「マイホーム購入のとき、親から500万円の援助を受けた」——珍しくない話です。
ただ、この援助の受け方によっては、贈与税で数十万円〜100万円以上の税金が発生することがあります。一方、住宅取得資金の贈与税「非課税特例」を活用すれば、最大1,000万円まで非課税で受け取れるケースもあります。
この記事では、住宅資金援助を受ける前に知っておきたい「非課税特例」の全体像、特例を使わない場合に発生する贈与税の計算、相続時精算課税制度との比較、そしてよくある家族間トラブルの事例までを、ファイナンシャル・プランナーの視点から解説します。
【制度についての注意】
贈与税の非課税特例は税制改正により内容が変更される場合があります。本記事は2026年時点の制度に基づく一般的な解説です。実際の申告にあたっては、最新の制度内容を国税庁の公表資料でご確認いただくか、税理士等の専門家にご相談ください。
住宅取得資金の贈与税「非課税特例」の全体像

「住宅取得等資金の贈与税の非課税措置」は、親や祖父母から住宅取得のための資金援助を受けた場合、一定額まで贈与税がかからないとされる特例制度です。
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非課税限度額(2026年時点)
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対象者の主な要件
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手続きの流れ
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省エネ等住宅:1,000万円まで非課税 その他の住宅:500万円まで非課税
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贈与を受ける人:18歳以上、合計所得金額2,000万円以下 (※床面積40㎡以上50㎡未満の住宅の場合は1,000万円以下) 贈与する人:直系尊属(親・祖父母) 住宅の要件:床面積40㎡以上240㎡以下、耐震・省エネ基準等を満たすこと
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①贈与を受けた翌年2月〜3月に贈与税の申告を行う②申告書に「非課税措置の適用」を明記する ③住宅の登記事項証明書・売買契約書などを添付する ④原則として、贈与を受けた翌年3月15日までに住宅取得を完了する
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500万円・1,000万円の援助をうける場合の税金と手続き
500万円を非課税で受け取る場合
その他住宅の非課税枠500万円を活用できます(省エネ住宅でなくても対象です)。あわせて「暦年課税」の基礎控除110万円を使えば、あわせて非課税枠を広げて受け取ることが可能となる場合があります。
1,000万円を非課税で受け取る場合
省エネ等住宅(ZEH水準等)の要件を満たす住宅を取得する必要があります。非課税枠1,000万円と暦年課税110万円を活用できるケースがあります。
1,000万円を超えてもらう場合
非課税枠を超えた部分は、暦年課税または相続時精算課税で申告することになります。詳しくは後述の「相続時精算課税制度」をご参照ください。
特例を使わないと発生する贈与税の計算

特例の申告を忘れたり、要件を満たさなかったりした場合、暦年課税(一般税率・特例税率)として以下の贈与税が発生する可能性があります。
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援助額
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非課税特例を利用した場合の税額
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特例を利用しなかった場合(暦年課税)の税額の目安
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500万円のケース
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0円
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約48.5万円 (500万円-基礎控除110万円=390万円が課税対象。 390万円×税率15%-控除額10万円)
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1,000万円のケース
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0円 (※省エネ等住宅の場合)
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約177万円 (1,000万円-基礎控除110万円=890万円が課税対象。 890万円×税率30%-控除額90万円)
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特例の申告を忘れると、本来非課税にできたはずの金額に対して約50万〜180万円ほどの税金が発生する計算になる点に注意が必要です。
カシワバラ・アシスト 担当者の声

小林 勝之(カシワバラ・アシスト 第1営業部 次長)
ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士)・貸金業務取扱主任者・個人情報取扱主任者
2011年カシワバラ・アシスト入社/返済計画見直しの対応実績多数
「『親から500万円の援助をうけたけれど、税金のことは特に考えていない』とおっしゃる方に、よくお会いします。非課税特例の要件を満たしていないケースや、申告自体を忘れているケースもあり、後日、税務署から確認の連絡が入ることもあります。『もらう前』の設計と書類の整備が、後悔のない資金援助の鍵になります。」
相続時精算課税制度との比較
相続時精算課税制度の概要
60歳以上の親・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について、累計2,500万円まで贈与税を非課税にできるとされる制度です。ただし、贈与者が亡くなった際には、相続財産に加算して相続税を計算する仕組みになっています。
住宅取得資金の非課税特例との併用
住宅取得資金の非課税特例(500万円または1,000万円)と相続時精算課税2,500万円を併用すれば、合計3,000万円〜3,500万円まで贈与税なしで受け取れるケースがあります。
どちらを選ぶかの判断軸
・親の資産が相続税の基礎控除内に収まりそうな場合:相続時精算課税が有利になる傾向がある
- ・親の資産が相続税の対象になりそうな場合:暦年課税を継続した方が有利なケースもある
- ・複数回に分けて援助を受ける予定がある場合:相続時精算課税を活用しやすい場合がある
「借入」の形にすれば贈与税を回避できる可能性があるが、実態と書類整備が必須

親からの「借入」という選択肢
贈与ではなく「借入」の形にすれば、贈与税は発生しないとされています。ただし、税務署に「実質的な贈与」と判断されないよう、形式だけでなく実態の伴った以下の書類を整えておく必要があります。
金銭消費貸借契約書(借用書)の主な記載項目
- ・借入金額と借入日
- ・返済期間・返済方法
- ・利息(市中金利等の金利動向を踏まえて設定)
- ・双方の署名・押印
- ・返済実績(振込記録を残す)
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- 【現場からのアドバイス】
- 「後で返すつもり」という口約束だけでは、税務署から実質的な贈与とみなされる可能性が高くなります。契約書・返済実績・銀行振込という3点が揃っていないと、贈与税の課税対象と判断されるリスクが高まります。
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よくある家族間トラブル事例
事例①|兄弟間の不公平感
長男には1,000万円援助、次男には援助なし——後の相続時に大きな争いに発展することがあります。生前贈与は「特別受益」として相続時に考慮される場合があるため、事前に家族間で話し合っておくことが望まれます。
事例②|親が援助後に生活困窮
「老後は年金と貯金でなんとかなる」と1,000万円を援助した結果、親御さまが介護費用で困窮してしまうケースもあります。援助の前に、親御さまご自身の老後資金についても試算しておくと安心です。
事例③|贈与税の申告忘れ
非課税特例を活用するには「申告」が必須です。特例の対象となる金額であっても、申告をしなければ非課税措置は適用されず、後日、追徴課税の対象になる可能性があります。
よくある質問(FAQ)
Q. 妻の親から住宅資金の援助を受ける場合、注意点はありますか?
A. 非課税特例はこの非課税特例は「直系尊属(自分の親や祖父母)」からの贈与に限られます。そのため、配偶者(妻)の親から夫への贈与は対象外となり、通常の贈与税がかかってしまいます。単なる振込先の問題ではなく、実態として「妻の親から夫への贈与」とならないよう、資金の帰属(誰が贈与を受けるか)を明確に取り扱う必要があります。
後悔しない資金援助のために、「贈与前」に整えておくこと
親からの資金援助は、正しく手続きすれば1,000万円まで非課税で受け取れる場合があります。ただし、特例の要件確認・書類整備・家族間の合意形成を怠ると、税金と人間関係の両方でトラブルにつながる可能性があります。
「もらう前」の設計と、ファイナンシャル・プランナーや税理士への相談が、安心できる資金援助の第一歩です。
※ カシワバラ・アシストでは、住宅ローンの専門金融機関として、親御さまからの援助金や自己資金を踏まえた、無理のない住宅ローンのお借り入れシミュレーションを行っております。「資金計画の全体像を知りたい」という段階から、お気軽にご相談ください。
✍️ 監修者プロフィール

小林 勝之 カシワバラ・アシスト 第1営業部 次長
【保有資格】
ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士)・貸金業務取扱主任者・個人情報取扱主任者
【経歴】
2011年カシワバラ・アシスト入社。複雑なローン商品の比較検討から、お客様の家計状況に応じた資金計画の作成、審査書類の作成支援、融資実行までの一貫したサポートを多数手がける。詳細なシミュレーションに基づいた提案には定評があり、ライフステージの変化に応じた返済計画の見直しまで幅広く対応する住宅ローンの専門家。
【読者へのメッセージ】
親御さまからの資金援助は、住宅取得の大きな支えになる一方で、手続きを誤ると思わぬ贈与税が発生するリスクもあります。非課税特例や相続時精算課税制度といった制度の一般的な仕組みをお伝えしながら、ご家族全体で納得できる資金計画を、FPの視点から一緒に整理いたします。