「夫婦の収入を合算すれば、もっと借りられますよ」——住宅ローンの相談窓口で、こう言われた経験のある方もいるかもしれません。
ただ、この「収入合算」、以前ご紹介した「ペアローン」とは似ているようで別の仕組みです。2人分の収入を住宅ローンに活かすという点は同じでも、契約の本数から住宅ローン控除・団信の扱いまで、細かく見ていくと違いがいくつも出てきます。
この記事では、収入合算の仕組みをペアローンと比べながら、向くご家庭・向かないご家庭の分かれ目を整理します。
収入合算の仕組み(合算者の収入をどこまで審査に反映できるか)

収入合算とは、住宅ローンを申し込む本人(主債務者)の収入に、配偶者や親族など「収入合算者」の収入の一部または全部を合算して、借入可能額を計算する仕組みです。
ポイントは、契約するローンが1本のままだということ。主債務者が単独で契約し、収入合算者は多くの場合「連帯保証人」という立場で関わります。合算できる収入の範囲は民間金融機関ごとにまちまちで、全額を認めるところもあれば、一定割合(たとえば5割)までとするところもあるので、借入可能額の見立ては金融機関を決めてから固めた方が望ましいです。
一方、フラット35では、収入合算の形として「連帯債務」が採用されています。この場合、ローンは1本ですが、主債務者と収入合算者の両方が借入当初から返済義務を負う「連帯債務者」という立場になります。
ペアローン/連帯債務との違い(契約本数・住宅ローン控除・団信の扱い)
「収入合算」と「ペアローン」は、どちらも夫婦2人の収入を住宅ローンに活かす方法ですが、契約の構造が根本的に異なります。
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方式
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契約の本数
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契約上の立場
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住宅ローン控除
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団信
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ペアローン
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2本 (夫婦それぞれが契約)
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互いに連帯保証人若しくは物上保証人
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2人ともそれぞれ利用可能
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2人それぞれが加入可能
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収入合算 (連帯保証型・民間)
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1本
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主債務者1人+ 連帯保証人1人
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主債務者のみ
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主債務者のみ 加入するのが一般的
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収入合算 (連帯債務型・フラット35等)
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1本
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連帯債務者2人 (主債務者+連帯債務者)
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要件を満たせば 2人とも利用できる場合がある
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主債務者・連帯債務者の いずれかが加入
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ペアローンは契約が2本になるため、諸費用(印紙税・事務手数料など)も2本分かかりますが、その分、住宅ローン控除や団体信用生命保険(以下、団信)をそれぞれが持てるのが特徴です。一方、収入合算(連帯保証型)は契約が1本で諸費用を抑えやすい反面、住宅ローン控除や団信は主債務者のみが対象になるのが一般的です。
【連帯保証と連帯債務の違いに注意】
「連帯保証人」は、主債務者が返済できなくなった場合に返済義務を負う立場で、原則として住宅ローン控除の対象にはなりません。「連帯債務者」は、借入当初から主債務者と同様に返済義務を負う立場で、持分に応じて住宅ローン控除の対象になりうる点が異なります。どちらの形になるかは、利用する住宅ローンの商品によって決まります。
収入合算が向くケース・向かないケース

向くケース
- 諸費用をできるだけ抑えたい(契約1本分で済ませたい)
- 収入合算者の収入は借入額を増やす目的で使いたいが、住宅ローン控除や団信は主債務者のみで十分と考えている
- 連帯債務を扱う金融機関(フラット35等)で、2人分の住宅ローン控除を活用したい
向かないケース
- 2人ともしっかり住宅ローン控除を受けたい(連帯保証型では主債務者のみが対象)
- 収入合算者にも万一の際の団信保障を持たせたい
- 将来の収入変化(育休・転職等)に備えて、契約を分けておきたい
「借入額を増やしたい」という目的だけであれば収入合算は有効ですが、住宅ローン控除や保障まで2人でしっかり持ちたい場合は、諸費用は増えてもペアローンの方が向いていることがあります。
カシワバラ・アシスト 担当者の声

小林 勝之(カシワバラ・アシスト 第1営業部 次長)
ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士)・貸金業務取扱主任者・個人情報取扱主任者
2011年カシワバラ・アシスト入社/返済計画見直しの対応実績多数
「『収入合算』と『ペアローン』は名前が似ていて混同されがちですが、契約の本数も、住宅ローン控除や団信の扱いも別物です。『借入額を増やしたいだけなのか』『2人でしっかり住宅ローン控除も保障も持ちたいのか』——目的によってどちらが向くかが変わってきます。ご家庭の希望に合わせて、一緒に整理させていただきます。」
合算者が働けなくなった場合のリスク

収入合算で算出される借入可能額は、合算者の収入がこの先も続くことを前提にした数字です。だからこそ、合算者が育休や病気、失業で働けなくなったとき、主債務者ひとりの収入で返済を続けられるかどうかが現実的な問題として浮かび上がってきます。
しかも連帯保証型の場合、団信に入っているのは主債務者だけというケースが一般的で、合算者に万一のことがあっても残債は減りません。収入合算を検討するなら、合算者の収入が一時的に、あるいは恒久的に途切れた場面まで想定し、主債務者の収入だけでも無理なく返せる範囲に借入額を抑えておく——それが、将来のリスクに備えた安全な組み方の一つといえます。
よくある質問(FAQ)
Q. 収入合算(連帯保証型)で妻が連帯保証人になった場合、妻自身のクレジットカードを作ったり、別のローンを組んだりする際に影響はありますか?
A. はい、影響する可能性があります。連帯保証人になると、その方の信用情報にも「住宅ローンの連帯保証人になっている」という事実と借入額が登録されます。そのため、新たにクレジットカードを作ったり、車のローンなどを組んだりする際の審査において、返済負担率に算入され、審査に影響を与える可能性があります。
「借入額を増やす」だけでなく、住宅ローン控除・保障まで含めた総合的な判断を
収入合算は、諸費用を抑えながら借入可能額を増やせる傾向にある仕組みですが、住宅ローン控除や団信の扱いはペアローンと異なります。
「借入額を増やしたいだけ」なのか「住宅ローン控除や保障も2人でしっかり持ちたい」のかによって、収入合算とペアローンのどちらが向くかは変わってきます。合算者の収入が続かなくなった場合のリスクも含めて、事前に検討しておきましょう。
※ カシワバラ・アシストでは、住宅ローンの専門機関として、収入合算・ペアローンそれぞれの特徴を踏まえた組み方のご相談にも対応しております。「どちらが自分たちに合っているか分からない」という段階から、お気軽にご相談ください。
監修者プロフィール

小林 勝之 カシワバラ・アシスト 第1営業部 次長
【保有資格】
ファイナンシャル・プランナー(2級FP技能士)・貸金業務取扱主任者・個人情報取扱主任者
【経歴】
2011年カシワバラ・アシスト入社。複雑なローン商品の比較検討から、お客様の家計状況に応じた資金計画の作成、審査書類の作成支援、融資実行までの一貫したサポートを多数手がける。詳細なシミュレーションに基づいた提案には定評があり、ライフステージの変化に応じた返済計画の見直しまで幅広く対応する住宅ローンの専門家。
【読者へのメッセージ】
『収入合算』と『ペアローン』、名前は似ていても中身は別の仕組みです。借入額だけでなく、住宅ローン控除・団信・将来のリスクまで含めて、ご家庭に合った組み方をFPの視点から一緒に考えます。