マンション管理において、外国人オーナーとの円滑な合意形成とトラブル防止は、資産価値を左右する新たな課題です。
都心部を中心に特定エリアでの所有比率が高まるなか、管理費滞納を含めた支払いトラブルや、言語や生活習慣の違いに起因した規約違反への備えが求められます。
本記事では、国内管理人の選任や管理規約の多言語対応、専門家との連携など、外国人オーナーと共生しながら健全な運営を維持するための具体的な対策を詳しく解説します。
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2025年の国土交通省の調査によると、外国人による日本の不動産購入は増加傾向にあるものの、全国的には限定的で買い占めといえる規模ではありません。国外居住者による新築マンションの購入割合は、東京圏全体で1.9%、東京23区で3.5%程度に留まります。
しかし、都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)に絞ると7.5%まで上昇し、特定エリアへの集中が顕著です。大阪圏や京都でも増加傾向ではありますが、都心6区と比較すると緩やかな変化に留まっています。データを見ると、外国人によるマンション購入が市場全体に影響を与えているとはいえません。
ただし、近代の国際化が進む世界をみていると、今後外国人オーナーが増加していかないとは言い難いでしょう。外国人の区分所有者がいる場合、言語の壁や習慣の違いから管理運営や修繕などの合意形成に影響が出る可能性があります。今後は、各マンションで外国人オーナーを想定した運営が必要です。

管理組合が直面しやすい外国人オーナーとのトラブルや問題点
海外に国籍があるマンションオーナーを迎える際に、起こりやすいトラブルを把握しておきましょう。
外国人オーナーを取り巻くトラブルでありがちなのは、言語や慣習の違いから規約の周知が十分にできず、生活ルールが守られない等の課題です。また、日本の銀行口座を持っていないなどの事情で支払いがうまくできず、管理費等の滞納が長引くなど、金銭トラブルに発展する場合もあります。
他にも、オーナーが長期間海外に滞在し住戸を留守にした結果、専有部の管理が不足するケースにも注意が必要です。
ここからは、外国人オーナーを迎えるにあたって管理組合が備えるべき事態と、対策のポイントを解説します。
コミュニケーションとルール理解の壁

外国人オーナーの言語レベルによっては、日本独自のルールや管理規約が十分理解されず、オーナー側が悪意無く規約の違反をしたり、マンション管理に無関心になったりする事態が想定されます。
例えば、会話はスムーズでも漢字の読み書きに不安を感じる外国人オーナーは多く、日本語のみが書かれた文書では細かな情報の伝達が困難です。ルール理解が不十分だと、ゴミ出しや騒音などの生活トラブルを招くほか、総会の不参加や委任状の未提出といった形で管理組合の意思決定にも影響します。
マンションの維持管理に関わる情報を周知する際は、多言語化対応や視覚的な案内の導入といった、お互いの理解を深めるための歩み寄りと仕組み作りが、マンションの資産価値を維持する上でも不可欠です。
管理費・修繕積立金の滞納リスク
外国人オーナーが増えるなか、日本の銀行口座を保有していないといった事情や送金方法の制約により、管理費・修繕積立金の未払いが長引きやすくなっています。
そもそも海外では、マンションの管理費や修繕積立金の仕組み自体がない国も珍しくありません。こうした日本独自の仕組みを外国人オーナーが把握しておらず、支払う準備ができていないケースも見受けられます。
また、その他の滞納の原因として考えられるのが、海外在住オーナーによる送金の手間や手数料負担の大きさです。滞納分を納めてもらう際も、督促状が海外まで届きにくい、オーナーが在住している国との国交がない、といった理由から最悪の場合回収を断念する事態もあり得ます。
一度未払いが発生すれば、国をまたいだ対応には多大な時間とコストを要し、管理組合の負担は増大するばかりです。また、期限通りに支払う所有者との間に不公平感が生まれ、コミュニティ全体の雰囲気が悪化する懸念もあります。
専有部の管理不全
オーナーが海外在住で、住戸を長期不在にしていると、専有部の管理にまつわる課題が生じやすくなります。
実際に居住しているのが誰なのか、他の所有者たちもぼんやりとしか把握出来なくなるため、無断での部屋の貸し借りや規約違反の利用が発覚しにくくなる傾向があります。
想定されるトラブルとしては、オーナーが住居以外の利用を禁じる規約を十分に理解しておらず、独自の判断で民泊として使用してしまうといったケースもあり得ます。
その他の懸念事項としては、オーナーが住戸を離れているために、漏水や火災時の緊急対応ができない懸念があります。こうした課題は、建物全体のセキュリティや住環境の悪化に直結するため、管理体制やルールの整備が不可欠です。
外国人オーナーとのトラブルを防ぐために管理組合が取るべき対策

外国人オーナーとのトラブルを未然に防ぐために、管理組合としてできる対策を確認しましょう。
管理組合の負担を軽減するためには、国内管理人の設定や多言語対応、管理規約の見直し、専門家との連携など、日頃の備えが重要です。
外国人オーナーを迎えるに当たり、受け入れ体制を整えておくと、さまざまなリスクに対応しやすくなります。
国内における代理人の連絡先を明確にする
海外に住所があるオーナーや、住戸を留守にしがちなオーナーは、緊急時に連絡が取れない可能性があります。こうした状況を防ぐため、国内在住の代理人を選任し、連絡先をあらかじめ届け出るルールの徹底が推奨されます。
代理人は不動産会社など、日常的に対応可能な窓口を想定し、緊急時や管理費滞納時にも速やかに連絡・対応が取れる体制を整えましょう。
さらに、代理人の役割や責任範囲を明確にしておくと、対応の遅れや認識のずれを防げます。
事前にトラブル防止が目的の取り決めをしておけば、管理組合の負担軽減につながります。変化に合わせた、積極的な運営方針のアップデートが重要です。
多言語対応を徹底する
多言語対応の徹底は、外国人オーナーに管理への理解と参加を促すうえで重要です。
日本語中心の情報発信では、規約や運用ルールが十分に伝わらず、結果として意思疎通の不足や対応の遅れにつながるおそれがあります。そこで、管理規約や各種案内、連絡事項などを多言語で整備する必要があります。
多言語対応というと負担に感じる方も多いかもしれませんが、翻訳ソフトを使って日本語の資料を翻訳したり、自治体が整備している外国人向けの資料を活用すれば思っているよりも簡単に多言語対応が叶います。
あわせて、管理組合アプリやオンライン総会など、デジタル化を進めれば、海外からでも情報が把握しやすくなり、参加のハードルが下がります。
また、情報伝達の際には、文章だけでなくピクトグラムや図解を取り入れると、言語に依存しない情報伝達が可能です。管理組合側の工夫で、外国人オーナーの主体的な関与を引き出していきましょう。
管理規約を時代に合わせてアップデートする
マンション管理の基本となる管理規約は、外国人の増加といった社会の変化に対応する必要があります。法改正や民泊の普及など社会の常識が変化すると、従来の規約のままでは実態に合わなくなる場合もあるため、適切なアップデートが必要です。
規約を見直せば、共有部の使い方などマンション管理の実務に直結する事項を明文化でき、日常の管理運営が円滑になります。
また、民泊の可否や管理費滞納への対応など、オーナーや管理組合が判断に迷いやすい場面でも明確な基準として機能するため、マンションの管理組合とオーナー双方の負担を軽減できます。
さらに、規約が整備されると、その場の理事個人による価値観に依存した意思決定を避けられるので、組織として一貫した対応が可能です。
専門家と連携し、アドバイスを仰ぐ
マンション管理の課題は管理組合だけで抱え込まず、専門家の知見を活用するとスムーズな解決が見込めます。
例えば、マンション管理の専門家であるマンション管理士には、外国人オーナーがいるマンションに合った管理規約や維持管理の方法を相談可能です。
また、金銭的なトラブルが起こった際には、弁護士に相談して滞納対応や規約違反への法的措置におけるリスクを把握できるでしょう。このように専門家に関与してもらうと、規約改正やトラブル対応の判断に明確な根拠を持てるので、理事会の負担軽減にもつながります。
また、将来的な問題を未然に防ぐために、継続的に助言を受けるのも有効です。
積極的にコミュニケーションを図る
外国人オーナーのいるマンションでは、こまめなコミュニケーションが、情報の行き違いを防ぐうえで特に重要です。
一方的な通知だけでは十分に意図が伝わらない場合でも、繰り返しやり取りすれば理解が深まります。居住者同士が顔見知りになると、信頼関係が生まれるため、トラブルの抑止力にもなります。
また、他の所有者との交流が増えると、外国人オーナーの総会への参加や意思表示の増加が期待できます。日頃の挨拶や簡単な声がけの積み重ねが、トラブルの無いマンション管理に有効です。
外国人オーナーとの問題点を解消して、全員が住みよい環境を整えよう
外国人オーナーの増加は首都圏に集中しており、市場全体への影響は限定的であるものの、マンション単位では管理や合意形成に影響が生じやすくなります。トラブルの多くは悪意ではなく、言語や慣習の違いによるすれ違いから生じています。
また、緊急時の連絡先が不明であったり、オーナーの不在状態が続いたりすると、管理費滞納や専有部の管理不全が深刻化しやすい点にも注意が必要です。
トラブルを未然に防ぐために、国内連絡先の明確化や多言語対応、管理規約の見直しなど、仕組みで対応する体制を整える必要があります。外国人オーナーを排除するのではなく、適切に関係性を築きながら、安心できる管理運営を目指しましょう。
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