大規模修繕を控えた皆さんに向けて、修繕工事のいろはを説明していくこの連載。今回は、築年数が経過したマンションでも最新の電気設備が利用可能になる、電力設備のリニューアルについて。マンションに便利な機能を追加すれば、資産価値アップにもつながります。
電力設備の改修で最新機器が使用可能に

現代では、一家に複数台のエアコンが設置されることが当たり前になってきています。さらに、IHクッキングヒーターや食洗機、電気自動車の充電設備など、一昔前と比べて家庭に電気を使う機器が増えてきました。それに伴い、マンションに求められる電力容量も増加しています。
しかし、築年数が経過したマンションは、それらの機器などの利用に必要な電気容量を十分に確保できていないところがあります。特に今よりも使用する電気機器が少なかった、昭和後期から平成初期に建てられたマンションでは、現代の暮らしに求められる容量を満たせていない場合が少なくありません。
そのような現状から、築年数が30年を超えるマンションでは、「契約容量を上げたい」という要望が居住者から出されるケースがあります。住民の電力需要に応えるためには、マンション全体の受電設備や電力幹線などが、必要な電力容量に対応できなければなりません。
そこで検討したいのが、電力設備の改修・増強工事です。改修を実施することで、建物の電気設備を現在の生活スタイルに適応させることができます。電力設備の改修は住戸単位かマンション全体かで、対応方法が異なります。どのような違いがあるのか見ていきましょう。
住戸とマンション全体で対応方法が異なる
マンションで使用できる電力容量を増やすのであれば、電気設備の容量変更工事を検討しましょう。
築年数の経過したマンションでは、30アンペアかそれ以下が各住戸の電気の契約容量となっているケースがありますが、現代の暮らしに求められる電力容量は40〜50アンペア程度が一つの目安となり、IHクッキングヒーターや食洗機など複数の電気機器を使用する家庭では、60アンペア程度の容量が必要になる場合もあります。
個別の住戸で契約容量を増やす場合は、各区分所有者が電力会社や電気工事業者などに個別に相談し、必要に応じて分電盤や配線などの改修を行います。ここで注意したいのは、マンション全体で使用できる電力容量の上限もある点です。区分所有者が個別に契約容量をアップさせると、マンション全体の電力容量が不足してしまう可能性があります。
トラブルを避けるためには、各住戸で契約容量を変更する際のルールを管理規約などであらかじめ定めておくと効果的です。そのうえで、区分所有者が管理組合への報告や手続きをせずに、自己判断のみで契約容量を変更しないよう、変更する場合には管理組合へ届け出る必要があると周知しておきましょう。
マンション全体の電力容量を増やす場合は、電力会社から電気を受け取る受電設備や幹線設備の容量の確認や改修・増強が必要になる場合があります。
専有部分である各住戸の設備も含めたマンション全体の電力容量を増強する場合の費用は、建物の規模や既存の設備の状況などによって大きく変動します。数十万円から数百万円単位の費用が必要となる場合もあるため、工事を実施する際には、総会での合意形成が必要です。
まずは現在の電力容量を確認する

マンション全体の電力容量を増やす場合、まずは現在の電力設備の状況確認から着手しましょう。
現在、マンション全体でどの程度の電力を使用できるのか、電力会社から受けている電力の容量や、受電設備、幹線設備などがどの程度の容量に対応しているのかを確認します。あわせて、各住戸の契約容量や共用部分でどのくらい電力消費量があるのかも把握しておきましょう。
確認にあたっては、マンションの竣工図や電気設備の図面、過去に実施した改修工事の資料なども役立ちます。築年数が経過したマンションでは、竣工時から設備が変更されている場合もあるため、図面だけで判断せず、実績を確認できる資料も重要です。
次に検討するのは「どの程度の電力容量が必要になるのか?」です。現在の電力使用量だけを基準にしてしまうと、せっかく設備を改修しても、数年後に再び容量が不足する可能性もあるので、将来的な電力需要を見据えて検討してください。
例えば、各住戸のエアコンの増設や電力消費量の大きな家電の導入に加え、将来的に電気自動車の充電設備を設置する予定があれば、その分の電力需要も考慮しましょう。ただし、すべての住戸が常に最大容量の電気を同時に使用するわけではないため、各住戸が契約できる容量を単純に合計した数字を、そのままマンション全体に必要な容量とするわけではありません。現在の電力使用状況や各住戸の契約容量、今後導入する設備などを踏まえて、マンション全体として必要となる容量を検討してください。
電力容量の目安が決まったら、電力会社や電気設備の専門業者に相談します。専門業者による現在の受電設備や配電設備、幹線設備などが必要な容量に対応できるかの確認を経て、どの設備を改修する必要があるのかを調査してもらいます。既存の設備では、必要な容量を確保できないと判断された場合は、電力会社からマンションへ供給できる容量そのものを増やせるのかについても確認が必要です。
調査によって必要な改修内容が分かったら、複数の工事方法や費用を比較します。現在の設備を一部更新するだけで対応できるのか、幹線ケーブルまで交換する必要があるのか、受電設備の増強まで必要なのかによって、工事費用や工事期間は大きく変わります。
電気設備の改修工事を大規模修繕工事に合わせて実施すると、住民への負担軽減につながるメリットもあるので、実施時期についても十分に検討しましょう。
上述の通り、高額な費用が発生する工事であるため、管理組合の資金に余裕があるのかも考えて、管理組合内で適切に合意をとることも大切となります。
現在の電気の利用に不満を感じている住民が多いマンションであれば、快適な生活をもたらしてくれる工事となるので、まずは理事会で問題を共有し、現状調査の実施について検討してみるとよいでしょう。
電力設備の改修は、大規模修繕とあわせて計画すると足場や工期を共有でき効率的です。わが家のマンションの修繕費用が気になったら、まずは大規模修繕お見積もりAIシミュレーターでお試しください。
イラスト:平松慶

