マンション理事会の役員に選ばれると、任期中は理事会への出席や理事の役割ごとの業務対応が求められます。管理組合であれば輪番制で回ってくる義務であると認識していても、このような対応を負担に感じる人は少なくありません。
この記事では、そのような負担を和らげて、理事としての活動のモチベーションアップにつながる、理事への報酬について考えていきます。
理事に報酬って必要なの?

ほとんどのマンション管理組合では、理事は区分所有者の中から持ち回りで選任され、任期を終えるとまた別の区分所有者へと交代していく仕組みをとっています。管理組合が一丸となって共同でマンション管理を持続していくためにも、理事の交代は必要ですが、現実問題として「できれば引き受けたくない」と感じている区分所有者が少なくないようです。
その理由は、理事としての活動に理事会への出席や意思決定への関与など、時間的・心理的負担が伴う点が挙げられるでしょう。総会の時期になると新しい理事を決めるのに毎回苦労している管理組合もあるといわれています。
理事の就任を嫌がる人が多いマンションで、一つの解決策として考えられるのが、理事への報酬を設ける方法です。報酬があれば「区分所有者に必要な役割だから仕方ない」といった義務感が薄まり、引き受けやすさや納得感につながると期待できます。
また、理事として活動する代わりに対価を得られる仕組みであれば、意識が高まり、理事会の活動に責任感を持って取り組んでもらえる効果に期待できます。報酬制度は、理事会の活動を活性化させる効果を持つと考えられるでしょう。
報酬の相場はいくらぐらい?

一般的に、理事への報酬を制度化している管理組合では、報酬額をどの程度の水準に設定しているのでしょうか。
国土交通省が実施した平成30年度のマンション総合調査 では、理事長が約9,500円/月、理事が約3,900円/月、監事が約3,200円/月が報酬の平均額となっていました。少し古いデータですが、この金額が一つの目安であると考えられます。
この調査では、役員報酬の制度の有無についても調査されていました。「報酬は支払っていない」と回答したマンションは調査対象全体の 73.3%で、「役員全員に報酬を支払っている」マンションは23.1%という結果となっています。この結果から、報酬を制度化していないマンションのほうが多数派であるといえます。
ただし、総戸数が多いマンションであるほど、報酬を支払っていない管理組合が少なくなるという傾向も報告されており、単純に全体平均だけはなく、マンションの規模も重要な要素と考えられるでしょう。
報酬の財源はどこから?
理事への報酬を設ける場合、その財源をどのように確保するのかも重要なポイントとなります。
一般的に理事への報酬は、区分所有者から集める管理費から捻出されるケースが多いと考えられます。そのため、これから報酬制度を導入する場合には、現状のマンション管理において管理費が不足していないか、報酬を支払う余裕があるか、といった点を十分に試算しておきましょう。
もし、報酬を支払うためには管理費の値上げが必要になるといった状況であるなら、十分に検討しなければなりません。
また、他の支出との優先順位も重要なポイントです。例えば、日常的な維持管理費用や将来的な修繕に向けた積立金とのバランスをどのように取るかといった問題は、管理組合全体での合意形成が求められる部分といえるでしょう。
報酬制度の導入は、マンション全体の資金計画と照らし合わせながら考えるべきです。
報酬制度の落とし穴
報酬制度は、理事が納得して活動しやすくなるなどのメリットがある一方で、いくつか注意すべき点もあります。
例えば、対価が発生することで、理事の活動に対する期待水準が高まりやすくなる点です。理事に報酬が支払われていると、対応の遅れや判断ミスなどが発生した場合に、報酬がない管理組合よりも厳しい意見が出やすくなる可能性が考えられます。
また、報酬の有無によって、理事の役割に対する捉え方が変化する点にも注意が必要です。マンション管理は、本来は区分所有者全体で担うべきであるにもかかわらず、「報酬を受け取っている理事が担う業務」として認識されるようになり、他の区分所有者の関与が薄れる可能性も考えられます。
また、報酬の水準や支給方法によっては、住民間で不公平さを生じさせるきっかけになるかもしれません。報酬の金額が相場よりも高額になりすぎると、管理組合からの不満が出やすくなるので、制度設計は慎重に進めるべきです。
報酬制度は、理事の負担軽減やなり手不足の解消につながる可能性がある一方で、運用の仕方によっては新たな課題を生むかもしれない側面を持ちます。導入の可否だけでなく、その設計や運用のあり方まで含めて検討することが重要といえるでしょう。
イラスト:大野文彰

