2026年区分所有法改正が大規模修繕に及ぼす影響は?注意点も解説

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      マンションの老朽化に対処するためにも、大規模修繕や建て替えは多くの管理組合にとって重要な課題です。

      2026年4月に施行された区分所有法改正では、出席者ベースでの決議や所在不明者の除外、建て替え要件の緩和など、マンション管理の意思決定を後押しする仕組みが整えられました。本記事では、2026年区分所有法改正の背景や主な変更点、大規模修繕への影響、管理組合が注意すべきポイントについて解説します。

      2026年区分所有法改正の概要

      区分所有法は、正式には「建物の区分所有等に関する法律」といいます。マンションのように、一つの建物を複数の人が区分して所有する場合の基本的なルールを定めた法律です。

      分譲マンションでは、専有部分は各区分所有者が管理していますが、エントランスや廊下、ロビーなどの共用部分や建物全体の管理は、区分所有者全体で決める必要があります。

      所有や共有の基本的なルールは民法にもありますが、多数の人が関わるマンションの事情に特化した法律として区分所有法が設けられています。

      日本では、1960年代の高度経済成長期頃からマンションが多く建てられるようになりましたが、現代では当時のマンションは築60年を超える状況です。これから老朽化が深刻化するマンションが増えていく中で、修繕や建て替えについて管理組合の意思決定を後押しする目的で2026年4月に改正区分所有者法が施行されました。

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      2026年区分所有法改正の背景

      2026年の区分所有法改正は、主に3つの課題を背景に行われました。

      1つ目は、高経年マンションの増加。2つ目は、区分所有者の高齢化や所在不明化が要因で起こる管理不全。3つ目は、大規模修繕や建て替えの滞りです。

      今回の改正法はこれらの課題を改善する目的で施行されました。

      マンションの老朽化が進んでいる

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      国土交通省の調査によると、2024年末時点で築40年を超えるマンションは全国で約148万戸に達しています。

      こうした高経年マンションは今後10年で約2倍、20年後には約3.3倍に増える見込みとなっており、マンションの老朽化は一部の物件だけではなく、全国的な課題となっています。

      築40年を超えるマンションでは、配管や設備の更新、耐震性の確保など、小規模な修繕だけでは対応しきれない問題が表面化しやすくなります。

      対応が遅れれば、マンションの資産価値が低下するだけでなく、居住環境や安全性が損なわれかねません。

      各マンションの価値を守り、安心して住み続けられる環境を維持するためにも、早い段階から大規模修繕や建て替えの検討が求められます。

      区分所有者の高齢化・所在不明化が進んでいる

      マンションの老朽化とあわせて深刻なのが、区分所有者の高齢化と所在不明化です。

      国土交通省の調査によると、マンション世帯主の半数以上が60代以上で、特に1984年以前に完成した高経年マンションでは、70歳以上が55.9%を占めるなど、高齢化が一段と進んでいます。

      また、高経年マンションでは、所在不明や連絡不通の住戸が発生しています。従来の区分所有法では、こうした連絡の取れない所有者も決議の母数に含まれていたため、実質的に反対票と同じように扱われ、建物の再生決議が進まない要因となっていました。

      建物の老朽化に加えて、所在不明・連絡不通の住戸増加が原因で、マンションの管理運営や重要な議決に悪影響が出ていたのです。

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      従来の決議要件では再生が進まない

      老朽化が進むマンションの再生を阻んでいたのは、旧法で定められた非常に厳しい決議要件です。

      旧法では、建て替えなどの重大な決定には区分所有者および議決権の5分の4以上の賛成が必要でした。

      また、総会不参加や音信不通の区分所有者の票はすべて反対扱いであったため、管理運営に積極的な所有者の多くが建て替えに賛成していても、無関心の層の影響で否決されるケースもしばしばだったのです。

      国土交通省の調査によると、2025年3月末時点での建て替え実績は、累計で323件(約26,000戸)にとどまっており、築40年超の物件が100万戸を大きく超える現状を考えると、再建はほとんど進んでいないといえるでしょう。

      2026年区分所有法改正の主なポイント

      2026年の区分所有法改正では、マンション管理や再生を進めやすくするため、意思決定や管理に関するルールが幅広く見直されました。

      主なポイントは、出席者ベースでの決議、所在不明者の除外、建て替え要件の緩和に加え、専有部分・共用部分の管理や修繕を進めやすくする制度の整備です。

      さらに、裁判所による管理者選任制度の拡充や、団地内の一棟建て替えを進めやすくする仕組みが盛り込まれるなど、マンション管理の幅広い課題に寄り添った改定になっています。

      出席者ベースでの決議が可能となる

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      今回の改正における最大のポイントは、共用部分や規約の変更についての決議の仕組みが現行の全区分所有者基準から、実際に会議に参加した出席者基準へと変更された点です。

      これまでは、連絡がつかない所在不明者や管理に関心を持たない層も実質的に反対票としてカウントされていたため、正当な議案が否決される事態が少なくありませんでした。

      新制度下では、修繕や建て替えといったマンションの価値を守るための前向きな議論と円滑な決議が期待されています。

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      所在不明者を決議から除外できる

      新法では、所在等がわからない区分所有者について、裁判所が認定した場合に、集会の出席割合や決議の賛成割合を計算する際の母数から除外できるようになります。

      これまでは、連絡が取れない区分所有者も母数に含まれ、その議決権は事実上、棄権として扱われていました。そのため、必要な賛成数を集めにくく、老朽化したマンションの修繕や建て替えに向けた決議が進みにくいという課題がありました。

      改正後は、裁判所の認定を受ければ、所在等不明区分所有者は集会で議決権を持たず、決議の母数にも含まれません。これにより、連絡が取れる区分所有者を中心に合意形成を進めやすくなり、マンション再生の停滞を防ぐ効果が期待されます。

      建て替えの要件が緩和される

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      老朽化で安全性に不安があるマンションの建て替えを加速させるため、今回の改正には建て替え決議要件の大幅な緩和が盛り込まれました。

      これまでは、区分所有者および議決権の5分の4以上が賛成する必要があったのですが、改正後は、「耐震性の不足」「火災に対する安全性の不足」「外壁剥落の恐れ」「給排水管の腐食」「バリアフリー不足」という5つの客観的事由のいずれかがある建物については、決議要件が4分の3以上へと引き下げられます。

      危険性が高く、早急な対応が求められる老朽化マンションにおいて、一部の反対や無関心層に左右されず、居住者の安全を守るための再生決議がスムーズに進むようになるでしょう。

      専有部分の保存や管理がスムーズにできるようになる

      今回の改正では、マンション全体の資産価値を維持するため、個々の専有部分に対する管理権限も強化されました。

      まず、共用部分の工事とあわせて、専有部分内の配管修繕や改良を一括で実施できるようになりました。これにより、漏水リスクの高い古い枝管の更新などを、住戸ごとの判断に頼らずに実施できます。

      また、他の区分所有者の専有部分に起因する被害を防ぐため、今後は必要に応じて修繕等の保存行為を請求できると明確に示されたのも大きな変更点です。

      さらに、海外居住者など国内に住所を持たない所有者に代わり、議決権の行使や管理費の支払い、通知の受領などを担う国内管理人を選任できる制度も新設されました。代理人の存在は、国外居住オーナーの所有住戸の管理不足問題を改善する糸口となるでしょう。

      共用部分の修繕や改修を迅速に進められるようになる

      トラブルの迅速な解決や実務の効率化を後押しする仕組みが整えられたのも今回の改正の重要な変更点です。

      まず、管理組合の代表者である管理者(一般的には理事長)が、損害賠償請求を行えると法律上明確になりました。これにより、過去の不適切な管理やトラブルに対する責任追及が、理事長主導でよりスムーズに進められるようになります。

      また、これまで区分所有者全員の4分の3以上の賛成が必要だった共用部分の変更決議についても、集会に出席した人の4分の3以上の多数で決議できるようになります。

      ただ、区分所有者および議決権数の過半数の出席が必要という前提があるので留意しておきましょう。

      さらに、安全確保のための瑕疵の除去やバリアフリー化を目的とする工事については、この要件が3分の2に緩和されるため、意思決定が早まり、着工を急げます。

      運営面では、区分所有者同士の協力義務が法律に明記され、一人ひとりの責任がより明確になりました。さらに、電子データでの管理規約作成、管理が法律で認められたため、管理業務の効率化が期待されています。

      裁判所による管理者選任制度が拡充される

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      改正法では、管理が行き届かない住戸や共用部分に対し、裁判所が管理者を選任して対応できる仕組みが拡充されました。

      例えば、区分所有者による管理が不十分で、劣化や危険の放置が周囲に悪影響を及ぼすおそれがある場合には、利害関係人の申立てにより、裁判所が管理者を選任し、必要な保存・管理行為を代理させられます。

      さらに、所有者がわからないまま放置されている住戸についても、同様に管理者を選任し、修繕や管理を進められるようになりました。

      これにより、当事者だけでは解決が難しい管理不全にも法的に対応しやすくなり、建物全体の安全性や管理水準の維持が図りやすくなります。

      団地内の一棟建て替えがしやすくなる

      改正法では、団地内の建物を建て替えるためのルールが見直されました。

      団地では、複数の建物が同じ敷地内にあるため、一棟だけを建て替えたい場合でも、団地全体の合意が必要になります。そのため、老朽化が進んだ棟だけを先に建て替えたくても、手続きが進みにくくなっていました。

      今回の改正では、団地全体の合意を求める仕組みは残しつつ、出席者を基準に決議できる場合を設けるなど、建て替えの判断をしやすくしています。

      また、団地内の建物をまとめて建て替える場合も、各棟で一定以上の強い反対がなければ進められるようになりました。

      これにより、棟ごとに老朽化の進み方が異なる団地でも、必要な建て替えを進めやすくなります。

      2026年区分所有法改正が大規模修繕に与える影響

      2026年の区分所有法改正により、大規模修繕は従来より進めやすくなります。

      出席者ベースでの決議や所在不明者への対応が可能になったため、これまで停滞しがちだった合意形成が円滑になり、必要な工事を適切な時期に実施しやすくなりました。

      その結果、建物の老朽化や不具合の深刻化を防ぎやすくなり、マンションの安全性や居住性の確保はもちろん、資産価値の維持・向上にもつながると期待されます。

      合意形成が大幅にスムーズになる

      改正法では、マンション管理に関する意思決定を出席者ベースで行うため、大規模修繕の合意形成は従来より大きく進めやすくなります。

      これまでは、総会に出席しない区分所有者や連絡がつかない所有者の存在が、実質的に意思決定の足かせとなり、必要な修繕計画がまとまらないケースも少なくありませんでした。

      改正後は、こうした無関心層や不在者の影響を受けず、実際に管理に関わる所有者を中心に議論と判断を進めやすくなります。その結果、修繕の可否を早期に決めやすくなり、工事の実行スピード向上も期待されます。

      修繕タイミングの遅れを防げる

      改正法により決議が円滑になると、大規模修繕の実施時期が遅れるリスクを防げます。

      旧法下では、決議がまとまらず工事が先送りされる間に、資材費や人件費が上昇し、当初より大きな費用負担が生じる悪循環がありました。

      また、修繕を遅らせるほど建物の劣化も進むため、追加工事が必要になるなど、費用負担が増大する傾向だったのです。

      改正後は、必要な修繕を適切な時期に決めやすくなるため、長期修繕計画に沿った実施がしやすくなり、結果として費用の増加や工事内容の拡大を防ぎやすくなります。

      資産価値の維持・向上につながる

      改正法によって必要な修繕や管理を進めやすくなれば、マンションの資産価値の維持・向上にもつながります。修繕が先送りされると、外観や設備の劣化が進み、建物の印象や安全性が損なわれると、市場での評価が下がりやすくなります。

      また、管理不全の状態が広がれば、マンション全体の信頼性も低下しかねません。

      今回の見直しにより、必要な工事や管理対応を適切な時期に実施しやすくなるため、老朽化による価値低下を防ぎやすくなります。その結果、中古マンションとして売却や賃貸に出す場面でも、評価を維持しやすくなると期待されます。

      2026年区分所有法改正にあたって管理組合が注意すべきポイント

      2026年の区分所有法改正に対応するには、管理組合側の実務見直しも欠かせません。

      新しい制度を適切に運用するため、まずは管理規約や使用細則を改正内容に合わせて点検・更新する必要があります。また、決議要件の見直しにともない、総会運営や説明手続きの透明性を高める配慮も必要です。

      あわせて、所在不明者への対応を円滑にするため、区分所有者の連絡先や所在情報を改めて整理・確認しておくのも重要です。

      管理規約や使用細則をアップデートする

      法改正に対応するには、管理組合のルールである管理規約や使用細則も、改正内容に合わせて見直す必要があります。

      法律が変わっても、規約や細則が古い内容のままでは、実際の運用と新しい制度との間にずれが生じかねません。総会の進め方や管理上の判断で、混乱につながる可能性もあります。

      改正内容を管理規約に反映する際は、法律の正しい理解が必須です。条文の内容が正しく反映されていない規約では、かえって運用しづらくなるおそれがあります。

      必要に応じて弁護士やマンション管理士などの専門家に相談しながら、規約や細則の見直しを進めましょう。

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      決議プロセスの透明性を意識する

      法改正によって決議のハードルが下がるからこそ、管理組合にはこれまで以上に丁寧でわかりやすい手続きが求められます。

      議案の内容や必要性、実施した場合の影響を住民に十分説明し、説明会の開催や資料配布を通じて納得感を高めるようにしましょう。

      手続きが不透明なままでは、制度が使いやすくなっても住民の不信感を招き、かえって合意形成が難しくなるおそれがあります。

      また、委任状の回収や意思表示を円滑に進めるため、電子投票などのIT活用も有効です。出席者ベースの制度変更の効果を十分に生かすには、運営面の工夫も欠かせません。

      所有者の連絡先を徹底的に再確認する

      法改正を踏まえて、区分所有者の連絡先や所在情報を改めて整理し、名簿を更新する作業も重要です。

      相続によって名義変更が行われていなかったり、登録されている住所・連絡先が古いままになっていたりする区分所有者がいる場合、アンケートや届出の確認を通じて実態を把握しておく必要があります。

      情報整備が不十分なままでは、総会通知や意思確認が滞り、円滑な合意形成ができないかもしれません。

      また、誰が所在不明者に当たるのかを把握しておけば、必要に応じて裁判所への申立てなど法的手続を進める際にも、より迅速かつ適切に対応しやすくなります。

      2026年の区分所有法改正を正しく理解し、大規模修繕を成功させよう

      2026年の区分所有法改正は、マンションの老朽化や区分所有者の高齢化・所在不明化によって、管理や修繕、再生が進みにくくなっている現状を踏まえて行われました。

      従来は厳しい決議要件が壁となり、大規模修繕や建て替えが必要でも合意形成ができないケースが少なくありませんでした。改正後は、出席者ベースでの決議や所在不明者の除外が可能となり、必要な意思決定を進めやすくなります。

      一方で、少数意見への配慮や手続きの透明性確保はこれまで以上に重要です。今後は、管理規約や使用細則の見直しとあわせて、住民への丁寧な説明を重ねながら、適切な管理運営を行っていきましょう。

       

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