任に対する納得感が生まれ、辞退者の減少や選出の円滑化が期待できます。
結果として、特定の人への負担集中を防ぎ、管理組合運営の安定化にもつながるでしょう。
参照:国土交通省「令和5年度マンション総合調査」,p145
マンション理事会で役員報酬を支払う際の注意点

マンション理事会で役員報酬を支払う際の注意点は、以下の通りです。
-
・管理費の負担が増える
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・役員への期待が高まり、プレッシャーにつながる
-
・報酬目当ての役員が問題になる可能性がある
管理費の負担が増える
報酬はこれまでの管理費の枠内には含まれていないため、新たな支出として予算に組み込む必要がある点に注意が必要です。
管理費の増額や既存費用の見直しが必要になるケースもあるため、導入前に財務面のシミュレーションを行うとよいでしょう。
なお、毎月の予算で余った資金を役員報酬に充てる方法は認められていません。報酬は事前に規約や総会決議で定めた額を支払う形が原則です。
役員への期待が高まり、プレッシャーにつながる
「報酬をもらっているのだから」という周囲の目が、役員にとって心理的負担になる場合があります。
報酬制度を導入すると、他の組合員から「それだけの働きをして当然」という期待が寄せられることがあります。プレッシャーを感じやすい方にとっては、報酬があっても就任をためらう要因になりかねません。
また、役員以外の組合員がマンション管理を「役員に任せればよい」と捉えるようになり、当事者意識が薄れてしまう可能性もあります。
報酬目当ての役員が問題になる可能性がある
役員報酬を目的に立候補する人が現れると、業務の質に影響が出るリスクがあります。
報酬を設けることで役員になりたい人が増えるのは歓迎できる面もありますが、一方で報酬を得ることが主な目的で、積極的に業務を担う意思が乏しい人が就任してしまうケースも考えられます。
こうした問題を防ぐためには、理事会への出席回数や業務実績などの報酬の支払い条件を、あらかじめ規約に明記しておくことが有効です。
マンション理事会報酬の決め方・導入ステップ

マンション理事会報酬の導入ステップは、以下の通りです。
【ステップ1】理事会内で導入の必要性を議論する
まず理事会内で「なぜ報酬が必要か」を整理し、導入の目的と解決したい課題を明確にします。
なり手不足、業務負担の偏り、役員の定着率の低さなど、導入の理由を言語化しておくことが重要です。
同時に、コスト増や運用上のリスクといった反対意見も想定し、メリット・デメリットを整理した上で議論を進めましょう。
目的が曖昧なまま進めると、組合員への説明や総会での承認が難しくなります。
【ステップ2】報酬額と支給ルールの案を作成する
支給金額・支給方法・支給タイミングを具体的に定め、管理規約に反映する条文案を作成します。
規約への記載例は以下の通りです。
ーーーーーーーーー
第○条 役員は、役員としての活動に応ずる以下の報酬の支払いを受けることができる。
役員報酬(年額)
理事長 ○○○○円
副理事長 ○○○○円
会計 ○○○○円
理事 ○○○○円
監事 ○○○○円
ーーーーーーーーー
支給タイミングは「毎月払い」か「年1回払い」のいずれかが一般的です。
振込・手渡しなどの支給方法とあわせて、事前にルールを明確にしておきましょう。
【ステップ3】組合員への説明を行う
支給額・支払方法が決まったら、役員以外の組合員に対して丁寧な説明を行います。
管理組合の運営はすべての組合員に関わることです。「なぜ報酬が必要なのか」「どのように費用を賄うのか」「期待できる効果は何か」を誠実に説明し、理解を得ることが欠かせません。
メリットだけでなく、コスト面やリスクも含めて正直に伝えることで、後々のトラブルを防げるでしょう。
【ステップ4】総会で提案・承認を得る
作成した報酬案を総会の議案として提出し、承認を得ます。ただし、必要な決議の種類は管理規約の状態によって異なります。
管理規約に役員報酬に関する条文がない場合は、まず規約を変更するための特別決議が必要です。
一方、すでに「報酬を支払うことができる」旨の条文が規約に盛り込まれている場合は、金額・支払方法を定めるために普通決議を行います。
総会では、導入の目的・金額の根拠・他マンションの事例との比較など、組合員が判断しやすい情報をわかりやすく提示することが重要です。
十分な資料の準備と丁寧な説明を心がけ、スムーズな承認を目指しましょう。
マンション理事会の役員報酬にかかる税金の注意点

役員報酬は原則として課税対象であり、管理組合には源泉徴収義務が発生する場合がある点に注意しましょう。
報酬が給与所得やその他の源泉徴収対象となる報酬に該当する場合、管理組合が源泉徴収義務者となります。
その場合、源泉徴収を適切に行っていないと、後日税務署から是正を求められ、過去分に遡って源泉所得税と延滞税を支払わなければならなくなるリスクがあります。
また、役員報酬を受け取った理事会役員側も、確定申告が必要になるケースがあることを覚えておきましょう。
ただし、給与所得者であれば、役員報酬を含む副収入の合計が年間20万円以下の場合には、確定申告は不要です。
いずれにしろ、税務上の取り扱いは状況によって異なるため、税理士などの専門家に事前に相談しておくことが最も確実です。
いざトラブルが起きてから「知らなかった」では済まされないため、導入前のタイミングで専門家に確認することをおすすめします。
マンション理事会の報酬制度を正しく理解し、納得できる運営を目指そう

マンション理事会の役員報酬は義務ではありませんが、理事会役員の負担軽減や、なり手不足対策として導入されるケースも増えています。
役員報酬の導入には大きなメリットがある一方で、管理費負担の増加や役員へのプレッシャーなど、デメリットも存在します。
そのため、メリット・デメリットを整理したうえで、自分たちのマンションに必要かどうかを慎重に検討することが大切です。
また、導入時には組合員への丁寧な説明や、管理規約・税務面への配慮も欠かせません。組合員全体が納得できる形で制度設計を進めて、よりよい理事会運営を目指しましょう。
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