マンション総会の成立要件は?普通決議と特別決議の違いも解説

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      マンション総会は、議決権総数の過半数以上で成立します。議案は普通決議と特別決議のいずれかで扱われ、必要な賛成数や重要度が異なります。今回は成立要件や決議方法の違いについて詳しく見ていきましょう。

      マンション総会の役割とは?

      マンション総会とは、管理組合における最高意思決定機関であり、建物の収支予算や今後の運営方針などの重要事項を区分所有者が集合して決定する場です。区分所有法(34条1項)では、総会を年1回以上開催することが義務付けられており、これを「通常総会」と呼びます。
      一方、急に対応が必要となる議案や特別な案件が生じた場合には、「臨時総会」が開かれます。

      日常的な運営や実務は理事会が担いますが、理事会で決められる範囲には限りがあり、すべての事項を決定できるわけではありません。最終的な承認や重要な判断は総会で行われるため、マンション管理において欠かせない重要な役割を持つ場といえるでしょう。

      マンション総会の成立要件とは?何人いれば成立する?

      総会の成立要件とは、総会を有効に成立させるために必要となる条件を指します。標準管理規約では、総会を成立させるには議決権総数の半数以上を有する組合員の出席が成立要件となっており、出席とみなされる方法は次のとおりです。

      • 本人が会場に参加する
      • 委任状を提出し、代理人に出席を任せる
      • 議決権行使書を提出し、事前に賛否を示しておく

      総会の成立要件は2026年4月の区分所有法改正によって変更される点も押さえておきましょう。現行の「議決権総数の半数以上を有する組合員の出席」が、改正後は「区分所有者及び議決権の各過半数」が成立要件に変更されます。

      開会時には、議長がこれらの文書を含めて出席数を集計し、管理規約で定める定足数に達しているかを確認します。定足数を満たしていれば総会は有効に成立し、その後の議決に正式な効力を持つ扱いとなります。

      近年は、直接の参加が難しい区分所有者にも対応できるよう、オンライン参加や電子投票を導入する管理組合もあります。

      マンション総会の成立要件を満たさない場合にはどうなる?

      総会が成立要件を満たしていない場合、つまり出席数が不足していると、総会は開催できなくなり議案の審議や決議を進められません。年に一回の総会開催は法律で義務付けられているため、不成立となった場合はあらためて総会を招集する「再開催(再総会)」を行う必要があります。また、定足数を満たさないまま開催すると、後日「決議無効」の請求を受ける可能性があり、トラブルに発展するおそれがあるため注意しましょう。

      マンション総会の出席率

      国土交通省が公表した「令和5年度マンション総合調査」によると、委任状や議決権行使書の提出者を含めた通常総会の出席率は平均88.5%と高い水準となっています。一方で、実際に会場へ出席した区分所有者のみを対象とした出席率は平均24.6%にとどまり、多くの所有者が委任状や議決権行使書を活用して参加していることがわかります。

      この結果から、総会への関与は高いものの「直接出席せずに書類で参加する」ケースが一般的になっていると言えるでしょう。とはいえ、直接参加することで住民同士の交流が生まれたり、資料だけでは分からない情報を得られたりするメリットもあります。より積極的な参加を促すには、参加しやすい環境づくりが欠かせません。

      総会の決議には「普通決議」と「特別決議」の2種類がある

      マンション総会で扱われる議案は、「普通決議」または「特別決議」のいずれかで議決されます。どちらも総会を成立させるための成立要件は同じですが、議案を可決するための決議要件(必要な賛成割合)が異なる点が特徴です。重要性の高い案件は特別決議が求められ、普通決議より厳しい基準が設定される仕組み。どちらの決議方法が選ばれるのかは区分所有法によって定められています。それぞれの内容を順に確認していきましょう。

      一般的な議題なら「普通決議」

      普通決議の可決には、総会に出席した区分所有者の議決権の過半数の賛成が必要です。最も頻繁に用いられる決議方法で、日常的な管理や運営に関わる幅広い議題を扱います。管理組合の体制づくりや予算の承認など、生活環境に直結する内容を決定するために欠かせない仕組みといえるでしょう。普通決議が必要となる主な議題は以下のとおりです。

      • 役員選任
        次期役員の選任(理事や監事など)
      • 予算・決算承認
        前年度の会計報告(管理費会計や修繕積立金会計などの収支決算)、収支予算案と事業計画案の承認
      • 管理規約に基づく日常的な事項
        管理組合の活動報告、使用細則の改訂(制定・変更・廃止)などの運営ルールに関する内容

      重要な事項は承認条件の厳しい「特別決議」

      特別決議の可決には、総会に出席した区分所有者総数及び議決権総数の4分の3以上の賛成が必要です。「普通決議」よりも厳しい条件が定められており、マンションの構造や運営にかかわる重大事項を決める際に用いられます。資産価値や住環境に深く影響するため、高い賛成割合が求められる方法です。主な対象議題は次のとおりです。

      • 管理規約の変更
        管理規定の改定、管理組合法人の設立及び解散など
      • 共用部分の変更
        敷地や共用部分の形状や効用の著しい変更(機械式駐車場を平面式へ変更するなど)
      • 専有部分に関する制限
        専有部分の使用禁止・引渡し請求、区分所有権の競売請求など
      • 大規模滅失時の建物復旧
        建物価格の2分の1を超える滅失が生じた場合の共用部分の復旧
      • 建物の建替え
        建物の建替え決議(※組合員総数・議決権総数の5分の4以上の参加が必要)

      マンション総会を確実に成立させるための5つのポイント

      マンション総会を確実に成立させるためには、多くの区分所有者に参加してもらう工夫が欠かせません。参加率を高めて議案の審議や意思決定を円滑に進めるためにも以下の5つのポイントをおさえておきましょう。

      • 参加しやすい日程でスケジュールを組む
      • 複数の手段で開催案内を周知する
      • 出欠通知書提出の締切を早めに設定する
      • 資料を早めに配布する
      • 出席者に特典を用意する

      ここからは、それぞれについて詳しく解説します。

      ポイント1:参加しやすい日程でスケジュールを組む

      マンション総会の出席率を高めるためには、できるだけ多くの区分所有者が参加しやすい日程設定が欠かせません。一般的に、平日よりも土日のほうが仕事の都合で来られない人が少なく、出席を確保しやすい傾向があります。土日であっても、午前中から昼頃までなど、他の予定と重複を避けやすい時間帯を選ぶとさらに効果的です。

      また、地域の行事や、近隣の幼稚園・学校の行事と重ならないよう配慮しましょう。とくにファミリー層が多いマンションでは、学校行事と重なるだけで出席率が大きく下がる可能性があります。

      さらに、総会そのものに足を運びやすくするために、懇親会やファミリーイベントと組み合わせて開催するのも有効な方法のひとつ。参加のハードルが下がり、住民同士の交流促進にもつながります。

      議案書などを作成する前に、まずは日程だけ先に決めて早めに案内しておくのも良いでしょう。予定を立てやすくなり、出席率向上に役立ちます。

      ポイント2:複数の手段で開催案内を周知する

      総会の出席率を高めるためには、開催案内をわかりやすく、複数の手段で周知することが重要です。各戸への文書配布に加え、エントランスの掲示板や館内放送、マンション内のメール配信やLINEなど、住民が日常的に目にしやすい媒体を活用して案内の見落としを防ぎます。

      また、案内文には「出席できない場合でも、委任状や議決権行使書を提出すれば出席扱いになる」ことを明記し、提出を促す工夫も有効です。さらに、定足数を満たさなかった場合の問題点を丁寧に伝えておくと、自分事として捉えられるようになり、参加意識の向上につながります。総会が近づいたタイミングで再度のお知らせを行えば、参加率アップが期待できるでしょう。

      ポイント3:出欠通知書提出の締切を早めに設定する

      出欠通知書や委任状・議決権行使書の締切を早めに設定することは、総会の成立を確実にするために欠かせない取り組みです。早い段階で提出状況を把握できれば、未提出者へ個別に提出を依頼したり、出席を呼びかけたりするなど、必要なフォローが行いやすくなります。定足数を満たす見込みを事前に確認でき、当日の成立可否に振り回される事態を避けられる点も大きなメリット。

      特に大規模マンションでは提出の回収に時間がかかる場合も多く、前倒しの管理が重要になります。成立見込みが立たないまま当日を迎えると、不成立となり再総会が必要になる可能性も。締切の前倒しは、こうした再開催リスクを減らす効果的な方法です。

      ポイント4:資料を早めに配布する

      総会資料は、できるだけ早めに配布し、じっくり内容に目を通してもらえるようにしましょう。事前に読む時間が確保できれば、議案への理解が深まり、総会への関心や参加意欲の向上にもつながります。また、資料は専門用語を避け、誰が読んでも理解しやすい言葉でまとめることが大切です。図やグラフ、写真など視覚的な情報を取り入れると内容が伝わりやすく、議案の背景や必要性も共有しやすくなります。

      総会に興味はあっても、「雰囲気がつかめない」「質問しづらい」と不安を感じる居住者も少なくありません。そういった人が参加しやすいよう、総会の進行の流れや決議の仕組みを簡潔にまとめた案内資料を合わせて配布するのも有効な方法です。

      ポイント5:出席者に特典を用意する

      総会への参加を促す方法として、出席者にお弁当やお菓子、防災グッズなどの特典を用意する取り組みがあります。ちょっとしたプレゼントがあるだけでも「行ってみようかな」と思えるきっかけになり、参加率向上に役立ちます。

      ただし、特典そのものが目的化したり、参加できない人に不公平感が生まれたりする可能性もあるため注意が必要です。内容や金額は控えめにし、あくまで参加を後押しする補助的な工夫として取り入れましょう。

      マンション総会の成立要件を確実に満たし、トラブルのない運営を

      マンション総会は年に1回以上の開催が義務付けられており、成立させるには議決権総数の半数以上の出席が必要です。議案は「普通決議」と「特別決議」の2つの方法があり、扱う内容の重要度によって選択され、必要な賛成割合が異なります。

      こうした成立要件を確実に満たし、議案の審議を円滑に進めるためには、事前の準備と工夫が欠かせません。参加しやすいスケジュールの設定や開催案内の周知方法を工夫するといった取り組みは、参加率向上に大きく影響します。住民が参加しやすい環境づくりこそが、総会の円滑な運営と合意形成を支え、結果としてマンション全体の暮らしやすさを守る基盤となるはずです。

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