マンションの購入には高額な費用がかかるものですが、それで終わりではありません。物件購入後も定期的にマンション管理のための維持費や税金、保険にお金がかかります。これらの支払いは、仕事をリタイアして収入が年金だけに限られる老後になると、家計にとって大きな負担となるかもしれません。
マンション暮らしで必要な維持費には、どのような種類があり、それぞれどのくらいの金額が目安なのかを知っておきましょう。
老後はマンションの維持費が負担になる?

マンションの区分所有者は、マンションを管理するための維持費を支払う必要があります。この金額はマンションの規模や導入されている設備、立地条件などの要素によって変動しますが、管理費と修繕積立金を合わせて月額にして概ね4万円程度が相場とされています。
なかなか高額なため、老後を迎えて年金暮らしをしている状況の方には大きな負担です。
厚生労働省による「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」では、2023年の高齢者世帯の1世帯あたりの年間平均所得は314.8万円で、月額にして約26万円という計算になります。維持費を支払った後に残るお金は、1世帯あたり約19万円〜22万円です。まだ、住宅ローンの支払いが残っている世帯の場合、自由に使えるお金はさらに少なくなるので、多少生活を切り詰める必要が出てくるかもしれません。
マンション維持費の内訳
維持費として支払いが必要な項目を表で確認してみましょう。それぞれ金額だけでなく、支払いの頻度にも違いがあります。

ここからは各費用の詳細を見ていきましょう。
管理費
管理費はマンション共用部分の清掃や点検のための費用です。管理会社に支払う「管理委託費」やエレベーターや給水設備などの点検や修理にかかる「設備管理費」、「水道光熱費」や「火災保険料」といった項目に分類されます。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では、1戸あたりの管理費の平均額は1万7103円/月とされており、この金額が管理費の目安です。
ただし、マンションの規模や管理会社に委託する業務の範囲などの要素に応じて、金額は大きく変わってくるので、マンションの状況によっては必ずしも相場に当てはまるとは限らない点に注意しましょう。
修繕積立金
修繕積立金はマンションの大規模修繕工事費用のために、区分所有者が毎月積み立てる資金です。大規模修繕の工事費用は数千万円以上かかるのは当たり前で、大規模マンションになると億単位の費用がかかる場合もあり、非常に高額となります。そのため、毎月積み立てる金額も安くはありません。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、1戸あたり13,378円/月が修繕積立金の目安金額だとされています、しかし、管理費同様にマンションの規模や築年数などの状況に応じて金額が大きく変動するため、どのマンションにも当てはまるものではありません。
マンションの築年数が古くなっていくと、劣化が進んで修繕の対象となる箇所が増え、大がかりな工事が必要になっていくため、長く住んでいると月々に支払う金額も増えていく傾向にある点にも注意しましょう。
駐車場・駐輪場代
駐車場を利用している区分所有者は、駐車場の利用料金も毎月かかります。駐車場の利用料金は、地域によって大きく上下する費用です。地方であれば1ヵ月数千円程度で利用できるマンションが多い一方で、東京や大阪などの都市部では月額数万円に設定されているところもあるでしょう。
また、駐車場のタイプによっても維持費は変わってきます。地面に直接車を駐車する平置駐車場タイプであれば、管理の手間が少ないため維持費はそれほどかかりません。一方で、メンテナンスに高額な費用がかかる機械式駐車場は、区分所有者にとって負担が大きいタイプです。そのようなマンションでは区分所有者の負担を減らすために、維持費が高額な機械式駐車場を解体して平面化させるケースもあるようです。
利用者が支払う駐車場の利用料金は管理組合の収入となります。しかし、近年ではカーシェアリングのようなサービスを利用する層が増えてきたなどの理由から、自動車を持たない世帯が増えており、マンション駐車場に空車の増加が見られるようになってきました。特に、そのような傾向が顕著な都市部では、駐車場料金の収入減少に悩む管理組合が多いようです。
自転車を停める駐輪場の利用料金は、1台あたり月額数百円程度が目安となります。
固定資産税・都市計画税

維持費には税金も含まれます。物件を所有していると「固定資産税」や「都市計画税」が課せられます。
固定資産税は物件の所有者に課せられる税金です。「固定資産税評価額×1.4%」の計算式で金額が決まります。
都市計画税は、住宅や商店、事業所などが密集して市街を形成していると認められる地域、または今後10年を目途に市街化計画が進められる区域内に所在する、土地と家屋を対象に課せられる税金です。金額は「固定資産税評価額×0.3%」で求められます。
物件の所有者には年に1回のペースで納税通知書が送られてきますが、支払方式は一括か分割かを選択可能です。
この2つの税金は、戸建て住宅を所有している人にも課せられるもので、物件を所有している人は納付を避けられません。
火災保険・地震保険
マンションの火災保険は共用部分と専有部分で加入者が分かれます。
共用部分は管理組合が加入者となりますが、専有部分の火災保険は区分所有者が加入しなければなりません。
加入は義務ではありませんが、住宅ローンへの申込み条件に含まれているケースが多く、ローンを組むために加入した区分所有者もいるでしょう。
火災保険とセットで地震保険に加入する人も多くいます。2025年度に財務省が公表した資料「地震保険の加⼊促進について」によると、2023年度のマンション専有部分の地震保険加入率は74.4%でした。
火災保険と地震保険の両方に加入する場合、年間の保険料は15,000~30,000円が相場です。支払いの方式は、月払い、年払い、複数年分をまとめて支払う一括払いがあります。
マンションの維持費と築年数の関係

前述の通り、マンションは築年数を重ねるごとに大規模修繕でかかる費用が高額になっていくため、区分所有者が支払う維持費の負担額も将来的に増額される傾向にあります。
増額して維持費の負担が深刻化すると、支払いを滞納する区分所有者が出てくる可能性が考えられるでしょう。
国土交通省が2022年から開催している「今後のマンション政策のあり方に関する検討会」のとりまとめ資料には、「現在の修繕積立金の残高が計画に対して不足している」と回答したマンションの割合は調査対象全体の約1/3であったと記載されています。このデータから、修繕積立金不足の課題を抱えるマンションは決して少ないといえるでしょう。
マンションと戸建ての維持費を比較
戸建て住宅の場合は、上述の管理費や修繕積立金などの維持費がかからないため、マンションのほうが維持費が高額になる傾向です。
ただし、修繕積立金のように毎月支払い義務が発生する方式でなくても、戸建もマンション同様に時間の経過と共に劣化が進行し、いつかは修繕が必要になります。そのため、戸建ての家主もいつか必要になる修繕工事に向けて、資金を蓄えておかなければならないのは変わりません。自由度が高いのは戸建てですが、その分、計画的な貯蓄などの自己責任が伴うのも戸建てです。
どちらが適しているかは、人それぞれのライフスタイルによって異なるでしょう。
老後のマンション維持費が支払えないとどうなる?

マンションの維持費は、時間が経過するほど高額になっていく可能性が高いとわかりました。老後に修繕積立金が大幅に値上がりしてしまうと、維持費を払い続けられなくなるかもしれません。
しかし、管理費や修繕積立金の滞納を繰り返すと、訴訟や差し押さえなど最悪の状況の発生も考えられます。
もし、そのような場合になった時の、一連の流れを紹介していきます。
理事会内で情報が共有される
多くの管理組合で、管理費や修繕積立金の管理は管理会社が請け負っています。滞納がある場合は、管理会社からマンション理事会へ報告がいき、理事会のメンバーに共有されます。
ゆくゆくは総会の管理費、修繕積立金の滞納状況の報告で住民に知られることになります。
催促がくる
当然それだけではすみません。必要なお金を支払わなければ管理組合としては、何らかの対処をしなければならなくなります。
一般的に、まずは管理会社から確認と催促の連絡がきます。それでも支払わないままでいると、催促状が送られてくるでしょう。
固定資産税や都市計画税を滞納している場合は、居住する地域の自治体から催促状が送られてきます。
遅延損害金が発生する
滞納していると、支払いが滞っている金額に加えて延滞金や遅延損害金を課せられるかもしれません。
遅延損害金はマンション管理規約に定められた年利が課せられるので、マンションごとに利率は異なりますが、上限は年率14.6%となっています。
管理規約に延滞金の定めがない場合であっても、民法の法定利率に則って年3%が適用可能です。
固定資産税や都市計画税の未納にも延滞金があり、税率は年度ごと、自治体ごとに異なります。
訴訟や差し押さえに発展する
催促がきても支払わない場合は、訴訟を起こされる場合があります。
敗訴すると、給与や預金が差し押さえられる場合や、さらにはマンションの住戸を競売にかけられる可能性もあります。ここまでの事態に至らないためにも、催促が来たら早急に対応するべきと覚えておきましょう。
また、固定資産税や都市計画税の未納の場合も、催促状が届いたうえで未納のまま放置していると、住戸を競売にかけられてしまう可能性があります。
老後にマンション維持費の支払いが困難なときの対処法
十分な蓄えがなく、年金生活しているタイミングで維持費の大幅な値上げがあると、支払えなくなってしまうのは無理もありません。
そんな滞納を余儀なくされるような状況下において、どのような対応方法が考えられるのか考えてみましょう。
管理費や税金以外の支出を見直す
本当に滞納するしかないのかを確認するために、まずは家計の整理をしてみましょう。
日々の生活の無駄な出費を削減していけば、塵も積もれば山となるで、生活資金にゆとりが生まれ維持費を支払えるかもしれません。
火災保険などは、不要な保証内容が含まれる高額なプランに加入しているかもしれないので、見直し必須です。
自動車を売却するとお金が入るうえに、月々の駐車場料金もかからなくなります。あまり利用する機会がないのであれば、売却を検討してみましょう。
住宅ローンの返済が残っている場合は、より好条件の金融機関への借り換えをすると月々の負担を軽減できるかもしれません。
マンションの売却を検討する
家計の支出を整理しても、どうしても支払えない場合は思い切ってマンションを売却するのも一つの手です。
ただし、売却前に移り住む場所をしっかり確保しておかなければなりません。新生活の貴重な資金源となるので、マンションを売った場合に、手元にいくら入るのかをできるだけ正確に試算しておきましょう。
マンションを売って、新しく戸建てに住むなら、もう管理費や修繕積立金に悩まされずに過ごせるでしょう。ただし、代わりに管理してくれる管理組合のような仕組みはないので、建物に不備があれば自ら対処しなければなりません。
賃貸という選択もありです。自分の年齢やマンションを売却して得られるお金を加味しつつ、持ち家の維持費と賃料のどちらが安上がりになるのかが重要な判断ポイントとなります。
マンション維持費は増額する、ということを考慮して老後に備えよう
老後に年金生活となると、マンションの維持費の支払いに苦労するかもしれません。特に修繕積立金が一気に増額されるなどの状況になると、滞納せざるを得ないことに陥ってしまう可能性も考えられます。
しかしながら、滞納が続くと訴訟や差し押さえ、住戸を競売にかけられる可能性も出てきます。滞納せずにいられるようにするには日ごろからの家計管理の工夫が大切になります。
どうしても無理な場合は、マンションを賃貸に回すか、売却して別の場所に移り住むという選択肢も検討することになるでしょう。
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