「国土交通省の長期修繕計画作成ガイドラインはどう使ったらいいんだろう」
「長期修繕計画作成ガイドラインは2021年や2024年の改定で何が変わったの?」
管理組合の理事や修繕委員を担うことになり、上記のような疑問をお持ちの方も多いでしょう。
長期修繕計画作成ガイドラインは、マンションの将来の修繕内容や費用、修繕積立金の妥当性を確認するうえで重要な指針です。
2021年・2024年の改定内容を正しく理解しておくことで、現行の基準に沿った長期修繕計画の作成・見直しに役立てられます。
この記事では、長期修繕計画作成ガイドラインの概要と修繕積立金ガイドラインとの違い、改定のポイント、そして実際の活用方法まで、順を追って解説します。
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長期修繕計画作成ガイドラインとは、国土交通省が策定したマンションの修繕計画づくりを支援する公的な指針です。
正式名称は「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」といい、2008年に初版が発行されました。その後、2021年に大幅な改定が行われ、2024年6月にも改定されています。
修繕の時期・内容・費用を体系的に整理するための様式や考え方が示されており、管理組合が長期修繕計画を新規作成・見直す際の基準として広く活用されています。
なお、長期修繕計画作成ガイドラインは主に区分所有者が自ら居住する、住居専用の単棟型マンションでの利用を想定したものです。
ただし、必要な内容を追加することで団地型マンションにも適用できるとされているため、団地型マンションにお住まいの方も参考にできます。
参考:国土交通省「長期修繕計画ガイドライン」
長期修繕計画作成ガイドラインと修繕積立金ガイドラインの違い

国土交通省が公開しているガイドラインには、長期修繕計画作成ガイドラインのほかに「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」もあります。似た名称ですが、役割は異なります。
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・長期修繕計画作成ガイドライン:将来必要な修繕工事の内容・時期・費用を整理するための資料
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・修繕積立金ガイドライン:必要な修繕積立金額の目安を確認するための資料
長期修繕計画作成ガイドラインは、屋根防水・外壁塗装・給排水設備など、将来的に必要な修繕項目を具体的に整理する際に役立ちます。
修繕積立金ガイドラインは、その計画をもとに「どの程度の修繕積立金を確保すべきか」を確認する際に活用するものです。
一方だけを見るのではなく、両方をあわせて確認することで、工事計画と資金計画のズレを把握しやすくなります。
大規模修繕の実施時期や工事費の高騰を踏まえ、どちらも定期的な見直しが重要です。
参考:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」
長期修繕計画作成ガイドラインで確認できる内容

長期修繕計画作成ガイドラインでは、以下の3つの項目が確認できます。
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・長期修繕計画標準様式と記載例
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・屋根防水・外壁塗装などの修繕項目
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・修繕周期や見直し時期の考え方
主な内容を確認していきましょう。
長期修繕計画標準様式と記載例
長期修繕計画作成ガイドラインには、計画書の標準様式と記載例が付属しています。
標準様式には、建物・設備の概要、修繕項目、修繕周期、費用の試算などを記載する書式が示されています。これに沿って作成することで、抜け漏れのない計画書を整えられるでしょう。
管理組合が自主作成する場合にも、管理会社に作成を委託する場合にも、この様式を基準として活用することで、提出された内容の妥当性を確認しやすくなります。
屋根防水・外壁塗装などの修繕項目
ガイドラインには、長期修繕計画に含めるべき修繕項目の一覧が示されています。
屋根防水・外壁塗装・鉄部塗装・給排水設備・電気設備など、マンションの維持のために修繕が欠かせない項目が網羅されており、具体的な修繕箇所を整理する際の基準として役立ちます。
付属の「標準的な修繕周期表」を活用すると、大規模修繕だけでなく小規模な設備更新も確認することができ、具体的な計画が立てやすくなるでしょう。
修繕周期や見直し時期の考え方
修繕工事はいつ実施するかの判断が難しく、築年数や建物の状態によって適切なタイミングは変わります。
ガイドラインでは、修繕周期の目安が項目ごとに示されており、計画づくりの根拠として活用できます。
たとえば2021年の改定から、修繕周期は「○年〜○年」という幅のある表記になりました。これにより、建物の実態に応じた柔軟な計画設定が可能になっています。
また、長期修繕計画は一度作成したら終わりではなく、5年ごとを目安に見直すことが推奨されています。
建物の劣化状況や修繕費用の変動にあわせて、定期的に内容を更新することが大切です。
【2021年・2024年】長期修繕計画作成ガイドラインの主な改定内容

長期修繕計画作成ガイドラインは、2021年と2024年に以下の項目が改定されています。
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・【2021年改定】計画期間が30年以上に変更
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・【2021年改定】修繕周期に幅を持たせた表記に変更
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・【2021年改定】省エネ性能を高める改修工事の考え方が追記
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・【2021年改定】エレベーター点検の重要性が追記
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・【2024年改定】段階増額積立方式の考え方が反映
詳しい内容を確認していきましょう。
【2021年改定】計画期間が30年以上に変更
2021年の改定で大きく変わったのは、長期修繕計画の計画期間です。
それまでは「25年以上」とされていた計画期間が、「30年以上」に変更されました。大規模修繕工事が2回以上含まれる期間を確保することが目的とされています。
すでに長期修繕計画を作成している管理組合でも、計画期間が25年にとどまっている場合は、30年以上に延長して見直すことが求められます。
【2021年改定】修繕周期に幅を持たせた表記に変更
2021年の改定では、修繕周期の表記方法も見直されています。
それまでは「○年ごと」という固定の数値が示されていましたが、改定後は「○年〜○年」という幅のある表記に変わりました。
建物の状態や仕様、使用環境によって適切な修繕時期が異なることを踏まえた変更です。
たとえば屋根防水(アスファルト防水)の修繕周期は「12年〜15年」、外壁塗装(塗替え)は「10年〜15年」のように示されています。
計画作成の際は、自マンションの状態に照らして周期を設定することが重要です。
【2021年改定】省エネ性能を高める改修工事の考え方が追記
2021年版のガイドラインでは、省エネ性能に関する内容が新たに追記されました。
築年数の古いマンションは省エネ性能が低い水準にとどまっているケースも多いです。
改修工事によって断熱性能を高めることは、脱炭素社会の実現と区分所有者の光熱費負担の軽減、両方の観点から有意義とされています。
具体的な工事としては、壁・屋上の外断熱工事や窓の断熱工事などが挙げられています。
長期修繕計画を確認・見直す際は、こうした省エネ改修が盛り込まれているかどうかを確認し、費用対効果や適切な工事時期も視野に入れて検討しましょう。
【2021年改定】エレベーター点検の重要性が追記
2021年版のガイドラインでは、エレベーターの保守管理に関する記述も追加されました。
エレベーターの保守契約による定期点検は、国土交通省「昇降機の適切な維持管理に関する指針」に沿って行うことの重要性が明記されています。
点検頻度や内容が指針に照らして適切かどうかを、管理組合側でも確認することが大切です。
なお、ガイドラインには「保守点検業者の選定に当たって留意すべき事項のチェックリスト」と「保守点検契約に盛り込むべき事項のチェックリスト」も付属しています。
業者への保守依頼や契約内容の確認の際に、あわせて参照してみてください。
【2024年改定】段階増額積立方式の考え方が反映
2024年の改定では、修繕積立金を段階的に引き上げる「段階増額積立方式」について、適切な引上げの考え方がガイドラインに反映されました。
具体的には、計画期間全体の平均額を基準に、初期額は0.6倍以上、最終額は1.1倍以内とする考え方が示されています。
この考え方は、実現性のある引上げにより、修繕積立金の早期引上げを完了し、均等積立方式へ誘導することを目的としています。
ただし、工事費の高騰などを踏まえて長期修繕計画を見直す際に、管理適正化のため修繕積立金を大幅に引き上げること自体を制限するものではありません。
段階増額積立方式は将来的な値上げを前提とするため、区分所有者間の合意形成ができない場合、修繕積立金不足につながるリスクもあります。
改定内容を踏まえた計画の見直しと、丁寧な説明・合意形成が重要です。
なお、次項で解説する修繕積立金ガイドラインについても、2024年の改訂で段階増額積立方式に関する内容が更新されています。
【2021年・2023年】修繕積立金ガイドラインの主な改定内容

修繕積立金ガイドラインも、近年以下の改定が行われています。
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・【2021年改定】修繕積立金の目安や算出方法の見直し
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・【2023年追補】機械式駐車場の加算額目安の追加
こちらも詳しい内容を見ていきましょう。
【2021年改定】修繕積立金の目安や算出方法の見直し
2021年の改定では、修繕積立金の目安額が引き上げられ、算出方法も見直されました。
【2011年版】
修繕積立金額の目安[円/月]=専有床面積当たりの修繕積立金額の目安[円/㎡・月]×購入予定のマンションの専有床面積[㎡]
【2021年版】
計画期間全体における修繕積立金の平均額[円/㎡・月]=(修繕積立金の残高[円]+計画期間全体で集める修繕積立金[円])÷マンションの総専有床面積[㎡]×長期修繕計画の計画期間[カ月]
以前の目安と比較すると、必要な修繕積立金の水準は1.25倍〜1.6倍程度に増加したとされています。材料費や人件費の上昇、建物の高経年化に伴う修繕費用の増加が背景にあります。
また、改定前は新築マンションの目安が中心でしたが、2021年の改定により中古マンションでも修繕積立金を算出しやすくなりました。
既存マンションの管理組合にとっても、現状の積立水準を客観的に確認しやすくなっています。
【2023年追補】機械式駐車場の加算額目安の追加
2023年の追補では、機械式駐車場があるマンション向けに、修繕積立金へ加算する目安額が新たに示されました。
機械式駐車場は、維持管理や設備更新に多大な費用がかかりやすく、有無によって将来必要となる修繕費用が大きく変わります。
駐車場収入だけで費用をまかなえるとは限らないため、長期修繕計画との整合性を確認することが大切です。
利用率が低下している場合は、設備の維持・撤去・更新の方針についても、長期修繕計画の見直しと並行して検討するとよいでしょう。
長期修繕計画作成ガイドラインの活用方法

長期修繕計画作成ガイドラインは閲覧するだけでなく、以下のようなさまざまな場面で活用できます。
- ・長期修繕計画を新規作成する
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・既存の長期修繕計画を見直す
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・修繕積立金の増額・一時金徴収を区分所有者に説明する
- ・管理会社・施工業者との見積もり・計画書の交渉に活用する
長期修繕計画を新規作成する
長期修繕計画を新規作成する際、長期修繕計画作成ガイドラインは体系的な手順を確認するために役立ちます。
長期修繕計画作成ガイドラインは「調査診断 → 修繕項目の洗い出し → 修繕周期・費用の設定 → 積立金の試算」という流れで構成されています。この順序に沿うことで、専門知識のない管理組合でも長期修繕計画を作成しやすいでしょう。
付属の「標準的な修繕周期表」を活用すると、大規模修繕だけでなく小規模な設備更新も確認でき、具体的な計画が立てやすくなります。管理会社や専門家のサポートを受けながら活用するのが現実的でしょう。
専門家に委託する場合でも、長期修繕計画作成ガイドラインの構成を把握しておくことで、提出された計画書を自分たちで適切にチェックできます。
既存の長期修繕計画を見直す
すでに長期修繕計画を作成済みの管理組合でも、長期修繕計画作成ガイドラインは見直しの基準として役立ちます。
長期修繕計画はあくまで将来の予測値です。実際の修繕費用や建物の劣化状況は変化するため、5年ごとを目安に長期修繕計画作成ガイドラインと照らし合わせながら計画を更新することが推奨されています。
とくに2021年・2024年の改定内容(計画期間の延長、修繕周期の幅の設定、積立方式の考え方など)を反映できていない場合は、現在の計画を見直す機会として考えましょう。
修繕積立金の増額・一時金徴収を区分所有者に説明する
修繕積立金の増額や一時金徴収を区分所有者に説明する場面でも、長期修繕計画作成ガイドラインは有効な資料として活用できます。
国が策定した公的な指針を根拠として示すことで、感情的な反発を受けにくく、合意形成が進みやすくなります。
たとえば「長期修繕計画作成ガイドラインに基づく試算では、現行の積立金では○年後に○万円不足する」と具体的な数字で示すと効果的です。
総会資料に長期修繕計画作成ガイドラインの修繕周期表や推定修繕工事項目などを引用することで、計画の客観性・信頼性を担保できます。
区分所有者からの疑問にも長期修繕計画作成ガイドラインを根拠に回答できると、理事会への信頼度向上にもつながるでしょう。
管理会社・施工業者との見積もり・計画書の交渉に活用する
管理会社や施工業者から提示された見積もり・計画書を確認する際にも、長期修繕計画作成ガイドラインの知識が役立ちます。
長期修繕計画作成ガイドラインの修繕単価の目安と実際の見積金額を比較することで、過剰見積もりや修繕項目の漏れを指摘する根拠として使用可能です。
業者選定の際は「長期修繕計画作成ガイドラインに準拠した計画書の作成実績があるか」を確認することで、信頼性の高い業者を見極める一つの基準になります。
施工仕様の変更提案があった際も、長期修繕計画作成ガイドラインの推奨基準と照らして妥当性を確認する習慣をつけておくと、不要なグレードアップ提案を断りやすくなります。
長期修繕計画作成ガイドラインを活用して、実態に合った修繕計画を立てよう

長期修繕計画作成ガイドラインは、修繕計画の新規作成から見直し、区分所有者への説明、業者との交渉まで、管理組合の実務を幅広くサポートする公的な指針です。
2021年・2024年の改定内容も踏まえながら、自マンションの計画が現状に即した内容になっているかを、あらためて確認してみましょう。
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